ゆうべつ物語第三話 「湖口開口は天佑だった」 一幕五場(七十分) |
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あらすじ | ナレーションとスタッフ、キャストの紹介(一分) ――第一場(二十分) とき 昭和三年三月、 ところ 源の家の居間 祖父元治、孫源の家族が話している。 一、魚が捕れなくなり、生活が苦しい。 二、この土地を離れようと云う話。 三、何度か湖口を掘ったが失敗した話、父もこの作業で亡くしている。 四、もう我々の手には負えないこと しかし、息子源は、父の意志を継いで、どんなことをしても、ここで漁師をやると云う。 五、強く村に要望している話もする。 そこに漁師仲間の安が、ようやく村も予算を組んで、この湖口を切ることが決まった話を知らせに来る。 ――第二場(十六分) とき 昭和四年四月、 ところ 掘削現場 作業現場に、近所の子どもたちが来て話している。 一、何で湖口を切るのか。 二、何度も失敗しているのに。 三、源の父さんは、この湖口切りの事故で死亡している。 そこに源が来て、その必要性を話す。 (一)船の行き来、両漁場で魚が捕れる。 (二)湖口が出来たらここも常呂の様に繁栄する話。 話が終わり、源が子ども達を帰す。 警察も監視(大正十三年の無許可掘削により)に来る。 夕方帰った後、妨害者が来て、源と喧嘩になり源が怪我をする。 ――第三場(三分) ところ 源の家の玄関先 ――第四場(十分) とき 昭和四年、ところ 現場小屋前 ――第五場(十三分) とき 昭和四年四月二十一日早朝、ところ 湖口現場 |
――場 (二十三分 |
序 幕 音楽大きく入る 少々音楽小さくなり、スポットナレーターに入る ナレーションが入る ナレーション スタッフ、キャストの紹介 さて、みなさん。みなさんは、サロマ湖にオホーツク海とつながっている湖口が ひとつは、登栄床の先の灯台のあるところにある湖口、そしてもうひとつは、常 第二湖口は、昭和五十三年十二月に国の大事業として作ったものです。 しかし、それを遡ること五十年前、昭和四年四月二十一日未明に、悲願の第一湖口が開口したのです。 それには大変な苦労と、いろいろな出来事があったのです。 その苦労の何分の一かを、そこに携わった、ある漁師を中心に、ここに芝居化してみました。 どうぞ、当時を思い浮かべて、ごゆっくりとご鑑賞下さい。 音楽大きくなる
幕上がる
時 昭和三年春 夕方 所 源の家の居間 源一家が、祖父元治を中心に今後の生活について話し合っている。 源 なあーじいちゃん、今年も「湖口切り」するんだよな。 元治 うん、そうよな、でもなー・・・何ぼやったって無駄でないかって、思う様に なってきたんだ。 ハナ あー、あ、そうだね。もう何年やった、三年もやったかな。 よし いや、違う、ばあちゃん。五年も六年もやっている。 ・・・ここの人たちは、もう誰も、やりたがらないんでないかい。 源 そんなことないって、なー、じいちゃん、やるよな。 元治 ・・・あー、・・・でも、もう俺はやれんかもな・・・。 みつ やらんしょ、砂なんか何ぼ掘ったて、だめだべさ。 正子 そうださ、姉ちゃんの云う通りださ、掘った後からすぐ崩れて埋まってしまう って。 じいちゃんも、兄ちゃんも毎年掘ったって、毎年埋まってるしょ。 ハナ 砂だからね、去年なんかもう少しの所まで行ったのに、海荒れてみんな埋まっ ちゃったもんね。 みつ 砂だもん、なんぼ掘ったってだめださ。 正子 そうださ砂だからさ・・・何してそんなにしてまで、掘るのさ。 よし それはね・・・ここで漁師をしてりゃ仕方がないのさ。 見れ、常呂の方ば、あそこは、春になればすぐ湖口ば切って、船の出入りが出 来るんださ、そうすりゃ、オホーツク海に船出して、漁も出来るのさ。海時化た ら湖内ですぐやれるって、湖口があれば便利ださ。うちなんか見ればよくわかる しょ。 海から船曳いて湖に運び、また、海がとれるって云えば、また船曳いて湖に入 れるか、それか、常呂側の湖口まで回って出なけりゃならんしな、見ればわかる さ。あの常呂のトーフツの賑わいを。漁のことばかりじゃないって、冬中切った 木材ば、その湖口から運んでオホーツク海で大きな船に積んで行くんだ。それだ けでも多くの人が、そこに来て働いているんだから、景気もいいさ。食堂や、飲 み屋さん、劇場もあって、毎日芝居してるってさ。 こっちはそんなどころじゃないって。 魚は少ししか捕れんし、砂の上ば動かす度に、船痛めるし。食うにも困るくら いだっていうのに。 漁師辞めなきゃいけないって、みんな困ってるんださ。 元治 だからみんなで何年も掘った・・・でも、いつもその砂道は埋まってしまうの さ・・・砂だからな。 