謎の巨大魚



1970年大阪千里ニュータウン。今ではアスファルトで覆われ、土をみることもなくなったこの町だが、当時は至る所に自然が残されていた。父は山歩きが好きで毎週日曜日にもなると子どもたちをつれて山へと向かった。山歩きといえば楽しそうだが、特になにをするわけでもなくただひたすら歩くのである。朝から夕刻までひたすら歩くのである。高校生の時、部活の体力トレーニングで同じようなルートをマラソンしたことがあるが、途中脱落する者がでるような今思えばかなりの道のりであった。ただ、あまり深く考えることの少なかった私は、黙々と父の後をついていくのであった。

ある時父は、途中の店で糸と針、うどんを買っていつものコースを外れて歩き出した。ついたところは、大きな池で何人かの人たちが釣りをしていた。父は拾ってきた枝に針をつけ、ズボンの裾をまくって池の中に入っていった。周りでそんな格好をして釣っている人はいなかったが、子どもたちは父のやるようにするしかなかった。格好はともかく結構つれるもので、落ちていた空き缶にはたくさんの小魚で一杯になっていった。魚は、ドンコと呼んでいたが未だに正式名称はわからない。その魚たちは、何年間も家の水槽に入れられ、一匹一匹に名前まで付けられ、楽しい余生を過ごすのであった。

さて、いよいよ話は本題にはいるが、その時近くで釣りをしていた釣り人の竿(注:拾った枝ではなく立派な竿)が大きく曲がった。未だにあのときのような竿のしなりをみたことがない。糸が切れない方が不思議なくらいであった。こんな池でこれほどの生き物が住んでいるのかと思わせるしなりでもあった。何分たったであろうか、その池にいた人たちがみんな集まっていた。

・・・とその時、いままで耐えていた糸がぷつりと。 といけば、タイトル通りの「謎の巨大魚」という話で終わるのだが、事実は、見事つりあげられてしまうのだった。ここまで読んで釣り人ならだいたい予想がつくかもしれないが気を持たせて、ここでこれをクイズにします。

さて釣られたものは、何でしょう。
1,うぐい
2,こい
3,フナ
4,魚以外の生き物
5,地球

そう、釣られたものは、なんと***だったのだ。***がつれるとは、夢にも思わなかった私は、***欲しさにこの池へと通うこととなった。そして、この日から釣りバカが一人増えることになった。折しも、ちかくでは万国博覧会が開かれようとしていた。




Sample image

千里ニュータウン島熊山にて


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