ロンドン2日目 夜の部

 

すっごく歌がうまいけど見てくれが今いちのミュージカルと、容姿はすっごく良いけど歌が今さんのミュージカルの、どっちがいいんでろう・・・・なんとなく勘定が合っていない疑問を感じながら、セイラム劇場へ向かう。あたりはもう真っ暗。初めて歩いているはずのロンドンの街を、ごくフツーに歩いているワタシ。次の舞台が終わる時間はまたしても真夜中。やっぱり夕食をとるなら今しかないのは間違いない。

通りを歩きながら、それとなしに食べ物屋らしき店舗をチェック。もちろん、一人行動なのでレストランには入りにくい。やはり、ピザハットに入るべきか。ウィンドーの前でちょっと迷う。が、ウィンドー越しに食べている人を見ると、言葉の壁をうち破って行くほどピザがあまり美味しそうに見えずに挫折。仕方がないので再度、マクドナルドに吸い込まれるように入って行くのであった。もちろん、日本人なんてどこを見渡してもいません。ワタシはそこでも、ごくフツーにカタカナ英語で注文をし、フツーにテーブルを陣取り食べました。

セイラム劇場で上演しているのは「ライオン・キング」。日本では劇団四季がロングラン中だそうです。もちろん、観たことはおろか、聴いたことすらなく、日本にいる間にディズニーアニメで予習した程度。あまり観たいという強い意志もなく、単に予定がなく夜が暇だから入れた観劇でした。席はまたしてもの最前列、しかも通路。チケットに「5分前には席に着いてること」という注意書きがあったので、通路を使って何かあるんだろうなとは思ってましたが、オープニングで動物たちと共に、大きな象がすぐ横をのっそりと通って行きました。

ディズニー原作なので、劇場は家族連れが多く、ワタシの席の周りも小学生くらいの子供がいっぱい。みんなお人形みたいに綺麗だったり可愛かったりで、ワタシ、上機嫌。

ロンドンの劇場は、1階席をストールズといって、地下に続く階段を降りて入ります。劇場内に入る前にクロークやバーがあり、グッズ売り場もあったりします。二階席はドレスサークルといって階段を上にのぼります。日本の劇場と違い、どちらも階段を使って入るので、1階席の優越感はあまりありません。なんせロビーに相当する場所が狭い。ビジネスホテルのフロントくらいの広さに、千人近い人が行き交うわけなので大変です。が、日本のような押すな押すながないのは、紳士淑女の国のなせる技。どんなに混んでいても、年輩の紳士はサッと通してくれます。

オープニングで象が脇をすり抜けたり、キリンの首がビョーンと伸びてすぐ手前まで来たり、お客のハートは掴んだぜ!という演出はお見事。客席と舞台との距離感がグッと縮まる感じです。動物のオプジェを巧みに装着したキャストたち。サバンナの草原や風、いろんなものを表現しているわけですが、それが徐々に自然になっていくのが不思議。

主役がセンターで朗々と歌う演出ではなく、群舞やコーラスとのコラポレーションの集大成といった演出。もちろん、主役級は素晴らしいコーラスの中で芯をとる技量があるわけですが、そのアンサンブルの見事さは期待を大きく、良いほうに裏切りました。

ナラという、主役シンバの幼なじみの女の子(あくまでもライオンです)がいるんですが、彼女が荒廃してしまったサバンナを悲しみ、姿を消したシンバを想い歌う、Shadowland という曲が圧巻でした。バラードのソロから始まり、コーラスが加わり最高潮に達したときのナラの心の中に響くようなソロ。彼女の立ち位置がちょうどワタシの目の前で、生の歌が聞こえてくるんですね。歌詞の内容はほとんど理解出来ないけれど、自然と涙が出てくるんです。そのくらい人の心を震わせる歌があるんですね、生まれて初めて歌を聴いて涙が出ました。(歌詞に泣けたというのはあっても)

また、いい曲なんですわ〜。悔しいくらいの名曲。そして、次にワタシを喜ばせたのは大きくなったシンバが、なんと、香取慎吾にそっくりだったのです!! 結局、やっぱりそこかい?と思ったアナタ、本当に似てたんです。ワタシには既にシンバではなく、シンゴという呼び名でインプットされてしまった。

湖に映る自分の姿に、亡き父王を映し出す場面が良かったです。本当に、素晴らしい作品であり舞台だったと思います。ロンドンで一番心に残っているのは、この「ライオン・キング」かもしれません。歌、ダンス、絵画、彫刻。人が織りなすものにも言葉に出来ない感動を生むのだということを、ここ数年の海外旅行で感じてます。「言葉」という手段を放棄したとき、もっと原始的な感情がだけが支配したときに生まれる感動だから、海外で強く感じるのかもしれません。

カーテンコールで贈った拍手の分だけ気持ちを返し、またひとつ増えていく「感動」という記憶を、有り難いと思いながら、最後の最後まで心の中で「慎吾ぉぉーーー」と叫び、手を振りまくりましたが、遂にシンゴには気づいて貰えませんでした(涙)。

帰りにグッズ売り場で、プログラム、ぬいぐるみ、CDを買ったのは言うまでもありません。帰国してからも、CDを聴くたびに、この舞台を本当に観たんだなぁ〜ということを信じられなく思うのと、身体が震える感動がまだ確かに記憶にとどまっている充足感との間で、微妙に漂う心地よさを感じてます。

劇場でも、やはり最前列付近に日本人はおらず、もちろん一人で来ている外国人なんてのも見あたらず、そんな中でも、周囲のお人形さんたちに微笑みかけたり、「おっはー」をやったり、ごくフツーにしているワタシなのでありました。(フツーはそんなことしないんじゃ・・・・)

2日連続で午前様となったワタシですが、前日で学習したので小銭で困ることもなく、スマートにホテルに戻り、慎吾を思い浮かべながら眠りについたのでありました。

 

つづく