バック・トゥ・ザ・フューチャー



1995年6月朱太川上流。
この時期の朱太川は、虫との戦いである。呼吸をするだけで口の中に虫が何匹も入ってくる。帰る頃には、顔の形が変わっているのがわかる。ある友人は、ここの虫の一刺しで病院送りにされた。刺されたときはかゆいだけなのだが、一晩経つごとにねつをもって腫れ上がり、次第に体全体に熱がでるという恐ろしい虫たちなのだ。この話を聞いて、すぐに防虫ネットを買いに釣具屋に走った。確かに虫は、入ってこないがフライが見えづらくネットが皮膚に当たり、かなりイライラする釣りになるのがこの防虫ネットだ。でも病院送りよりはまだいい。

この日は、やまべ(北海道では、ヤマメのことをいう。)の15センチぐらいのをドライフライで数十匹もつり上げていた。こんなことは、滅多にないことなのでCDCダン、パラダン、エルクヘアーカディス、フローティングニンフなどいろいろ試しながら釣り上っていた。サイズさえ合えばあえば何でも釣れる状態であった。

さあこれからというときに、行く手を遮るように針金が張られている。ここは、牛の放牧をしているらしく牛がにげないようにしてあるのだった。「ちょっと失礼して」と針金をくぐろうとしてみたら、電線についているガイシのようなものが・・・。
「危ないところだった。俺としたことが。」
だが針金をくぐらずして、上流へはいけない。
かるくさわってみた。・・・なんともない。
つまんでみた。・・・なんともない。
「なんだ脅かせやがって。」がっつり掴んでくぐろうとした。

その瞬間吹き飛ばされ、針金から数メートルのところでうずくまっていた。
この光景どこかでみたことがある。
「バック・トウ・ザ・フューチャー」だ。
博士が主人公を未来に送り出すために作った仕掛けに雷が落ちるシーンだ。ただ、違っているところが少しある。吹き飛ばされた、というくだりだ。冷静に考えると吹き飛ばされたのではなく、自分で飛んだのだ。人間意外なところで意外な力を発揮することが思わぬ時にわかったりする。それ以来、はりがねをみたらどんなに時間がかかろうとも遠回りするようになった。


でも、あのとき未来にとばされなくて本当によかった。




Sample image

道東俣落川付近で


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