ECサイトのお勧め商品カタログ|映画好きのBS/CSガイド
海の小石
国道(深夜)
- 海岸線。
- 闇の中から二つの明かりが現れる。
- バイクの音が高まり、二台のバイクがすごいスピードで走ってくる。
- 山根司(20)と森村博(20)。
- じゃれ合うように、走る。
海岸(深夜)
- 打ち寄せる波。
- 国道沿いに、二台のバイク、止まっている。
- 司、波を見ている。
- 博、海に向かって、石を投げる。
- 博
- 「また喧嘩したのか?」
- 司
- 「え?うん。」
- 博
- 「なんで?」
- 司
- 「お説教さ。バイクばかり乗り回してないで、勉強すれって。」
- 博
- 「大丈夫なのか?学校。」
- 司
- 「おまえも説教か?」
- 博
- 「そんなんじゃないけど、お前ん家、大変なんだろ?おばさんひとりでさ。」
- 司
- 「判ってるんだけどさ。遊びたいんだ。今のうちだろ?遊べるったら。」
- 博
- 「お前の気持ち、判るけどさ。また留学も出来ないだろ?それこそ、学校やめなきゃならなくなるぞ。」
- 司
- 「うん。」
- 博
- 「俺、バイク、買い換えるんだ。」
- 司
- 「本当か?」
- 博
- 「今の、大分傷んだしな。」
- 司
- 「去年だろ?買ったの?」
- 博
- 「うん。けど、親父が買ってやるって言うから。」
- 司
- 「何買うのよ?」
- 博
- 「まだ決めてないけど。」
- 司
- 「いいな。金のある奴は。」
- 博
- 「買ったら、貸してやるよ。」
- 司
- 「本当か?」
- 博
- 「あぁ。」
- 石を投げる。
- 司も小石を拾い、海に投げる。
- 博、嬉しげに司を見る。
森村家・庭
- 新しいバイクがある。
- 最新流行の車種。
- 司が目を輝かせ、バイクを触る。
- 恋しい人を触るかのように。
- そばで、博、見ている。
- 司
- 「俺、一回でいいから、これに乗ってみたかったんだ。」
- 博
- 「まるで初恋の人に逢ってるみたいだな。」
- 司
- 「借りていいか?」
- 博
- 「あぁ。けど、傷つけるなよ。」
- 司
- 「うん。大丈夫だよ。俺の運転、お前がよく知ってるだろ?」
- バイクに乗る
- 博
- 「一晩だぞ。」
- 司
- 「判ってるって。」
- バイクで外へ出て行く。
山根家・前(夜)
- バイクが二台停まっている。
- 一台は博から借りたバイク。
- 家の中から口論する声。
- 司、出て来る。
- 玄関を激しく閉める。
- 博のバイクにまたがり、走り出す。
- 闇の中に消えていく。
横断歩道(夜)
- 信号が変わるのを待つ女(18)。
- 信号が変わり、−−−−
- 女、渡り出す。
- 交差点を、司のバイクがすごい勢いで曲がってくる。
- 女、立ち止まる。
- バイクのブレーキの音。
- ライト、輝き、
- (F.O.)
森村家・電話口(夜)
- 電話が鳴る。
- 博、受話器を取る。
- 博
- 「森村です。−−−警察?!」
警察署(夜)
- 電話する警官(34)。
- そばに、司。
- 警官
- 「山根司、ご存じですか?」
森村家・電話口(夜)
- 博。
- 博
- 「交通事故?!−−−うちのバイクです。無理矢理乗っていったんです。ボ・僕には関係ありません。ヒ・被害者です。僕も。」
警察署(夜)
- 警官、受話器を置く。
- 司
- 「どうでしたか?」
- 警官
- 「あんたもひどい友達、持ったね。」
- 司
- 「?」
- 警官
- 「あんたの怪我の事、一言も聞かなかった。」
- 司
- 「博、なんて?」
- 警官
- 「あんたが無理矢理借りていったって。」
- 司
- 「嘘だぁ!!!」
- 警官
- 「声が震えてたよ。」
- 司、俯き、握り拳を作る。
- 警官
- 「さぁ、聞こうか。」
- 煙草をくわえる。
同・前(夜)
- 司、出て来る。
- 片足を引きずっている。
- 悔しげな顔。
病院・廊下
- 足を引きずった司、やってくる。
- 病室から、女の兄(21)、出て来る。
- 司と目が合う。
- 兄
- 「何しに来たんだよ。妹は逢わないって言ってんだよ。帰れよ。帰ってくれよ。」
- 司を突き飛ばす。
- されるままの司。
- 兄、泣いている。
山根家・前
- 博、出て来る。
- 一礼などする。
- 足を引きずった司、帰ってくる。
- 博、司に気付く。
- 司、俯き歩く。
- 博
- 「司!」
- 司、顔を上げる。
- 博
- 「怪我、大丈夫か?」
- 司、博を無視して歩く。
- 博
- 「なした?」
- 司、歩く。
- 博
- 「大変だったな。お前も。」
- 司、立ち止まる。
- 博
- 「怪我、治ったら、乗ろうぜ。」
- バイクの手つき。
- 司
- 「帰れよ。」
- 博
- 「なしたんだよ?」
- 司
- 「帰れったら。」
- 博を突き飛ばす。
- 博
- 「なしたんだよ。」
- 司
- 「俺がいつ無理矢理バイクを借りた?」
- 博、ドキンとなる。
- 司
- 「友達面はよしてくれよ。」
- 博
- 「あれは、あの時は警察だって言うから焦っちゃって、つい。」
- 司
- 「つい本音がか?金持ちの家名に傷つけたくないモンな。」
- 博
- 「そんな。」
- 司
- 「自分に傷つけたくないモンな。警察沙汰はご免だよな。」
- 博
- 「違うよ。」
- 司
- 「こんな貧乏人と付き合っていると、ろくな事無いぞ。え、お坊ちゃん。」
- 博
- 「司」
- 司
- 「帰れってんだよ。」
- 博を突き飛ばし、
- 家に入る。
- 玄関が激しく閉まる。
大学・構内
- 博が女の子達と楽しげに話している。
- 司のバイクが博達を追い抜いていく。
- 博、司に気付き、
- 博
- 「司」
- 司のバイク、どんどん遠ざかる。
病院・廊下
- 病室から兄、出て来る。
- 長椅子に、司。
- 兄、中に戻る。
- 司、うとうとしている。
- 兄、出て来る。
- 司のそばに行く。
- 司、気付き、頭を上げる。
- 兄
- 「あんたもしつこいね。」
- 司、俯く。
- 兄
- 「妹が逢うそうだ。」
- 司、顔を上げる。
- 兄、中に入る。
- 司、立ち上がり、戸惑う。
- 兄、ドアを少し開け、
- 兄
- 「早く来い。」
- 司
- 「はい。」
- 病室に入っていく。
海岸(深夜)
- バイクが一台。
- 博、海に石を投げている。
- 寂しげな横顔。
- 小石は波に飲み込まれていく。
- おわり
シナリオ 1982-03 著作
Copyright ©2003-2013 all that's jazz. All Rights Reserved 問い合わせ |