2000-11-10(水)
ブラジル映画カルロス・ディエギス監督『オルフェ』(1999年作品)を観てきました。
リオ・デ・ジャネネイロのバラカン(あばら屋)に住む人々の物語。
40年前の1959年にフランスで作られた映画『黒いオルフェ』(マルセル・カミュ監督作品)のリメークです。観光映画風になってしまった前作をより現地に近いものにしようと、作られた今作は、ブラジルならではのものでしたが重い。
ブラジル音楽を聴き親しんだ者にとっては聞き覚えのある曲が聴かれ、原作者ヴィニシウス・モレイラの語りがさりげなく流れていたりしてそれなりに楽しめるのですが、・・・
「あなたに逢える朝が来た」と歌われる「カーニバルの朝」の意味解釈、ボサ・ノヴァの名曲「みんながあなたのようだったなら」を使った主題の提示。今現在も変わらぬブラジルの貧民街の苦悩が重くのしかかってきます。
薬物売買で生き延びようとする者。
その伯父でそいつを追いかけ回す振りをし、食いつなぐ警察官。
幼なじみで「神をもうらやむ歌声の持ち主」オルフェ。
「まっとうな事をして、ここでも生きられる」
オルフェの純な考えは子供らに信奉を集めるが、このバラカンはそんな生易しいものではない。
「みんながあなたのようだったなら」
「暗い」「明るい」と脳天気に語る日本では「みんながあなたのようだったなら」なんて薄気味悪い言葉でしかないけれど、「みんながあなたのようだったなら」と切に願う民がこの世には存在する。豊かさ故に見失うもの。豊かなうちに気がつきたいものですね。