J:COMで放映された映画をベースに、今まで観た映画、これから観たい映画を順次、整理し、並べてみます。ご活用下さい。
新進画家と美貌の声楽家がスキャンダルに巻き込まれ、言論の自由とジャーナリズムの間に生まれる問題を正面から斬る社会派ドラマ。酔いどれ弁護士を演じる志村喬が抜群の存在感を見せる。特異な画風で注目を集める新進の青年画家・青江(三船)は、伊豆の旅館で美貌の声楽家・西條美也子(山口)と出会う。2人でいるところを写真に撮られ、雑誌によって事実無根のスキャンダルをでっちあげられる。激怒して編集長を訴えることを決めた青江に、胡散臭い弁護士の蛭田(志村)が近づき。オートバイにまたがる若き日の三船敏郎が魅力的。
芥川龍之介の「藪の中」を原作に、人の心に潜む醜悪なエゴと弱点を鋭く描き出した黒澤監督の傑作。王朝末期、都近くの藪で侍が殺される。だが目撃者の杣売(志村)と法師(千秋)、容疑者の多襄丸(三船)と侍の妻(京)らそれぞれの証言が食い違い。ヴェネチア映画祭で邦画初のグランプリ、アカデミー賞で外国映画賞受賞。
黒澤明が、敬愛するドストエフスキーの代表作を、19世紀のロシアから終戦後の北海道に設定を変え、森雅之、原節子、久我美子、三船敏郎という豪華キャストで映画化した意欲作。戦犯容疑で死刑宣告を受け処刑寸前で釈放されたが、これが深い衝撃となって白痴になった青年・亀田(森)は、復員して帰る途中の船で赤間(三船)と知り合う。赤間は政治家の囲い者、妙子(原)を愛していた。美しい妙子に亀田も心を奪われるが、一方、純粋な心をもつ亀田に下宿先の娘・綾子(久我)は心惹かれる。黒澤監督は、作品の長さを巡って会社と衝突し、「どうしても切れと言うなら、フィルムを縦に切る」とまで言って抵抗したというエピソードは、あまりにも有名。結局現在の長さで完成した「白痴」は当時日本では難解だと評されたが、海外では、「原作を大胆に改変しながらもその精神を生かし、舞台を日本に移すことに成功。更に、ドフトエフスキーの困難な心理描写を正しく表現した」と評価された傑作。
命短し、恋せよ、乙女
巨匠・黒澤明の最高傑作との呼び声も高い重厚なヒューマンドラマ。市役所の市民課長・渡辺(志村)は30年間無欠勤の模範的な役人だったが、ある日自分が胃ガンに冒され余命少ないことを悟る。渡辺は今までの人生を振り返り、人生の最後に本当に市民の役に立とうと公園建設に情熱を注ぐ。非人間的な官僚主義に対しての批判と、人間が生きる上での哲学がストレートに表現され、志村の鬼気迫る演技が作品に深い感銘を与えている。ベルリン映画祭銀熊賞を受賞。
日本の時代劇に西部劇的面白さを取り入れ、豪華キャストと壮大なスケールで深い人間模様を描く黒澤監督の最高傑作。1954年ヴェネチア映画祭銀獅子賞を受賞、のちに『荒野の七人』として、ハリウッドでリメイクされたり、サム・ペキンパーがその手法を引用するなど、世界各国の映画にも多大な影響を与えた。戦国時代のある農村。村人は野盗と化した野武士から生活を守るため、侍を雇うこととする。勘兵衛、菊千代ら、食うことにも窮する侍が7人集まり、農民たちにも竹槍訓練を始めさせる。そしてついに野武士の群れが全力を上げて村に攻撃を仕掛けてきた。
生涯を通じて反戦を訴え続けた黒澤監督が、1954年の“第五福竜丸事件”などの世相に触発されて原水爆反対の立場を表明した異色ドラマ。町工場を経営する資産家・中島(三船)は、突如原水爆に異常な恐怖心を抱くようになる。助かるためにはブラジルへ移住するしかないと思い込み、勝手に移住計画をたてるが、猛反対の家族は喜一を準禁治産者とする申し立てをする。三船が老けメイクで熱演した。
シェークスピアの『マクベス』を日本の戦国時代に置き換えた、戦国武将の一大悲劇。鷲津武時は謀反を起こした敵を討った帰りに、森で謎の老婆から不思議な予言を聞く。その予言通り大将に命じられた武時は妻・浅芽にそそのかされ主を殺害。自ら城主となった武時だが、再び浅芽に親友の義明を殺害するように迫られる。マクベス=三船が雨のごとく無数の矢に曝されるラストシーンは圧巻。
ゴーリキーの同名戯曲を巧みに時代劇に翻案した異色ドラマ。江戸の場末の棟割長屋に暮らすさまざまな人の人生模様を描く。黒澤作品にしてはめずらしく短期間・低予算で製作され、オープンセット・室内セット各1杯だけで撮影された。大家の女房・お杉と逢瀬を重ねる泥棒の捨吉、中年の色気を発散させる飴売り・お滝などが暮らす長屋に、ある日遍路の老人・嘉平がやってくる。