世にも危険な物語1



釣りをしていてとても危険な場面に遭遇したことがある方も多いことだろう。我々も年に一度はそんな目にあっている。・・・

<エピソード#1>1997年1月江ノ島海岸

冬は渓流ファンにとって納竿の季節だが、近年北海道ではルアーやフライで狙う海アメ釣りが人気になっている。海アメとは海にいるアメマスのことで大きい物は70センチを越える物もいるそうだ。特に島牧から瀬棚にかけての日本海は禁漁河川が点在するため、他の地域に比べ魚影が濃いらしい。

70センチオーバーの海アメを夢見て我々もこの年からこの釣りを始めた。そして今回が2回目の釣行だ。天気予報では大荒れの予想だが、いつもの「なんとかなるさ。」でJ氏の新車テラノに乗り込み、真夜中島牧へと車を走らせた。着いてみると、雪は降っていないが海は大荒れ、誰も釣っている人はいなかった。それでも、何人かの釣り人らしき人たちが車の中で寝ていたが、我々は早々にあきらめ帰路についた。

Sample image帰る途中、折角なので夏にはよく釣りをする尻別川で竿を出してみた。真冬の渓流釣りは初めてだ。だが、釣り始めてすぐに後悔した。釣りどころではないのだ。冷静になって考えると当たり前なのだがまずもって水が冷たい。海水と違い淡水なので、ラインに着いた水がスプールのところで凍り、ルアーが投げられない。ガイドがすぐ凍る。ルアーが流れてくる氷に引っかかる。・・・
改めて我々が釣りバカ(ただのバカ?)だと認識した。

「今日のところはこれぐらいで勘弁してやる!」と言い残し、ここでも早々に引き上げ、素直に帰ることにした。「4,5時間もかけて来たのになんだったんだろうな。」などと話しているうちにだんだん天候が怪しくなってきた。喜茂別を過ぎ、中山峠に向かう頃には雪は本格的に降り、真昼というのに暗く、雪以外何も見えなくなっている。さらに雪は激しく降り、風が今降った雪を巻き上げ、3,4秒間だったであろうかまさしく視界0という状態が続いた。そして雪が途切れた瞬間、目の前にワゴン車が・・・

視界が広がり、衝突するまで1秒くらいだったと思うがスローモーションの様によく覚えている。まず、衝突した瞬間シートベルトにスゴイ力が加わった。目の前にエアバックが現れ、すぐにしぼんだ。だが、コマーシャルで見るような大きな膨らみではなく、カンチャンがハクション大魔王を呼び出そうと無理矢理クシャミをしようとするのだができなくて、大魔王が壺に戻っていくようなそんな感じだった。それと同時にバックミラーがはずれ割れた。・・・
スピードを落としていたので大事故というほどのことはなかったのだが、衝突した瞬間とっさに手を出したのか親指の付け根がぱっくりさけていた。エアバックの黄色いガスが車内に広がり、あわてて車から降りた。でもどこか懐かしい臭いがした。そう、エアバックのガスの臭いはカレー風味のスナック菓子のそれだった。結局事故は4台の玉突き事故で我々はその最後の玉だった。雪が晴れてみると幸いにもそこは、揚げイモで有名な中山峠の駐車場のすぐ横であった。手のけがは出血が多く、救急車を呼んでもらった。峠の頂上なのでなかなか救急車はやってこない。しばらくして救急車がやってきた。始めて乗る救急車だ。中は意外とがらんとしていた。が、なんだかおかしい。今苦労して上ってきた山道を戻って喜茂別の方へ向かっているではないか。恐れながら隊員の方にお願いしてみた。「あの・・・すみませんが・・・。札幌の病院に連れていってもらえませんか。」若い隊員は優しく教えてくれた。中山峠を境にちょうど管轄が分かれており、札幌へはいけないそうだ。あと数メートル先でぶつかればよかった。つくづくついていない。レッカー車を待つJ氏と別れ、また喜茂別へと向かった。病院で応急処置をしてもらいバス停で待っているとパトカーが来てJ氏が待つ自動車修理工場へと連れていってくれた。喜茂別のひとはみんな親切だ。車も応急処置をしてもらい、何とか札幌まで走れるということでまた中山峠へと向かった。何度この道を通ればよいのだろう。雪は小降りになり、今度こそ帰れそうだ。

だが、このまま素直に帰してはくれなかった。先ほどの事故現場を通り過ぎたところで車の調子がおかしくなった。冷却系統が壊れたらしくボンネットから煙が・・・。ラジエーターの目盛りが見る見るレッドゾーンの方へ向かっていく。車内の暖房、空調を切りできるだけ低速走行を試みざるをえなくなった。車内はすぐに曇り、20分運転しては30分駐車してエンジンを冷やすという繰り返しを何度もしながらやっと家にたどり着いたのは、夜中であった。

「シートベルトは命綱」 ー シートベルトがありがたく思えた1日であった。





Sample image

江ノ島海岸


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