J:COMで放映された映画をベースに、今まで観た映画、これから観たい映画を順次、整理し、並べてみます。ご活用下さい。
溝口健二に師事した新藤兼人監督が、自らの下積み時代を描いた監督デビュー作。駆け出しのシナリオライター(宇野)が、日本映画を代表する巨匠のもとで厳しい修行に励んでいる。やっと成功への第一歩を踏み出そうとしていた矢先、彼を影で支えてきた妻(乙羽)が病に倒れてしまう。新藤監督の病死した最初の妻、孝子夫人との短かった生活を、フィクションを交えて描いている。この作品で新藤と公私共に終生のコンビとなる乙羽信子を見出した。
独立プロ・近代映画協会を設立した新藤兼人監督の自主製作第1作で、原爆の悲惨さを真正面から描いた初の劇映画としても知られる。原爆投下の日、幼稚園の保母をしていた教師が、7年後の夏休みにかつての園児たちを訪ねて歩く。
幼くして芸者置屋に売られた銀子の激動の半生を通じて、封建的な芸者社会をリアルなタッチで描き出した問題作。自然主義作家・徳田秋声の同名小説を新藤兼人が脚本、監督。主演の乙羽信子は初の汚れ役に挑戦、ブルーリボン女優主演賞に輝いた。
終戦直後の横浜・鶴見川のほとりに立ち並ぶバラック作りの部落を、新藤兼人が実際に取材して映画化した作品。河童沼のルンペン部落の新たな住人となった若い女。頭は弱いが気の良いこの女は、街娼となってその稼ぎをあぶれ者の住人たちに貢ぐのだったが。
焼けつくような夏の日、現金輸送車が5人組の強盗に襲われた。強盗たちはいずれも人生から転落し生活に窮した者たちで、やむなく強盗に手を染めたのだった。新藤監督が、出口のない状況に陥った人間たちの絶望と社会悪をリアルに描く。
女性をテーマにした映画を数多く生み出した新藤兼人監督のもと、北原三枝が男に裏切られる寂しく孤独なヒロインを切々と演じた大田洋子原作の作品。幼い頃父親に捨てられ、母に育てられた千穂は、19歳の時、友人に紹介された男と結婚をする。離婚した母のようにはならずに幸せな家庭を築くことを心に誓うのだが、ある日、彼に離婚調停中の妻子のいることが発覚する。
京マチ子、田中絹代ら大女優を迎え、新藤兼人が脚本も手がけたほろ苦さのただよう家族ドラマ。戦争花嫁としてアメリカへ渡った長女の帰還が一家に波紋を呼び起こす。尾道で食堂を営む政夫(小沢)一家の元に、姉の秀代(田中)が30年ぶりにアメリカから帰ってきた。かつて秀代は困窮した家を救うため、結納金目当てに見知らぬアメリカ移民の花嫁となったのだ。しかし屋敷は人手に渡り、家族はバラバラになって暮らしていた。
アメリカ・ビキニ環礁で行なわれた水爆実験に第五福竜丸が遭遇した事件を新藤兼人がドキュメンタリー・タッチで描き出す衝撃作。宇野重吉の抑えた演技が、悲しみと反戦への思いを訴える。1954年3月1日、第五福竜丸の乗組員たちはビキニ環礁水爆実験に遭遇し"死の灰"を浴びる。帰港後、全員が原爆症と判明して日本中の注目が船員たちに集まる。当時の医学の総力を結集して治療が行われるが、彼らは一人ずつ力尽きてゆく。
アメリカから花嫁探しに来日した日系二世の青年が、日本各地をまわって3人の候補者に会うが、最後に案内役の旅行社の女性と結ばれ、晴れて故郷アメリカに帰るというコメディ。名匠・新藤兼人監督が脚本と監督を担当したライトな1作。