そうよなー、ここに来た頃は魚もとれた。 近ごろは、だんだん捕れなくなったから、海に行ったり、湖に行ったりするよう になったさ。 それが、ばあさん云うように大変だ。それに、船も傷むんださ。だからみんな で掘ってるのさ。だけどそれにも限界があってな。ここ一年、二年はだんだん、 ここから去って行く者も出てきたさ。二十戸以上もあったのが、今では十戸足ら ずにまで減ったさな。俺も、もう年だしよ。だんだん仕事手伝えなくなってきた からな。 ハナ 私は何時も云っていたでしょう。自然の力にはかなわないって云っているのんだ さ。自然に逆らえば、何起こるか分からんて。 源の父ちゃんだって、みんなの先頭切って「湖口切り」してたから、あの海荒れ の時、砂崩れて、その下になって死んださ。 あれはな、もうやめれって、云ってるんださ。 源 そりゃー自然の力がすごいと云うくらいは分かる。 みつ 「湖口切り」なんかしなけりゃ、父ちゃん死なずにすんだのに。 正子 そうさ、砂ば、いくら掘ったって埋まるって。 よし でも、父ちゃん、あんなに一所懸命にやっていたんだから。 お前達がそんなこと云ってたら、かわいそうださ。 みんなの為にやってたんでないの。そうでなけりゃ、父ちゃん浮かばれないっ て。 元治 そうださ。みんなの為ださ、お前たち、そしてここの部落みんなの為だ。 あの五年ほど前の、大正の十三年の時、ここの部落の人や、芭露、湧別からの 人、百人以上で掘った時は、みんな馬力もあったし、無茶苦茶やったな。 あの時も、もう少しの処までいったけど失敗だったさ。 だけど、失敗したことよりも、俺らみんな警察に引張られて行かれたことの方 が大変だった。 だけど、一番こたえたのは、我が子、源の父ちゃんが事故で死んだことよ。 よしさんには、本当に申し訳ないことをしたな。 ハナ 本当には、よしさんには、すまんかったけど、それ以上にお前たち子ども達に は、一番すまんことしたと思っている。 よし その話はやめよ。過ぎたことだから。 どんなこと云ったって、今更帰ってきやしないんだからさ。 源 そりゃそうだけど、おやじ可哀想だった・・・。 だけど、警察に引張られて行ったのは、無許可だったからなんだよね。 元治 そうだ、無許可よ。 そんなこと、知っちゃいないって。みんな生活が掛かっているんだからな。こ の辺の連中みんな集めて「やっちまえ」て云うことさ。 ハナ 源の父さんが、先頭に立ってな。 よし ここら辺の人ったら、みんな出て、女も、子どももさ。 一、二日で掘るんだってね。常呂の人や、警察に知られないうちにって。 みんな死に物狂いだった。 みつ ねー母ちゃん、常呂って。 正子 常呂って、何。 源 こっちに湖口が出来たら、常呂の方の湖口は埋まっちゃうかもしれないからよ。 そしたら、トーフツの賑わいが、こっちの方にうつっちゃうのが心配で、妨害 に来るという噂があったぐらいださ。 みつ そうなんだ。 正子 でも、それまでしても、未だに開かないのは何して。 元治 そうよなー、正子の云う通りださ、どんなにみんながやったってまだ「湖口」 が切れないんだからな。あれからは、みんな尻込みしたさ。警察沙汰になったし、 それ以上に、源の父さんが死んだ事が一番の原因かな。 ・・・それと、おれ近ごろ、ここの湖口切りは無理でないかって思うようになって来たさ。 源 何云い出すのさ。ここまでやって来たのに。じいちゃんがそんな事云い出した ら、俺どうすればいいのさ。 よし ・・・ねー、じいちゃん・・・漁師辞めたら駄目かな。 近所の人みんなここを離れていった。魚だって捕れなくなった。海に船だした り、湖に船出したり、この砂の丘ば行ったり、来たりしてたら、あんなに船も痛 んだ。 来年には船、作り変えなきゃいけないし、そんなお金どこにも無いよ。 借金少ないうちに、ここ出よや。 なー、じいちゃん、ばあちゃん。なー源。 ・・・父ちゃん亡くしたとこには、もう居たくない。 源 何いうのよ、かあちゃんまでも。 みつ 私も止めた方がいいと思うんだ。隣のとみちゃんとこも、ここ出て行く話して いたよ。 源 何、隣の安さんのとこがよ。 正子 私も母ちゃんと同じ考えだな。父ちゃん死んだところには、いたくないなー。 よし なー、ばあちゃん。何処に行ったて食うぐらいは働けるって、じいちゃんや、 ばあちゃんはもう年なんだから、無理しないでさ。食うぐらい、私と源とで食わ していけるから、心配しないで。 みつ そうだ、私だって、もう少し経てば、みんなのために働けるって。 正子 私だって、みつ姉ちゃんと働くから。 元治 お、お、嬉しいね。二人とも嬉しいこと云ってくれるね。 ハナ 本当だね。