J:COMで放映された映画をベースに、今まで観た映画、これから観たい映画を順次、整理し、並べてみます。ご活用下さい。
数ある「けれど」シリーズでほぼ完全な形で観られる貴重な作品。お隣の上司の子供をも手なずけ、ガキ大将になる息子。しかし、父親は上司にいつもペコペア頭を下げる。「なんでお父さんはお隣のおじさんにペコペコするの?」生れてはみたけれど、肩書き社会のサラリーマンの悲哀をユーモアたっぷりに描いている。
小津映画の常連である坂本武を主人公に起用した“喜八もの”の第一作。長屋に住むどこか頼りないが人情にはあつい喜八は、職を失い困っている若い娘に同情して、近所のめし屋のおかみにあずける。やがて、子持ちのヤモメである彼は年がいもなくその娘にほれてしまうが。下町の庶民の助け合う姿や、絶妙のユーモアなど、後の渥美清主演の「フーテンの寅」シリーズを想起させる上質の人情喜劇。
日本文化を海外に紹介するために製作された記録映画。歌舞伎をはじめ古典芸術にも造けいの深かった小津監督が手がけた唯一のドキュメンタリーで、不世出の名優といわれた六代目尾上菊五郎の素晴らしさと、彼が演じた有名な舞踊劇「鏡獅子」を丹念に説明している。撮影が行われたのは1935年6月25日。海外向けのため日本では一般公開されなかった。小津が初めて手がけたトーキー作品でもある。
妻を早くに亡くした大学教授が、婚期を逃しかけている娘とともに北鎌倉に二人で暮らしている。父親は娘の幸せを願い、娘は嫁いだら一人になってしまう父親のことを心配する。平凡な日常生活を通して、父親と娘のきずなを美しく描いた名作で、戦後の小津安二郎監督の名声確立に大きく貢献した。原節子が小津映画に初登場した記念すべき作品でもある。
因習に縛られて生きる姉と、そんな姉に反発する妹の対照的な人生を通して、日本人の価値観の変化を浮き彫りにする大佛次郎原作の人間ドラマ。小津安二郎監督が古巣の松竹を離れ、初めて新東宝で撮った作品。夫(山村聰)が失業中なのでバー勤めをする節子(田中)と、自由奔放に生きる妹・満里子(高峰)。皮肉屋の夫に黙って仕える節子の生き方が、若い満里子には理解できない。そんな中、節子は初恋相手であり、現在家具店を営んでいる田代(上原)に惹かれてゆく。
娘の結婚を心配する家族の物語。北鎌倉に住む3世代7人の大家族。両親や兄夫婦は、28歳になる娘の縁談についてあれこれ心配するが、う余曲折をへて彼女は近所に住む子持ちの医者と結婚することになる。そして娘の結婚とともに、一家はそれぞれ別の道を歩むことに。『晩春』と『東京物語』の間に位置する小津芸術完成期間の作品で、原節子は再び結婚問題に直面するヒロイン“紀子”を演じている。
真面目で無愛想な夫。その夫を“鈍感さん”と呼んで好き勝手な生活を楽しむ有閑マダムの妻。中年にさしかかった価値観の違う夫婦が、夫の南米行きを機に和解する。出発の前日、夜中に二人でお茶漬けを食べるシーンがほほえましい。戦時中に検閲で却下された脚本を、高度経済成長を迎えつつある日本の現状に合わせて改めて映画化した作品である。
世界映画史にさん然と輝く小津監督の代表作。戦後の日本における家族制度の崩壊を淡々としたタッチで味わい深く描き出す。尾道に住む老夫婦が、東京に世帯を持った息子と娘を訪ねる旅に出る。子供たちに歓迎の気持ちはあるが、日常の生活に追われ、両親を厄介ばらいしようとさえする。そんな中、心の通い合いを持ちえたのは、戦死した次男の嫁だけだった。
「家族」をテーマに多くの映画を撮り続けてきた小津安二郎監督が、とある家族が抱える影の部分にスポットをあてて、あくまで冷徹な視線で描き切った異色の人間ドラマ。銀行の監査役を務める周吉には、成人した二人の娘がいる。母親は、娘たちがまだ幼い頃に家を出て行ってしまい、次女の明子は母の顔さえも覚えていない。しっかり者の長女はすでに結婚したが、明子は奔放な生活を送ったあげく、ついには望まない妊娠をしてしまう。
東京郊外の新興住宅地を舞台に、隣近所の人間模様を描く長屋ものを得意とした小津監督が独特のユーモアセンスを発揮した作品。団地や、テレビ、フラフープなどが登場した昭和30年代前半、子供たちのいたずらや親たちの日常会話を通して、当時の庶民の生活がいきいきと浮かび上がる。
1934年に手掛けた『浮草物語』を、小津安二郎監督が自らリメイク。港町を舞台に旅役者一行と周囲の人々が繰り広げる人間ドラマ。小津監督の第二の故郷・三重県でロケーションされた。志摩半島の小さな港町に、嵐駒十郎一座が数年ぶりにやって来た。駒十郎(中村)にとっては、昔、子供を産ませたなじみの女・お芳(杉村春子)が待っている町だ。それに嫉妬した現在の恋人・すみ子(京)は、一座の女優・加代(若尾)に駒十郎の息子(川口)を誘惑させる。
「晩春」(1949年作品)で婚期を逸しかけている娘を演じた原節子が、その11年後に作られたこの作品では、司葉子ふんする一人娘の縁談を気遣う母親役に転じている。夫の友人から娘の縁談と自分自身の再婚をもちかけられた未亡人と、娘との微妙な心理を描いた小津監督晩年の成熟したドラマ。和解した美しい母と娘が周遊券で温泉旅行する後半のシーンが心に残る。
妻に先立たれた造り酒屋の小早川万兵衛を中心に、なき長男の嫁の問題や、次女の恋愛、自身の女性問題など、小早川家にかかわる悲喜こもごもを小津監督が独特の情感で描写した作品。原節子、司葉子、森繁久彌、中村雁治郎、小林桂樹、加東大介といった、ベテランキャストが総出演。
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