子供たちが自由に意見を書き込める黒板を設置した小学校教師・青木博さんの教育実践記録に基づいた学園ドラマ。『裸の島』の準備で広島を訪れた新藤兼人がこの話を聞き、感動して映画化を決めたという。広島県の小学校教師・青山先生(加地)は教室の後ろに黒板を作り、日々の生活で思ったことを誰でも自由に書き込めるようにした。子供たちは様々なことを黒板に書き、先生は彼ら自身に解決について考えさせて、個性や自主性を伸ばそうとする。
瀬戸内海に浮かぶ小島に暮らす家族の姿を通して、厳しい自然と闘い共存しながら生きいく人間を描く。モスクワ映画祭グランプリ受賞ほか各国に広く紹介され、一躍、新藤兼人の名が世界に知れ渡った。セリフを一切排し、映像だけで語るという実験意欲に満ちた詩篇。黒田清己の撮影、林光による音楽が織り成す映像叙事詩。
野上弥生子の小説「海神丸」を新藤兼人が脚色・監督した秀作人間ドラマ。食料はおろか水までもなくなってしまった難破船という極限状態の中で次第に精神に異常を来しはじめる4人の人間たちの姿を、冷徹な視点で淡々と描写。人間の“生きる闘い”の姿の中に人間そのものを追求する意欲作。『裸の島』に続いてスタッフ・出演者は静岡県松崎町に合宿しオールロケで制作された。
『裸の島』など、人間の愛と性のモラルを問い続ける巨匠・新藤兼人の代表作。戦後の広島を舞台に、逆境の中で愛に目覚め、母性を認識した女の姿を描く。“母”というものの本質に迫る感動作。新藤監督の伴侶である主演の乙羽信子が母のエネルギーを見事に表現している。
戦乱の南北朝時代。落武者を殺してはその武具・甲胄を売りさばいて生きる、娘と義母の物語。ある日娘の夫の友人が戦乱から帰ってきた。娘と激しく燃えるのを見て嫉妬した義母は、般若の面を付けて二人の恐怖を陥れる。が、その般若の面はとれなくなってしまい。
谷崎潤一郎の戯曲「顔世」を新藤兼人が脚色・監督。南北朝時代を背景に、激しい愛に殉じた男女の姿を力強く描くラブストーリー。『砂の女』の岸田今日子が絶世の美女を艶やかに演じる。南北朝の動乱期、足利将軍の執事・高師直(小沢)は、田舎武士の妻で絶世の美女・顔世(岸田)に恋焦がれる。策を弄して顔世を我が物にしようとするが、夫・高貞(木村)を心から愛する顔世は師直になびかず、遂に師直は高貞を陥れようとする。いかなる権力も人の魂まで奪うことは出来ない。崇高な精神美を強烈なメッセージで描いた力作。
平安時代中期の京都。4人の落武者に暴行され、家ごと焼かれた母娘が、妖怪となって次々と復讐をとげる。美しくも謎めいた母娘をめぐるエロティシズム漂う幻想時代劇。『午後の遺言状』の新藤兼人監督による異色作。太地喜和子の妖艶な化け猫ぶりが圧巻。
親密すぎる母と息子、母に対抗意識を燃やす息子の恋人が織りなす奇妙な三角関係を、新藤兼人が自らシナリオも手がけて監督。乙羽信子が息子を愛する母と気だるい娼婦の二役を演じる。息子の利夫(大丸)と暮らす民子(乙羽)は利夫から恋人の八重(太地)を紹介される。民子は二人の関係が親密になるにつれ神経をとがらせ、一方、八重も民子に敵意を感ずるようになっていく。利夫は母に瓜二つの娼婦ユキ(乙羽 2役)と出会い、関係を持つが。