嬉しいよ。 源 母ちゃんも、みつも、正子も何云ってるって。 それに、じいちゃん、ばあちゃんまでも、何云ってるのよ。 そんなことで、ここが離れられるかよ。何年も水路掘って、そりゃまだ出来上 がっちゃいないさ。俺はさ、じいちゃんが掘って、親父が掘って、そして俺が掘 って、それでも駄目なら、俺の子どもにも掘らせる。それぐらいの覚悟で掘ろう と考えているんだ。 それくらい、真剣だって云うことさ。 よし 馬鹿も休み休みいうもんだ。じいちゃん、父さん、おまえ、三代で駄目なら、 四代だって。その間、どうやって食っていくのさ。そりゃ、じいちゃん達がここ に入って来た頃は、魚も捕れたさ。でも、今はどうだ。魚捕りだけやってたって、 食っていけるか。みんな畑作ったり、山仕事に行ったりしてやっと食っているん だよ。 隣の山田さんだって、木村さんだって、みんなここを出て行っちゃっただろう。 それに安さんとこだって来年は、ここ出て行くって云ってる。ここの水路を開 けるって云ったて、何時のことやら、夢みたいな話なんか、もう私はたくさんだ。 父ちゃんまで亡くしてさ。何でそれまでしてやらなきゃいけないのさ。早くこ の土地を離れようや。 源 母ちゃん、父ちゃん生きてた時には、そんなこと云わんかったさ。漁師やって いくんだって。俺に小さい頃から、云っていたしょ。 おまえは、父ちゃんの跡継ぎなんだって。 それは、もう忘れたのかい。 そこに、隣の漁師安さん親子が入ってくる 安 やーあ、元気か。いたな、元さん。源も。 貞 お邪魔します。 秀 やあー、源。こんちは。 とみ こんちは。お邪魔します。 元治 あー、何よそんな顔して。 安 ああー。そっちの方こそ何よ。みんな真面目な顔して、どうかしたのかよ。 貞 何か難しい話でもしていたの。 秀 おい、源。何まじめくさって。 とみ ねー、みつちゃん。今入って来てよかったの。 ハナ やー、こんちは。いや、何にも。さあ、さあ、どうぞ。 よし いらっしゃい、どうぞ、どうぞ。 源 やー、どうぞ。 安さん親子上がる 安 おい、聞いたか。「湖口切り」で、村が予算付けて、本格的にやるってよ。 源 本当ですか、安さん。 元治 本当か。それ何処で云ってた。 貞 さっき、組合の星さんが云ってたって。隣の太田さんが云っていたさ。 秀 源さん、良かったな。親父さんの想い、伝わったな。 元治 そりゃー良かった。これで湖口が切れるぞ。 ハナ 何時からなんですか。 とみ 雪解けたら、始まるらしいよ。 よし そうですか。役場がやっと、やるようになったんですか。 みつ それならいいしょ。兄ちゃん達が直接やるんじゃないから。 正子 そうだね。良かったね。ねー、母ちゃん。 兄ちゃんや、じいちゃん達が、暇見つけながらやらなくても、役場がやってく れるんだから。 そしたら、働きにいけるね。 安 何、働きにて。 元治 いや。 貞 何処かに働きに行くってかい。なーよしさん。 秀 源、そんな話聞いていないぞ。 とみ みっちゃん、正ちゃん。どっかに行っちゃうの。 みつ うん、ここ離れて・・・。 正子 ここから引っ越して行こってね。 よし みつ、正子。 貞 何、ここば出て行くってかい。 安 本当かい、元治さん。源さんよ。まさか俺たちばここに置いて行くちゅうんで ないだろうな。一緒にここに来て、一緒に頑張ってきたのによ。 元治 何・・・あんた達もここ出て行くんだろうさ。 さっき、みつが云っていたぞ。 ハナ そうよ。たしか、ここ出て行くって聞いたよ。 源 安さん、出てなんか行かないよね。湖口切りが決ったんだからさ。 やっとここまで来たんだから、もう少しだって。湖口切れたら、常呂みたいに 街が栄えるって。 貞 うちでも、前には、何処かに行こうかって云っていたけど、今は違う。湖口切 れたら、きっと良くなると思うんだ。だから、どこにも行かないよ。 なあーよしさん。 秀 昨日までは、どこかに行こうかってね、話していたのは確かだ。 でも、今それもやっと今、考え変えたさ。湖口が切れるんだからさ。 安 こいつの云う通りだと思うんだ。湖口切れれば、きっとここだってよくなるさ。 とみ な、みつちゃん。正ちゃん。どこにも行かないで。 源 なー、じいちゃん。・・・ここでやってみるべ。湖口切れたら、きっと良くな るよ。 ばあちゃんも、母ちゃんも、もう少し我慢してみようよ。 ここまで我慢してやってきたんだからさー。 みつ そりゃーそうかもしれないけど、直ぐには良くならないんじゃない。 正子 でも、姉ちゃん達が頑張るなら、もう一度ここで、みんなして頑張った方がい いんじゃないのかい。 だって、とみちゃんや、春吉ちゃん、ふゆちゃん達と離れるのはいやだもん。 ハナ 正子の云う通りだね。