J:COMで放映された映画をベースに、今まで観た映画、これから観たい映画を順次、整理し、並べてみます。ご活用下さい。
黒澤明の監督一作目であり、その資質がもっともよくでた作品。柔術対柔道の話を軸に人として成長していく姿三四郎。富田常雄のお馴染みの原作を黒澤タッチにダイナミックに描きあげる。主演の藤田進も素晴らしい。太平洋戦争時、戦況悪化した中作られたため、原版は初回上映のみで、再映時には制作意図を無視した79分にカットされ、DVD復刻時、中国東北部に占拠した満州からロシアに渡ったフィルムの発見により、94分にまで復元されたが、原版喪失はやはり惜しまれる。なお、黒澤映画の定評ある録音の悪さを補填するDVDの字幕選択はありがたい。DVDは特典として、94分の最長版が入っているが、79分再映版を特典として、最長版をメインにしてもいいような気がする。
黒澤明の国策映画。学徒動員により勤労奉仕に従事する女子挺身隊の姿を描いたヒューマン・ドラマ。出演者の一人、矢口陽子は本作の翌年黒澤監督と結婚した。
黒澤監督のデビュー作『姿三四郎』の続編。前作の死闘で三四郎(藤田)に敗れた檜垣源之助の弟・鉄心(月形)と源三郎(河野)。彼らは復讐のため、三四郎に雪山での闘いを挑む! 再び登場する月形と藤田の決闘シーンは必見。日本人をいじめたアメリカ兵を投げ飛ばすシーンなど戦時下の作品らしい要素も見られる。
能の「安宅」と、歌舞伎の「勧進帳」を監督自ら翻案し、ミュージカル風に仕上げた異色作。終戦直前に撮影され、占領軍の検閲によって未開封となり、1952年の講和条約締結後に初めて上映に至った。無念の都落ちする義経、弁慶一行に助っ人する強力役のエノケンこと榎本健一の視点で描かれ、庶民の心情を描き出している。
京大・滝川事件、ゾルゲ・スパイ事件を元に作られた、戦後初の黒澤作品。大学教授の一人娘・幸枝(原)は野毛(藤田)、糸川(河野)ら学生にとって憧れの的。幸枝を争うライバルだった2人は、満州事変を契機に野毛は反戦運動家に、糸川は検事への道を歩む。幸枝は信念を持って行動する野毛に次第に魅かれてゆき。反戦運動が吹き荒れる時代に、自らの信念を貫こうと強く生きる女性の姿を“永遠の処女”原節子が好演した。
戦争後の焼け跡の街並み、復興からやっとゆとりが芽生え始めた時期、貧しい恋人たちのささやかな休日、日曜日。お金を使わずのデートコースを考えながらも貧富の差が明確になり始めた街中ではむなしさが募ってくる。脚本家植草圭之助の想いに共感した黒澤明監督がそんな恋人たちの願いを描いた作品。
三船敏郎の初主演作で、記念すべき黒澤・三船の黄金コンビの第1作。ヤミ市付近の小さな病院の眞田院長は飲んべえで無愛想だが、貧乏人ばかりを診察する優しい男。そこへ、ヤミ市の顔役の若者・松永がフラリと現れ、銃弾の傷の手当てを依頼する。診察をした院長は彼に結核を宣告するが。黒澤明が戦後の混沌としたエネルギッシュな雰囲気を見事に描く。キネマ旬報ベスト・ワンほか数々の映画賞を受賞した名作。ブギの女王笠置シヅ子の「ジャングル・ブギ」を歌う映像は貴重。
黒澤が大映で撮った一作目。野戦病院で執刀の際、患者から梅毒を移され、戦後帰還しても病と闘い続ける医師を三船敏郎が好演している。
狂犬の眼に真っ直ぐな道
巨匠、黒澤明監督による刑事サスペンス。新任刑事・村上は、満員バスの中で7発の弾丸を装填したままの拳銃を盗まれてしまう。直ちに非常線が張られ、村上もまたスリ科の老刑事・佐藤と組んで犯人を追うが、奪われた拳銃を使って殺人事件が起こる。二人は東京中を歩き回るが、その間にも殺人事件は次々に巻き起こる。ついに遊佐という人物に辿り着くが。日本映画に"刑事もの"という新しいジャンルを確立した作品。鋭い切れ味の演出が冴え渡る傑作!