集団就職で上京してきた少年が、大都会の非情のメカニズムに巻き込まれ、ふとしたはずみで殺人を犯してしまう。当時社会を震撼させた未成年者・永山則夫による“連続射殺事件”を題材に、卓越したリアリズムで孤独にすさんだ青春像を描き出した新藤兼人監督の異色作。青年役の原田大二郎が好演。モスクワ映画祭金賞受賞作。近代映画協会創立二十周年記念映画。北海道から集団就職で上京した山田道夫(原田)は、勤め先を転々として、一人孤独を抱えていた。道夫を支えるものは、かつて横須賀米軍基地から盗んだ、ずっしりと手応えのある拳銃だけだった。
能狂言の名作「鉄輪」と現代劇を交錯させたエロティック・ファンタジー。新藤監督が手掛けた初のカラー作品。古代と現代で同じように愛をかわす中年男(観世)と若い愛人(フラワー・メグ)。その愛を遮るのはいずれも嫉妬に狂った中年男の妻(乙羽)だった。異なる時代を巧みに絡ませ、嫉妬の念を追求した異色作。
谷崎潤一郎の「春琴抄」を原作にした文芸ドラマ。生まれながらの美貌を持ち、琴三弦の名手でもあった春琴(渡辺)は9歳で失明し、以来身の回りの世話を使用人の佐助(河原崎)にさせていた。だがある日、春琴は自慢の美貌に大火傷を負ってしまい。倉敷で撮影された風景とともに日本の伝統美とロマンティシズムを謳う官能作。
夏目漱石「こころ」(図書カード-青空文庫)を舞台を現代に移して描いた新藤兼人監督・脚本作。一人の娘をめぐる二人の若い男の愛の葛藤に焦点を絞っている。同じ大学に学ぶK(松橋)とS(辻)。Kは自分が見つけた未亡人(乙羽)と娘I子(杏梨)の二人暮しの下宿に、Sも同居させることにするが。
行き倒れになった青森出身の出稼ぎ労働者が、身元不明人として処理され、医大で勝手に人体実験が行われる。人権無視の現実をドキュメンタリー・タッチで描く社会派ドラマ。
溝口健二と仕事をした39人の俳優・スタッフ・友人の証言から、彼の仕事ぶりとその人間像を描き出した貴重な長編ドキュメンタリー。溝口を師と仰いだ新藤監督は自ら製作・構成・台本も担当し、さらに全50時間にも及ぶインタビューを敢行。女性崇拝主義であり、伝説的なエピソードを数多く残した溝口健二の秘密に肉迫していく。
幼くして視力を失った三味線の名手・高橋竹山の半生を描いた伝記映画。風土と密着した民衆芸能の世界を背景に人間味あふれる芸術家の姿を追った秀作。竹山本人が特別出演し演奏も披露する。ドキュメンタリーとフィクションの枠を取り払った新藤兼人監督の意欲作。
実際に起こった家庭内暴力事件をもとに、新藤兼人監督がシナリオ化した衝撃の問題作。高校生の息子・勉(狩場)に対して教育熱心な父・保三(西村)と母・良子(乙羽)。成績優秀な勉が、ある日突然暴力を振るいだし、バットで物を壊したり、ついには母親を 犯そうとする。思い悩んだ両親は息子を殺そうと決意するが。良子役の乙羽信子は本作で1979年のヴェネチア国際映画祭イタリア 映画ジャーナリスト選出女優賞を受賞。
川底から母子家庭の中学生の遺体が上がる。警察は他殺と断定するが、公聴や教師は狼狽、生徒の多くは無関心で無表情というなかで、恐るべき“いじめ”の実態が明らかになっていく。学校での深刻ないじめをテーマに『午後の遺言状』の新藤兼人が脚本・監督した問題作。
初老の作家の少年時代の回想を通して、広島のある旧家の没落を亡き母への思慕を込めて叙情豊かに描く。モノクロ映像でキメ細かくとらえた、新藤兼人監督の自伝的色彩も濃い1作。家族をいつも温かく見守る母親には新藤兼人夫人の乙羽信子が扮して名演を見せる。