知らない土地へ行くより、ここでみんなして頑張った方 がいいかもね。 元治 さっきまで、云ってたこととは、変わるけど、なー、よしさん。よしさんには 辛いけど、もう少し、ここで頑張ってみようよ。 湖口が切れたら、きっと楽になるって。 秀 元治おじいちゃん。そうだよね。今まで頑張って来たんだから、やれないこと ないって。 源 なー、母ちゃん。じいちゃんの云う通り、もう少し頑張ってみよう。母ちゃん の辛い気持ち、分からんわけではないけど。 父ちゃんが一番望んでいたことは、湖口が切れ、水路が出来る事でなかったか い。そして、ここで漁師をすることでないのかい。 よし 源。お前の云いたいことは判った。なら、お前の思う通りにしてみな。 ・・・ただ・・・今回、この一回だけだと思ってほしい。この役場がする湖口 切りの工事がな、万が一失敗すればみんなここば出て行く約束してほしい。 ・・・それだけは約束してな。 安 そうだな。俺の家もそうする。今度の工事が駄目なら、ここば離れるさ。 元治 そうだな。でも役場が金出してするんだから、失敗はないと思うけどな。 ハナ きっとよくなるさ。三代続けてここの砂ば掘って、掘って、崩れて、崩れて、 その繰り返し。こんなこと、これで終わらせなきゃいかんな。 みんなでうなずく 音楽入り、照明消えていく 音楽小さくなり、照明入る |
第二場(二十分) | 日時 昭和三年夏 昼どき 場所 湖口切りの現場 下手より子どもたちが入ってくる 工事現場を見て話しだす はる うわーすごいな、もうこんなに掘ったんだ。 なつ でも、まだだいぶんかかるんでないかな。 あき どこまで掘るのかな。 ふゆ そうだよね。あの海の近くまでだよね。 はる こっちは、湖までだもんな。 なつ 砂だから大変ださ。いくら掘っても崩れてくるもんね。 はる みつちゃんうちの父さん、何年か前に、ここ掘ってた時、砂に埋まって死んだん だよな。 なつ そうだよね。それでも、源兄ちゃんと、じいちゃんはここに来て、掘ってるよね。 あき そうだ・・・どうしてそんなにまでして掘るのだろうな。 ふゆ そうだよね。何してかな。 なつ だって、魚捕るとき、海や、湖に行ったり来たりするとき、大変だよ。常呂の方 ば回らなくてはいけないって父ちゃんいってたよ。 あき うん、家の父ちゃんもそう云ってた。 魚も両方の海で捕らなきゃ・・・捕れなくんったもんね。 はる 常呂の方、回るのが遠いからって、ここの丘を曳いていれば、舟傷むしな。 なつ だから、ここ掘るんだよね。早く出来ればいいのにね。 あき もう何回も掘ったしょ。その度に崩れて埋まってしまうのにさ。 ふゆ はるちゃん、あきちゃんのとこだって、ここに来て働いてるしょ。早く出来れば いいからなんでしょ。 なつ そりゃー当たり前ださ。掘りながら出面賃貰えるものな。 あき ここ三里番屋にいるからには、魚捕っていかなければ、生活出来ないよね。 はる うちの父ちゃんだって、あきの父ちゃんだって、早く出来ればって、魚、捕り捕 り、ここに来て働いているんだ。それに出面賃もらえるからな。 なつ うちの兄ちゃんだって、来てるんだ。 あき ここ掘らんかったら、漁師出来ないんだから、みんな一生懸命掘るさ。 ふゆ でも、また源さんのとこの、父ちゃんみたいに、誰かが死んだらどうするの。 はる 変なこと云わんでや。 なつ でも、死んだのは本当なんだから、ここに居るみんなのうちの、誰かの、父ちゃ んか、兄ちゃん死んだら、どうする。 下手より、源が入ってくる 源 おー、来てたのか、危ないからあまり近寄るなよ。 すごいだろ。ここ掘ったら、海の水が出たり、入ったりするようになるんだぞ。 はる 父ちゃん達は。 源 今来る。一服中だ。 なつ 何時出来るの。 源 来年の春かな。砂はすぐ崩れてくるから、早く出来ることにこしたことないけど、 あせってやって、事故でも起こしたら大変だからな。 あき 今もその話してたんだけど、源さんの父ちゃんここで死んだしょ。でも、どうし て源さん、そこまでしてやれるの。 はる 俺なんか、父ちゃん死んだら、もうここにはいないよな。 なつ 私もきっと、そうだと思う。それに、父ちゃんが死ぬなんて考えたこともないも ん。 源 そうださ。はるちゃんや、なつちゃんの考え方が正しいと思う。 俺も親父が死んだときそう思った。 でも、何して親父ここに来たんだろうと、考えたんだ。 南の国の漁師がだよ。こんな北の果ての、それもオホーツクにさ。でも、答えは 簡単だった。親子で舟出して、魚一杯捕って、腹一杯魚食いたかったんだってさ。 この考え方は、じいちゃんの考えだって、親父が云っていたさ。 じいちゃんは、四国の小さな漁村の生まれで、それも三男坊じゃ跡継ぎにはなれ ない。