ロンドン2日目 昼の部

 

なんとなく怪しい空模様のなか、バス2台に分かれ、ちょっと引いてしまうほどの大集団になっていたツアー客の面々は、半日市内観光という、パッケージされたメニューに出発した。行き先は、いろんなとこ。

バッキンガム宮殿をはじめ、ロンドン塔、ビックベンを抱えた国会議事堂、トラファルガーにピカデリー広場、大英博物館、いっぱいあります。これを半日で回るとどういうことになるか、お判りでしょうか。そうです、はっきりいって証拠写真を撮る旅になるのであります。ま、わかりやすく西村京太郎氏ふうに言えば、アリバイ作りの午前中ですね。アタシはロンドンに行ったんだぞっ!ってのを、帰国してから家族や友人知人に説明するための証拠の品。これ、結構大事です。

絶対に写真を撮るものだと信じていたビックベンの横を、バスがスーッと何事もなかったように通り過ぎた時は、我が目を疑ってしまいましたが、そんなモンなんです。田舎者の日本人にすりゃ、ロンドン=ビックベンだったりするんですが、慣れた方は違うのでしょう。立場を逆にしてよーく考えてみてください。外国人にとって日本といえば富士山。そう、マウント・フジです。それじゃ、日本に来たら富士山バックに記念写真を撮るかといえば、そうもいきません。半日の市内観光で富士山と記念写真なんて不可能です。百歩譲って、都内の銭湯の湯船につかって後ろに富士山の絵でもいいから、というのでもたぶん無理です。

それじゃ、富士山の代わりになるものといえば、そうです、皇居二重橋なのです。「アレハ、ムカシハ”江戸ジョー”デシタ〜」とガイドが言うかどうかは判りませんが、皇居なら半日観光でもOKです。

それと同じようにロンドンでも、ビックベンをバックに写真撮れる場所なんて無いから、バッキンガム宮殿(皇居)とロンドン橋(二重橋)でも見せとけ〜ってことになるわけです。

というわけでバツキンガム宮殿とロンドン橋を背に証拠写真を撮ったわけですが、いかんせん、日本ではロンドン=ビックベンという方程式は健在です。大きすぎるバツキンガム宮殿は写真には収まるはずもなく、ロンドン橋に至っては知ってる人すらおらず、帰国してから写真を見せてもあまり証拠にならなかった、半日観光でありました。

市内観光を終え、市内のレストランで中華を食べ、JALグループと癒着しているイギリス屋という店で解散となる予定。しかし、午後からハーマジェスティー・シアターという、女王陛下の劇場なんて壮大な名前の劇場へ「オペラ座の怪人」を見に行くことになっているワタシは、イギリス屋に行くと劇場から遠のくということを知っていた。ゆえに、コンビニの中華のほうがまだ美味しいんじゃない?という中華料理屋で離脱宣言。

親切な現地ガイドさんに、隙をみつけてハーマジェスティーまでの道順を訊いていたのでワタシは余裕。大皿で出てくる中華を、回らない円卓で苦労して食べている時も、やさしい現地ガイドさんは劇場までの「行き方」を教えに来てくれました。おかげでハーマジェスティーに行くのがバレ、アタシは一気に円卓の羨望の的になってしまった。さすがはロンドン、本場のミュージカル「オペラ座の怪人」は人気が高いのだ。

なんとか目立たないようにジッとしていたが、「オペラ座の怪人、行くんですか!?」とお嬢さん達に訊かれると、もう自慢話が止まらない。チケットの取り方に始まって、ロンドン滞在中に見ることになっているミュージカルの自慢、果ては宝塚に通ったことまで、訊かれもしないのにペラペラと喋べり、スマコンの中居君状態になっていた。

ピカデリー広場では、新年のパレードが行われており、いつもならスンナリ通れるはずの道が大混雑。おまけに雨まで降り出すから大変。なにが大変かというと、道行く皆さんは外国人なので当然、とても背が高いわけ。でもワタシは日本人の中でも平均以下の身長のため、チビッコのワタシが傘をさすと、他の皆さんにとっちゃー大変邪魔な位置に傘が来るってわけ。

そんな苦労をしながら、ピカデリー広場を抜け、目指すはハーマジェスティー。女王陛下の劇場だいっ。ロンドンは全て「通り」に名前が付いていて、通りの角の建物にちゃんと名前が書かれているんですね。だから自分が行きたい場所の「通り」の名前さえ把握しておけば、たいてい迷わずに行けます。この辺かなぁ・・・・という勘は使わず、ちゃんと確認すれば初心者でも大丈夫な、とても良い街です。というわけで、迷わず行けたので予定より随分早く着きまして、劇場も開いてないし、近くにあったマクドナルドに駆け込みました。世界のマック!ワタシはロンドンだけでなく、パリに着いてもマクドナルドの世話になるのです。マック万歳!!

女王陛下の劇場は、客席数こそ、そこそこでしたが威圧感は凄いです。狭いながらもクロークやバーはしっかりあるし、いろんなところに彫刻がほどこされている建物でした。もちろん、オーケストラピットのある劇場。そこのセンター最前列という席でワタシは観劇しました。オープニングで、耳なじんだテーマ曲にのり、シャンデリアが舞台から天井にあがっていく様は鳥肌が立ちました。が、それまで。あとは期待が大きすぎたのか、それほど感激もせず淡々と観てました。

確かに歌は素晴らしかったです。レ・ミゼラブルもそうでしたが、下手な人がいないというのはビツクリ。日本じゃ考えられないことですが、ロンドンじゃ下手な人こそ考えられないのでしょう。きっと、客寄せのために歌えない人気スターをキャスティングするといった苦肉の策は必要ないんでしょうね。なんか、ある意味羨ましいような・・・。

歌は上手いが、容姿となるとやっぱり疑問符が。ファントムが小太りなんだもん。クリスティーヌに想いを寄せ、切々と歌うファントムは、確かに美しくはないんですね、顔が溶けているわけだから。でも、それはあくまでも本来は綺麗だったが、顔の一部だけ溶けたから仮面を付けてる、って設定のハズ。小太りに仮面じゃ〜ね〜、アタシにはマニアなストーカーにしか見えなかったりするんだなぁ。趣味はコミケでセーラームーンの同人誌を買うこと、みたいな。いや、素晴らしいんですよ、ファントム役の方の演技力や歌唱力は。目をつぶれば最高だと思うんです。でもワタシは美しいオトコが大好きなオンナ。ファントムの容姿が、模倣犯の中居正広とまではいかなくても、木村拓哉だったら(それもスゴイ話だ)、きっと狂喜乱舞だったに違いない。

こうして、またしてもSMAPの名前でページを締めくくろうとする、律儀なワタシであった。

 

つづく