『原爆の子』『第五福竜丸』と、原爆問題に取り組んできた新藤兼人監督の原爆ものの1本。終戦直後の広島で巡演中の新劇人中心の移動演劇隊・櫻隊が原爆の洗礼を受け、9人が非業の死を遂げるまでをセミ・ドキュメンタリー・タッチで忠実に再現した。
永井荷風の同名小説を、主人公を荷風自身に置き換えるという新藤監督の大胆な脚色で映画化。異端の文豪・永井荷風と可憐な娼婦・お雪との、狂おしいまでの恋愛模様を描く。父の意に反し、早くから文学の道を志した荷風(津川)は、玉ノ井の娼家・お雪(墨田)と出会う。底辺の世界に生きながらも清らかな心を持つ彼女に、荷風は運命的なものを感じ、57歳にして結婚の約束をするが。墨田ユキが1992年日本アカデミー・新人俳優賞受賞。
蓼科へ避暑に訪れた老女優と彼女の世話をする農婦の交流を通して、老いと死を描くヒューマンドラマ。名匠・新藤兼人監督が愛妻である名女優・乙羽信子と杉村春子のダブル主演で撮り上げた。夏になると蓼科を訪れるベテラン女優・蓉子(杉村)が、今年も別荘へやって来た。30年以上も別荘を管理している農婦のとよ子(乙羽)は、蓉子に重大な秘密を打ち明ける。それは、22歳になる自分の娘・あけみの父親は蓉子の夫だというのだ。
『午後の遺言状』の新藤兼人監督が、民話「姨捨て伝説」と現代の老人問題を交錯させた社会派人間ドラマ。三國連太郎と大竹しのぶが愛憎相反させながら同居する親子を演じる。妻と死別して15年、70歳の安吉(三國)は40歳になる長女・徳子(大竹)と暮らしている。躁鬱病を患う徳子は、自分が婚期を逃したのは父のせいだと言って安吉を責める。失禁し、体の自由もままならなくなった安吉は老人ホームへの入居を決意するが。
戦後の邦画界で活躍し、自らを三文役者と称した名バイプレイヤー・殿山泰司の天衣無縫な人生を綴る人間喜劇。『生きたい』の新藤兼人が脚本も手がけ、竹中直人が殿山泰司に扮する。銀座のおでん屋に生まれ、役者となったタイちゃんこと殿山泰司(竹中)は、ウエイトレスのキミエ(荻野目)と相思相愛の仲に。しかしタイちゃんには内縁の妻・アサ子がいた。二人の女の間を行き来しながらタイちゃんは数々の映画に出演し、活躍する。
日本映画界現役最長老(製作当時91歳)の新藤兼人監督が、東北のとある開拓村で起きた奇妙な連続殺人をブラックユーモアを交えて描く異色サスペンス。大竹しのぶと伊藤歩が、男たちを殺してたくましくしたたかに生きる母娘を熱演。大竹しのぶは本作で2003年モスクワ国際映画祭主演女優賞を受賞した。かつては開拓村だったが、今では母(大竹)と娘(伊藤)しか残っていない村。食べ物も底を尽き、餓死寸前の母娘は死ぬよりは体を売って生き抜こうと決意する。さまざまな男が母娘の元を訪れるが、不思議なことに彼らはそのまま姿を消すのだった。監督による撮影ルポ『ふくろう 90歳の挑戦』も出された。
新藤兼人監督が自身の体験をベースに教師と生徒たちの長年の交流を綴る。柄本明が情熱的かつエキセントリックな先生を好演。大正から昭和初期にかけての時代の空気が細かく再現された。大正末期、広島市から山ひとつ奥にある石内尋常高等小学校には、市川先生(柄本)という名物教師がいた。30年後、元教え子で村の収入役となった三吉(六平)は市川先生の定年祝いに同窓会を企画し、大人になったクラスメイトは再び集う。
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