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嫌な商売
XX病院・前
- 報道陣がカメラを構えている。
- 車から女性Aが男性Aに肩を抱えられ、降りてくる。
- カメラのシャッターが切られる。
- 女性A、ハンカチで目頭を押さえる。
- 記者A
- 「奥さん、ご主人のことを一言」
- 女性A、男性Aにかばわれて、中に入っていく。
- カメラマン、前に出て、女性Aを撮る。
- そのカメラマン、西川良幸(25)、にっこり微笑む。
- 他の報道陣に押され、倒れ込む。
新聞社・校閲
- デスクに向かい、ゲラ刷りを原稿と照らし合わせる野田洋(22)。
- 「代議士、自殺だった」の見出し。
- 良幸、何枚かの写真を手に取る。
- 良幸
- 「いいか?」
- 洋、顔を上げる。
- 良幸
- 「この中でどれがいいと思う?」
- 洋、写真を手に取る。
- 洋
- 「これですね」
- 女性Aを正面から捕らえた写真を出す。
- 良幸
- 「そうだろ?これ、いいよな」
- 洋、頷く。
- 良幸
- 「サンキュ。これで押してみるよ」
- 洋、微笑む。
- 良幸
- 「今晩、どうだ?」
- 飲む仕草。
- 洋
- 「いいですよ」
- 良幸
- 「よし。じゃ、後でな」
- 戻っていく。
- 洋、溜息を付き、デスクに向かう。
居酒屋「ひさご」・店内(夜)
- カウンターに、良幸と洋、酒を酌み交わす。
- 女将の久保邦子(35)、カウンターの中で、魚を焼く。
- 良幸
- 「カメラマンって言っても、そういいもんじゃないぞ」
- 洋
- 「そうですかね。校正なんかよりはいいんじゃ」
- 良幸
- 「今日もな。俺、代議士の奥さんの泣き顔、撮った時、嬉しかったんだよな。うまく撮れて。泣いてる人の前で笑ったんだよな」
- 洋
- 「その気持ちは判るけど、仕方ないじゃないですか。どんな時だって、うまくいけば俺だって」
- 良幸
- 「人の不幸に一番出逢う仕事だって、判っててもな。やり切れないよ」
- 酒を飲む。
- 洋、注ぐ。
- 邦子、魚を出す。
- 良幸
- 「ねぇ、ママ」
- 邦子
- 「何言ってんの。やりたい事をしているんでしょ?幸せよ。西ちゃん」
- 洋
- 「そうですよ」
- 良幸
- 「洋だって、いつかカメラマンになったら判るさ。俺の気持ち」
- 洋
- 「けど、校正なんかしてるよりいいと思うけど」
- 酒を飲む。
新聞社・校閲
- 洋ひとり、デスクに向かい、活字チェックをしている。
道警・記者クラブ
- 警察の発表にメモを取る記者達。
街
- 雪解けの道を走る車。
- おそるおそる横断歩道を歩く人々。
- それらを撮る良幸。
新聞社・校閲
- 活字をチェックする洋。
- 「代議士、自殺で」の見出しの下に、「暖冬、四月並みの気温」の見出し。
- 洋、ボールペンを置き、背伸びをする。
- 良幸、戻って来る。
- 首を傾げ、凝りをほぐす。
- 洋、お茶を飲み、良幸を見る。
居酒屋「ひさご」・店内(夜)
- カウンターで酒を酌み交わす良幸と洋。
- 洋
- 「まだ22ですよ。先輩みたく、外へ飛び出したいですよ」
- 良幸
- 「今度の辞令でなれるさ」
- 洋
- 「そっかな?」
- 良幸
- 「それまで我慢しれよ」
- 洋
- 「先輩と働けるから、就職したのにな」
- 良幸
- 「校正、そんなに嫌か?」
- 洋
- 「外の事が嫌でも目に入るんですよね。あの部屋にいて。たまんないスよ」
- 良幸
- 「そっか」