そしたら思うように仕事が出来ない。そんな時、仲間と北海道の漁場がもら えるって、ここに来たんだってさ。 それを親父が引き継いで、ここの漁場の開拓で、一生懸命やっていたんだ。俺も 引き継いでやってみようと考えたのさ・・・。それに俺、頭悪いしさ。ここで漁師 やるしかないのさ。 やあー、変な話云っちゃったな。おい、そろそろ仕事始まるから、帰った方がい いぞ。危ないからな。 はる 源兄ちゃんのそんな話、初めて聞いた。俺みたいな子どもには良く分からないけ ど、少しだけは何んとなく分かるような気がする。 なつ はるちゃん、何云ってるのさ。はるちゃんの云ってることの方が分からんて。 あき 「良く分からないけど」「少しだけ」「何んとなく」「分かる様な気がする」そ れなら、何も分からんちゅことだよね。 ふゆ 本当だ。始めから、分からないって、云った方がいいべさ。 なつ 「良く分からん」は少しわかるちゅことだろうさ。「少しだけ、何んとなく、分 かる様な気がする」これも少しは、分かるちゅことなんだから、分かる様な気がす る」これも少しは、分かるちゅことなんだから、分かるんださ、なー・・・はるち ゃんにはな。 みんな、こんな話してたら、日が暮れるよ。帰ろう。源ちゃんの、ここ掘る話は 分かった。家の父ちゃんや、みんなの父ちゃんも同じ考えだと思う。だから、みん な頑張っているんだよね。 源 そうだ、だからみんなで、頑張っているのさ。 さあ、帰れ、帰れ、危ないから。早く大きくなって、ここで漁師やってくれや。 ここの水路戸通って、海に行ったり、湖に行ったりしてな。 こどもたち じゃー帰る。さようなら。 子どもたち、あいさつをして下手に帰る 下手より、警察官が入ってくる 警察 やー、やってるな。なかなか進まんもんだな。 源 やあ、こんちは。そんなに早くはいきません。 警察 いくら頑張っても、砂だからな。 すぐに崩れてくるからな。気をつけてやってや。 源 はい、みんな気付けてやってますから。 これが今私たちの、おまんまの種ですからね。 警察 そうだな。ここば掘っていりゃ、漁にも出て行けんしな。 源 そうなんで、ただ、ここ掘らんきゃ漁師続けて行けませんからね。 出面賃貰いながら掘れるんですから、一石二鳥ですよ。ありがたいもんです。 警察 何年かまえの、お前の親父死んだ時のように、適当にやっちゃいかんぞ。 源 何、父ちゃんの時・・・適当だったって、云うんですかい。 警察 あーそうよ。もう少し計算しながらやれば、あんなことなかった。 源 そんなことないって、あんなに一生懸命やっていたのに。 警察 一生懸命やることと、周りの条件見ながらやるのでは、違うんだぞ。 源 あん時は、急に夕立がきて、大量に雨が降ったからだろうさ。 警察 そうだけどな。そうなら早く逃げればいいんださ。もたもたしてたから、崩れた のよ。 源 何がもたもたしてたって。 警察 それには、あれは無許可でやった工事なんだぞ。 源 無許可であろうと、なかろうと、この「湖口切り」しなけりゃ食っていけないぐ らい、あんただってわかるしょ。 この部落の生活見てれば。 警察 それくらいは、俺だって分かる。でもなー、法律は守らなければならんもんなん だ。 源 そうかよ。法律は正しい事が書いてあるんだよな。法律は守らんといかんことに なってるよな。なら、あんた船頭の星の家に行って、何時もどぶろく飲んでるよな。 あれはなんなんだ。 警察 あれはな・・・米の汁ださ・・・警察官はな、心が大切なんだ。心をなごます物 は少しはいいのよ。命には関係ないからな。でも、ここの工事は違う。危険がある からな。 源 何が心よ、何が法律よ。この警察はとんでもない警察だ。 警察 何がとんでもない。このやろう。 そこに鉄とさとが下手より入ってくる 鉄 何、大声だしてんのよ。 さと 何、警察と揉めてるのさ。 源 いや、聞いてくれや。この警察たら、おれの親父が死んだのは、適当に作業して たからだって、云うんださ。 鉄 何、警察。お前、源の親父が適当に仕事してたってかよ。 さと あんた、警察にはあまり逆らわんほうがいいって。また、連れていかれるよ。 鉄 何、連れて行けるもんなら、連れて行ってみればいいさ。 ほら、手錠掛けるんか。こんなくらいで、手錠掛けるんだったら、俺ら朝から晩ま でかけっぱなしだな。仕事しないで済むなら、こりゃーありがたい。働かんでも食 っていけるんだからな。 警察 なー、鉄さんにはまいったな。ただよ、事故だけは起こさんでくれや。めんどく さいからな。 調書作るのがよ。 源 なあに、そうかよ。警察は仕事しなくたって、給料もらえるんだから、余計な事、 するなちゅことよ。 さと すいませんね。父さん。