犬神家の一族



1997年5月岩尾内湖。
残業中、職場の上司が私に近づいてきた。な、なんだ。いろいろな不安が頭をよぎる。用事があるなら早く言ってくれ。そして、新聞記事をおいて戻っていった。
ー1997年5月8日北海道新聞夕刊ー「魚種多彩 尽きぬ魅力 上川管内朝日町・岩尾内湖」

・・・40センチのアメマスがヒット サクラマスの魚影濃く・・・

2日後
この日は、尻別川へJ氏と行くことになっていた。待ち合わせ場所でー「この記事みた?」「みたよ。」「行くしかないな。」釣り師の判断は速い。すでに2人の頭の中は40センチのアメマスと記念写真を撮っている場面が描かれ、心持ち薄笑みがこぼれている。だが、岩尾内湖だけでは満足できないところが我々のよいところでもあり、悪いところでもある。調べてみると近くにはそのほかに釣りのできる湖が散在しているではないか。これを見逃す手はない。車中いかに効率よく湖を釣り歩くか計画を練り、朝日町へと向かった。

まず最初に行ったのが愛別ダム。釣り人が誰もおらず、本当にここで釣りしていいのかなあと言いながら川のインレットで釣り始めた。途中釣り人がやってきた。安心するとともに俺のポイントによくもというような釣り人ならではの縄張り意識を持ちながら会釈した。その後ポイントを変えるが釣れず、早々に愛別ダムに見切りをつけ次なる湖ーポンテシオ湖へと車を走らせた。

ポンテシオ湖には4人ほど先客がいた。ここは、山奥のダムで湖の周りはまだ雪でおおわれていた。釣ることができる場所が道路沿いだけでポイントが限られ、ここも早々に立ち去った。

次なるは本日のメインイベントー岩尾内湖だ!
真っ先に寄ったのが新聞記事でアメマスが釣れていたという似侠川インレット。

さて、それでは問題です。

新聞の記事に踊らされて、このポイントにきていた釣り人は何人でしょうか。
(これは延べ人数ではありません。我々が釣っていた12:00ー13:00にいた人数です。)

1,そんな物好きはいない。
2,3,4人
3,6,7人
4,10人以上


このポイントは、水草が多くルアーが投げにくい。そこで川沿いにルアーを流した。数投目でゴン、ググッ。やった!頭の中に朝思い描いた記念写真がちらつく。スー。どうしたんだ。おい。・・・バラしてしまった。
・・・んんんん気持ちが収まらない。そうだ、言い訳しよう。先日40センチオーバーの魚に糸をぶっちぎられた。それからすぐにPEライン(平たく言うと切れにくい糸)を買って今回に臨んだ。確かに宣伝通り強度はふつうのラインの数倍は違うし、細い。また、伸縮もないのであたりが手に直接伝わる。今回逆にそれが災いした。あたりに驚き早あわせしてしまった。・・・・

その後あたりもなくいろいろポイントを変え、ボート乗り場へ。そこで先ほどのやけくそ紛れに1月に1回だけしか使っていない海アメ用のタックルを持ち出した。・・・よーしこれで重いルアーをぶち込んで湖の主を釣ってやる!!!
J氏の横でルアーを投げる。2,3回投げる。あれ?横でミノーを投げているJ氏とあまり飛距離が変わらない。まずい。これはいけない。案の定、J氏がそこを突いてきた。

「ナンダ、あんまり飛距離かわんないな。」

この言葉が、釣り師の心に火をつけてしまった。
・・・ようし、やってやろうじゃないか。
顔は至って冷静さをたもちながらも体中の筋肉をさおに集中させ渾身の力でルアーを投げた。
ウオリャー!!!(どうだ、J氏。見よ!)

その瞬間、糸がぶっちぎれ、それとともに竿先までも遠くに飛んでいってしまった。
ああああああ、、、
なんてことだ。まだ1回しか使ってないのに。しかも竿先は横に浮かばずに、浮きのようにたっているではないか。その浮いた竿先を見て、またJ氏が言った。

「”犬神家の一族”みたいだな。」


Sample image


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