- 洋
- 「外へ出て、思い切り飛び回りたいスよ」
- 良幸
- 「そうだろうな」
- 洋
- 「軽く流さないで下さい。判りますか?この気持ち」
- 酒を飲む。
- 邦子
- 「野田ちゃん、これ位にしたら」
- 洋
- 「すみません」
- 猪口を置く。
- 良幸
- 「送るよ」
- 洋
- 「大丈夫です」
- 立ち上がる。
- 足がふらつく。
- 良幸、洋を抱きかかえ、
- 良幸
- 「ママ、いくら?」
- 財布を尻ポケットから取り出す。
- 邦子
- 「送ってってやってよ」
- 良幸、頷く。
- 洋
- 「大丈夫」
- 良幸の腕を振り払い、外へ出て行く。
- 良幸
- 「洋」
- 邦子
- 「勘定、今度でいいから」
- 良幸
- 「すみません」
- 走って、外へ出て行く。
大通公園
- 雪祭りの雪像作りが行われている。
- その光景を撮る良幸。
- 雪を積んだダンプがバックしてくる。
- 撮り続ける良幸。
- ダンプ、クラクションを鳴らす。
- 振り返る良幸。
- 慌ててどけようとするが、足元が滑り、転び、ダンプの下敷きになる。
- ダンプ、急停車する。
- カメラがタイヤに押しつぶされる。
新聞社・校閲
- 活字をチェックする洋。
- 同僚の松山征夫(26)、入ってくる。
- 征夫
- 「洋、西、ダンプにひかれた」
- 洋、征夫を見る。
- 征夫
- 「大通りで」
- 洋
- 「嘘」
- 征夫
- 「ダンプの下敷きになったらしいって」
- 洋、涙があふれてくる。
- 征夫
- 「病院に運ばれたけど、意識不明で」
- 洋、泣き崩れる。
- 征夫
- 「これ」
- 辞令の紙。
- 洋、手に取る。
- 征夫
- 「西の代わりだって」
- 洋、辞令の紙を握る。
- 征夫
- 「願い、かなったな」
- 洋、デスクに泣き伏す。
居酒屋「ひさご」・店内(夜)
- 洋、酒を注ぐ。
- 邦子
- 「野田ちゃん」
- 洋、顔を上げる。
- 邦子
- 「それ位にしたら?」
- 洋
- 「飲ませてよ。今日位。先輩死んだんだぜ」
- 邦子、徳利を持ち、注ぐ。
- 洋
- 「ありがとう」
- 邦子
- 「カメラマンになれたんだって?」
- 洋
- 「嬉しくなんかないよ」
- 邦子、徳利を置く。
- 洋
- 「先輩が死んだからなれたんだぜ。先輩いなきゃ、カメラマンになんかなりたくないよ」
- 酒を飲む。
- 洋
- 「カメラマンになったって、先輩いないんだぜ」
- 邦子、コップを出し、酒を注ぐ。
- 邦子
- 「嫌な商売よね」
- 酒を飲む。
- 洋
- 「ママ」
- 邦子、飲み干す。
- 洋、戸惑いがちに邦子を見る。
新聞社・報道部
- 記者達がたむろしている。
- その中に、征夫と洋もいる。
- 征夫
- 「今晩、通夜だって」
- 洋
- 「うちからは?」
- 征夫
- 「何もなきゃ出られるだろうけど」
- 電話が鳴る。
- 征夫、受話器を取る。
- 征夫
- 「殺し?判った」
- 洋、立ち上がる。
- 征夫
- 「おまえは通夜に出れ」
- 洋
- 「いや、現場に出ます」
- カメラを持つ。
- 征夫
- 「そっか。判った」
- 洋、記者達と出て行く。
路地
- 救急車を取り囲む報道陣。
- シャッターを切る洋。
- 救急車、走り去る。
- 洋、カメラを離し、手を合わせる。
- 雪が降り出す。
- おわり
シナリオ 1983-02 著作
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