昼飯の時、ちょっと一杯やったもんだから、御免なさい ね。 警察 何時ものことで。まー、一生懸命やってるんだから、許してやるさ。 源 何、許すも許さないもないって。 適当だなんて云ったのは、警察の方なんだからな。 さと 源ちゃん、そろそろ仕事よ。 ほれ、みんな来るよ。 警察 やあ、やあ、また来るは、気つけてな。頑張ってやれや。 鉄 何が、頑張れだ。お前には云われたくないな。 源 本当だ。この調子者警察官。 さと 二人とも、何云うんだい。すいませんね。もう云わないように言い聞かせますか ら。 警察下手に入る 鉄 あのやろったら、とんでもない警察官だ。 前の事故の時のなんか、事情良く知ってるくせに、あん時は無許可をたてに、み んなば、しょっぴきやがってよ。お前も、何が言い聞かせますだよ。 さと そうでも云わんかったら収まらないでしょう。 警察だって、何かやらんと上の方から、怒られるんだろさ。 源 あの警察、親父のこと云ったから、おまけに仕事ば適当にやったから、事故起し たんだってよ。 鉄 さーやるか。湖口切り早く終わらさんと、俺ら漁師の生活が干し上がっちゃうぞ。 さあやるぞ。 源 そうだね。さー頑張るか。 三人作業に入る 照明薄くなる、音楽入り 照明明るくなる 夕方、工事現場で、ひとりの男が、水路を埋めている 源が現場にふらっと来る 男を見つける 源 誰だ、そこにいるのは。 源、恐る恐る近寄る 源 何だ、お前は。何している。スコップなんか持って、ここで何してる・・・まさ か、ここの現場の妨害に来たんでなかろうな。まさか、常呂の廻しもんじゃないの か。 隣の街の人 違う、暗くて道に迷っただけだ。 源 道に迷った人が何で、スコップなんか持ってるのよ。 隣の街の人 これ、ここにあったものよ。もって来たもんじゃない。 源 何、ここに、現場に道具なんか置いてはいかんて。終わればきちんと小屋に入れ ていくのが、ここの現場の決まりだぞ。 お前、どこの者よ。 隣の街の人 俺はどこの者でもないって。 源 このやろう。ここの現場邪魔にしに来たな。 お前一人じゃないだろう。沢山で来ただろ。 おーい、誰か来てくれ。おーい、鉄さん。 二人喧嘩となる 少し 揉み合いとなり、源が殴られてその場に倒れる 物音を聞き、鉄が表れる 怪しい者走り出し上手に入る 鉄 源、何でもないか。どこやられた。何、どこよ。頭か。ほら、これで縛るぞ。 だれだ、あいつは。ほら、つかまれ。大丈夫か、ほら。 源 常呂のやつらでないべか。 音楽入り、照明暗くなる 照明入る 音楽小さくなる |
第三場(三分) | 日時 数日後の朝 場所 源の家の庭先 よし 源、もう二〜三日は休まんとだめだ。 源 行くったら行く。もう三日も休んだんだから、もう大丈夫だ。 みつ だめだ。兄ちゃん。まだ包帯もとれてないうちに、働くのは無理だ。 正子 兄ちゃん、行かん方がいいって。 源 早く進めないと、いろんな妨害が入って、まだまだ遅れることになるんだ。お前た ちだって、早く出来た方がいいんだろう。 よし 毎日毎日働いて、休みもない。その傷よりも、お前の体の方が心配でな。 湖口が開いた時になったら、体壊して魚を捕りに行けなくなるよ。早く出来た方が 良いのは分かるさ。 でも体が一番だということは、お前だって分かるよな。 それに、みんな心配してることもな。 源 母ちゃん、云うことも分かる。 でも今俺がやらなければ、後悔すると思うんだ。 だって、じいちゃん、父ちゃんが死にものぐるいでやってきたことが、今やっと実 現するかもしれないんだから。 この俺の手で、砂を掘って、そこのこのオホーツクの水とサロマ湖の水が混ざって 流れるのを、この目でこの体で感じたいんだ。 母ちゃんだって、俺のこの気持ち分かるしょ。 あんなに父ちゃんば愛してた、母ちゃんだったら。 よし 何云うて、子どもが。 まーお前の云うことも、分からん訳でもない。 たぶん、ここの部落の人はみんな、お前と同じ考えだと思う。 ここを開かない限り、ここでは生きて行けないこともな。 源 難しいことは分からんけど、今やらなければいけないことを、今やることが、俺た ちの役目だと思うんだ。 やらないで、後悔するんだったら、やってみた方がいいって。 なー母ちゃん。 みつ 偉い。兄ちゃん。 正子 やっぱり私たちの兄ちゃんだ。 やったらいいさ・・・でも体だけは大事にね。 みつ 私たちの兄ちゃんだからね。 源下手に走り去る 音楽入る、照明消える 音楽大きくなる 照明入る |
第四場(十分) |
