サメだ!



1996年5月4日十勝川千代田堰堤
前年のゴールデンウィークの釣行はひどかった。「道南が今いいらしい。」という怪しい情報でパラダイスを探し回った3日間。おまけに雨でびしょびしょになりながらのテント設営。「何で俺たちはいつもこうなんだ!」何度この言葉を言ったことだろう。 今年こそ・・・3人の釣りキチは、いつになく肩に力が入っていた。いつも力が入りすぎていることに現時点ではまだ誰も悟っていない。

今回は、前回の失敗を生かして十分な情報を得て場所を決めた。北海道新聞木曜夕刊釣りページ。海釣りの記事が多い中で渓流の記事をひたすら待った。やっとでたのが「道東の春探るアメマス行脚ー1年ぶりの対面に感激ー」という記事。3月17日十勝川と利別川の合流地点で67センチのアメマスを釣ったとかかれている。読みながらまた、肩に力が入っていた。ただ、困ったことがある。今まで渓流中心で釣っていたため今回の川は、大きすぎる。餌釣りの友人たちにはちょっとつらい。が、彼らにとってそんなことは大した問題ではなかった。いつの間にかルアーマンに転身していたのだった。しかも高価な道具をそろえて。・・・みんながルアーの道具をそろえた話を聞いて「やられた。」と思った。とにかくそう思った。次の日、釣具屋でダイワの初心者用ルアーセット「ストライクフォース」を買っていた。それから、仕事が早く終わったら近くの千歳川に通った。千歳川舞鶴橋(長沼町)ーここは、春先、海へと向かう鮭の稚魚を追ってきたアメマスが釣れるポイントだという。だが、ビギナーズラックはなかった。釣れたのは、ウグイだけだった。普段はさわらず針を持ってふるい落とすウグイだが、ルアーで初めて釣れたこの日は少しかわいく思えた。

そしていよいよゴールデンウイーク。全員準備はばっちり、十勝川へ向かう車の中はまるでルアーの品評会だった。途中、金山湖で小手調べ。この日の金山湖は、イトウをねらって沢山の人でにぎわっていた。とにかくルアー初心者の3人は、人混みを避け、ロッドを気兼ねなくふれるポイントで釣ることにした。渓流釣りに比べ湖の釣りは変化がなくかなりだれるのが早い。本当にここでいいのか、魚がいるのか不安になってくる。またひっかかったと思った。すでに沢山のルアーをなくしていた。でもひっかかったのは、25センチのイワナだった。その後は全く当たりもなく帯広のホテルへと向かった。

午前4時30分ホテルを出発。十勝川と利別川の合流地点へと向かった。が、水が濁り、風強く、釣りにならずあきらめ、ほかを探すことにした。他に情報のない私たちは、川の流れに沿って釣れそうなところを探しながら車を走らせた。

たどり着いたのは、千代田堰堤。帯広の観光ルートの一つである。「こんなところで釣りしていいのかなあ。」時折訪れる観光客をよそ目に竿を振る。結構恥ずかしい。そして、話しかけられる。「何か釣れるんですか。」・・・「こっちが教えてほしい。」とは言えない。「今の時期アメマスが釣れるみたいですよ。」と愛想良く答え、早く行ってくれることを願いながらまた竿を振った。そんなことを繰り返しているとき、ついに当たりがきた。それも未だかつてない強い引きが。これはみんなに知らせなければいけない。
「きた!きた!きた!」
周りに人がいるがもう気にしていない。「サメだー!」本気でサメだと思った。なかなか引き寄せられない。引き寄せてもすぐに走られてしまう。周りには観光客も集まりだしていた。しばし人前でみっともないやりとりをしながらついにランデイング。見たこともない魚だ。・・・やっぱりサメか?

ハニーが言った。「サ、サクラマスだ。」こ、これがサクラマスか。雑誌などで見たことはあったがなかなか現物とは結びつかなかった。計測するとサクラマスにしては小振りの44センチ。一説にはサクラが咲く頃遡上してくるのでサクラマスと呼ばれているらしい。確かに北海道のサクラは5月に咲く。

また、5月にサクラの花見がしたい。


Sample image

千代田堰堤


****注意****

北海道では一部の河川をのぞいて、川でのサケ・マスの捕獲が禁止されています。

釣れたサクラマスも記念撮影後すぐにリリースされています。



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