日時 昭和四年四月二十日午後三時頃 場所 湖口作業現場 安 おい、今日が最終日だと云うのに、こんなチョロチョロの水しか流れん水路しか 出来んかった。 役場ももう金が無いちゅうんだから、俺たちだけでも、もう少しやってみないか。 貞 でも、私たちだけでやるちゅことは、明日からは、出面賃が出ないということだ よね。 鉄 当たり前よ、そんなの覚悟ださ。なー元さんよ。 さと そりゃ、ここしばらくは、今までの出面賃で、食っていけるけど、そんなには、 長くやっていけないよ。 元治 もう少しでないかと、思うけどな、どうにかチョロチョロ流れるんだからよ。 中々うまくは、いかんもんだな。 安 もう今日は終わりだ。こんなに天候が悪くなって来たから。 源 ついに、今日はこんな水の流れで終わりだな。どんどん流れるまでにはいかんか ったな。 鉄 予算も、予定より三倍もかかっているんだし、今日で全部の予算使い果たすんだ っていうからよ。 ひとまず今日は終わりにするべ。 安 もう少しだちゅのによ。今後のことは、みんなで考えるべよ。ここまで出来たん だから。 貞 そうだね。このままで終わらせられたら、今まで使った金がもったいないって。 さと 本当だ。これで終わりだなって云われたら、悲しくなるね。また、この後続行す るように、役場に掛け合ってよ。ねー父ちゃん。 鉄 そうださ。これこそ、もう少しのところまで、掘ったんだからさ。 元さんよ、明日朝、みんなで役場に掛け合ってみようや。 源 なあー、じいちゃん。そうしよう、もう一息ださ。 貞 そうだね。行こうよ。みんなで。みんなで行けばどうにかしてくれるって。 さと そうださ貞さん。みんなで行こうよ。なあー元さん。 元治 そうしたいけど、ここまでやっても、水が流れないのは・・・ 俺たちの力じゃ、どうにもならないんじゃないのかな。 安 何、ここに来て何云いだすのよ。そんなこと、元さんの口から云わんでくれや。 鉄 本当だ、元さん、あんたがここまで、みんなば、引っ張ってきたんだろうさ。何 でそんなこと云えるのよ。 源 じいちゃん、何でそんなこと云うのさ。 安さんだって、鉄さんだって、じいちゃんば信じて、ここまでやって来たさ。 仕事の合間見ながら。 家じゃ、女の人が、漁やりながらさー。 貞さん、さとさんなんかは、魚捕るの止めてまでして、ここに来たさ。 そりゃー、ここで働けば金になったから、生活には心配なかったけど。 それよりも、早くここ掘って、水路作ること一念で毎日通った。 それなのに、何よその言い方は、なーじいちゃん。 安 源ちゃん、あんまりじいちゃんば責めるなって、じいちゃんにも何か考えがある んだろうさ。 さと 安さんの、云う通りかもしれないよ。何か考えがあるんじゃないのかね。 貞 そうなのかい、元さん。 鉄 元さんに何か考えがあるんだったら、聞かせてくれや。 元治 ・・・そんなに云うなって。特別な考えが有る訳じゃないって。 でもなー。何してこんなに一生懸命、何度も何度も掘ったって、水路にならない んだべ。 そんな時、ふと思うのが、人間がどんなに自然を変えようとしても、それは無理 なことで、せいぜい出来たとしても、一部を利用させてもらっている程度でないの かね。 「自然は神みたいなものださ」人間が本当に必要な時は、ちゃんと与えてくれる、 ものなんでないのかな。この水路は、人間に必要だと神が思ったら、必ず与えてく れるんじゃないのかね、きっと。 源 そうかな、そうならいいけどな。 安 おい、ひどくなってきたぞ。今は一先ず帰ることにするべや。 鉄 そーするべ。風邪ひくぞ、そら、元さん。 源 じいちゃん、濡れる。早く、帰るべ。 みんな、帰りだす 音楽大きくなる 照明消える 音楽徐々に小さくなる 照明 入る |
第五場(十二分) | 日時 四月二十一日早朝 場所 工事現場 元治が下手より、入ってくる 周囲を見渡しておどろき、腰を抜かす 元治 何だこれは。これは、何だ。 元治が海、湖を見ながら走り廻る 元治 おーい・・・おーい・・・ 大変だ・・・大変だ。 誰か・・・誰かいないのか。 来てみれ・・・この水路を。 おーい・・・おーい、この水路を。誰か見てくれ。 湖口が切れて、水が、水が流れている。水路が出来ている。 俺、夢見てるんじゃないよな。 あー、痛い、痛い。間違いなく痛い。夢でない、夢でない。 源が入って来る 源 何してる、じいちゃん、大声出して。 元治 見れ、あれば。 源 何だい、これ・・・口が切れてる。切れてるよ。じいちゃん。 元治 そうだろう、湖の口が切れてるだろう。 海と湖が一つになってるだろう。 源 何して、こんなに立派な水路が出来ている。 大きな船だって出入りが出来るよ。 何でこんなことがあるの。何で。 安、鉄、さとが入ってくる 安 源、元さん、どうした。 鉄 何かあったか、源ちゃん。 安 いや、これどうしのよ。 鉄 何だこれ。 元治 よく見てみれ。オホーツク海とサロマ湖が一つになったな。 安 本当だ、本当だ。 鉄 本当だ、何してこんなになったのよ。 安、鉄、手を取り合って踊り回る 源 誰がやったの。 さと 何で、こんなに大きな川が出来たの。 元治 まったくだて、こんなにも大きな水路がな。 安 おい、これ夢でないんだよな。 さと 夢でないって、本当のことだって。 ハナ、よし、みつ、正子、貞、秀、とみが入って来る ハナ 源、こりゃーどうしたことだ。 よし 湖口が開いたんだね。 貞 こんなに大きな川が出来てる。 秀 源ちゃん、川が出来てる。いかったなー。 みつ 兄ちゃん、開いたの。よかったね。 秀 水がゴーゴーって、音たてて流れてる。 正子 兄ちゃん、よかったね。 近所の子どもたちも入って来る 春吉 うわー、川が出来てる。 なつ 水が流れてる。 秋男 海と、湖が続いている。 ふゆ ゴーゴーと音をたてて、流れてる。 一 すごいなーこんな大きな川が出来ている。 すえ みんな、喜んでる。 源 なーじいちゃん。何で、こんなに大きな口が開いたんだろうね。 俺たちが何年も、何年も苦労して、掘ったのに、一晩でこんなに、大きな口が出 来るんだなんてさ。 元治 本当だな、これが俺の云っていた「今、俺たちが一番必要な物を神が俺たちに与 えてくれたんだ、神と自然からの贈り物」なんださ。 神が俺たちが今、一番必要な物だと思ってくれたんだ。 みんなして、一生懸命、この作業に尽くしたことの贈りものさ。 なー源。 源 そうだよね。神と自然からのおくりものさ。 それに、おやじからの贈りものさ。 ―間― じいちゃんがやって、死んだけど父ちゃんがやって。 そして孫の俺がやって、隣の安さんが、鉄さんが、さとさんが、やった。 ここの部落の人、みんなでやった。・・・途中ここを離れて行く者も多く居たけ ど。でも、俺たち、みんなの願いが届いたんだ。これからは、ここを、船に乗って、 堂々と、魚を捕りに行くんだ。 ・・・これが、俺たちの、夢だったのさ。 ―間― なー、母ちゃん、じいちゃん、いいだろう。ここで漁師続けても。 きっと、立派な漁師になってみせるから。 おやじよ、見ていてくれって。おやじに負けない漁師になるから。 源、元、ハナ、よしを中心に、その場にいる者が舞台の中心に集まり、 湖口を見て、喜んでいる 音楽大きくなる 水平線がくっきりと、美しく見える 出演者はシルエットとなる 音楽少々小さくなる ナレーターにスポット入る ナレーションが入る ナレーション 昭和四年四月二十一日、 この小さな村に、湖口が開き、水路が出来た。 この水路は、悲願の水路である。 しかし、この水路はしばらくの間は、ここの漁師に恵みを与えた。 その恵みは長くは続かなかった。 なぜなら、隣の街とは険悪になったことは云うまでもない。 漁もそれ程良くなっていったとは云えない。 しばらくは、苦しい生活が続くのである。 五十年がたった。 昭和五十三年十二月、常呂側に「第二湖口」が完成し、きれいな湖になった。 そこで稚貝を放流し、ホタテを育てた。四年輪班制という収穫方法で。 それは、オホーツクに生きる漁師に画期的な「育てる漁業」に発展し、今では日本 一豊かな漁村に育ったのである。 人は、自然の力と、自然の恵みによって「私たちが、今、生かさせてもらっている」 と云うことを、忘れてはいけない。 それは、人間が自然の一部であるということの証明ではないでしょうか。 音楽大きく入る ―――― 幕 ―――― |
スタッフ | 企画 町民芝居ゆうべつ 脚本・演出 石 渡 輝 道 舞台監督 坂 本 雄 仁 音楽 菊 地 陽 斗 中 野 純 一 音楽効果 中 野 純 一 照明 佐々木 純 化粧 高 丸 君 子 舞台製作協力 伊藤家具建具製作所 衣裳協力者 岳 上 美 智 入 江 ゆかり 渡 辺 明 美 谷 口 かなえ 湊 谷 まゆみ 吉 松 友紀江 小 川 敬 子 大 渕 美 夏 伊 藤 朋 子 |
キャスト | 祖父 元治(六十八歳) 本 田 勝 樹 祖母 ハナ(六十五歳) 相 場 典 子 母 ヨシ(四十三歳) 由 野 のぞみ 長男 源(十九歳) 荒 井 佳 人 長女 みつ(十四歳) 岳 上 奏 美 次女 正子(十二歳) 湊 谷 若 葉 漁師 康(四十歳) 黒 川 慶 子 康の子 サダ(十六歳) 入 江 みなみ 康の子 秀(十四歳) 渡 辺 雅 之 漁師 鉄(四十五歳) 深 谷 聡 鉄の子 さと(十六歳) 谷 口 麗 隣村の人(五十歳) 洞 口 忠 雄 警察官(五十歳) 茂 利 泰 史 子ども 晴(十二歳) 岳 上 和 貴 々 ナツ(十二歳) 大 渕 愛 結 々 あき(十一歳) 伊 藤 千 晴 々 ふゆ(十歳) 渡 辺 静 香 ナレーター 小 松 初 恵 |