ロンドン・パリ7日間
ロンドン 1日目
初めてのロンドンは、大晦日から元旦にかけての滞在。そう、働くよりも自分の時間をこよなく大事にする欧米では、日曜休みは当たり前、祭日に休むのも当たり前。外国から外貨をたんまりと持った、買い物好きの日本人が集団でやって来ても日曜祭日はお休み。「稼ぎどき」という言葉は、欧州にはありません。
そういう時期に行くわけなので、こちらも覚悟は出来てます。いいのさ、物価の高いロンドンでなんて、買い物しないもーん。本当はしたくても出来たいワタシであったが、そんなことは棚に放り投げ、ロンドンに向かって挑戦的になるのである。
でも、日曜祭日に関係なくやっているところ。あったんです。
ミュージカル。そう、タモリさんがお嫌いな歌って踊るお芝居です。日本で観ると、どこから見ても「太郎」さんが「ジョージ」と呼ばれている不自然さも、ここにはありません。なんたってここは本場。ジョージさんは太郎さんには見えないのです。だから不自然ではないのです。どんなに陳腐な台詞を言っていても平気なんです。ここは本場です。コトバが判りません。これ、強みです。
まず、ロンドンに着いた夜、タクシーを飛ばしてパレス劇場に行き、大晦日の「レ・ミゼラブル」を観ました。ガイドブックの写真で見る、レンガの建物に、有名なコゼットの絵が掲げられた劇場です。タクシーの運ちゃんに「パレスシアターに行って」とカタカナ英語で言うと、どうやら判らない様子。滅多にタクシーの通らないホテルだったので(一応、キングスクロス駅に近いのだが)、逃してなるものかと「レ・ミゼラブル!」と叫んだアタシ。これで通じました。運ちゃん曰く「パリス」と発音するんだそうで。確かに、スペルを読むとパリスじゃないかとは思ったものの、ガイドブックに書かれたパレスの表示を信じたアタシ。ま、どっちでもいいや。行けたんだし。
日本を出たのがお昼の12時。当日は7時50分のバスに乗るため5時半くらいの起床。お昼までで6時間半、それから飛行機に揺られること12時間。それからレ・ミゼラブルが終わって帰るまでに9時間。つまり27時間半、ずっと起きてた計算になるんですよ。ね?眠くないわけないでしょ??上演中、ワタシがどれほど眠かったか、判って頂けます?けど、席が2列目のセンターで、主役級の俳優さんの立ち位置の前。寝るわけにはいかない席なんです。ひたすら朗々と歌うレ・ミゼラブル。オペラのような卓越した歌は既に子守歌にしか聞こえない。三色旗を持った男性を軸に、盛り上がりを見せる舞台。おおっ、スゴイぞっ。そう思いながらも、ココロの中でそっと呟くワタシなのであった。ああ、これでやっと終わる。と。
ところが、それは第一幕の終了であった。幕間。なんと、アイスクリーム売りが出て来た。どう見ても甘いだけのシンプルなアイスクリームが実によく売れている。ワタシは断言する。森永や雪印の50円アイスのほうが、ここのアイスの何倍も美味しいに違いないと。チョコとバニラの折半アイスや、チョコの実なるアイスを見せたら、ロンドンの人たちは泣いてしまうかもしれない。食べさせたら倒れるかもしれない。もう、そのくらいこっちのお菓子はマズいのだ。
ワタシも、眠いんだから幕間を利用して素直に寝てりゃいいものを、こうして熱心に側のアイスクリーム売りの様子を観察してしまったので、第二幕に入っても睡魔は衰えることを知らず、激しい格闘が続いたのであった。
ちなみに、芝居では、コゼットの彼氏を好きな革命軍(?)の女の子が良かったです。
カーテンコールが終わり、劇場を後にした頃には既に11時を回り、もたもたしていたら新年になりそうな勢い。とりあえず、タクシーの来そうなところへと、人の流れに従い深夜のロンドンを歩く。大晦日だけに、いろんな人がいます。お店も、ハプやスナックは開いてます。そして、タクシーを捕まえたあと、ワタシは小銭を使い果たしていることに気づいたのです。
日本じゃ別にどうってことない話ですが、外国では小銭がなくなると死活問題です。ワタシは言いたい。欧米諸国は、見栄を張って高額紙幣を作ってはいけないと。国内であれほど使えないのに、ナゼ、高額紙幣を作る必要があるのだ。日本ではたいてのお店でも、タクシーでも5千円札を出して厭な顔をされることはまず無い。ところが、ヨーロッパでは紙幣は最小額面のみ使用可能で、ちょっとでも大きな金額になると、まるで犯罪者でも見るような顔をされてしまう。地下鉄の窓口ですら、お釣りが無いのだ!笑っちゃう話だけど、小銭がないと地下鉄にも乗れないのが欧州諸国なのだ。
国民みんなが小銭しか持たないのは判った。が、だからといって使わない高額紙幣を海外に出したキミ達も悪いのだ。開き直ったワタシは、タクシーの兄ちゃんに高額紙幣を出し、露骨に厭な顔をされてしまった。高額ったって5千円くらいだと思う。千円ちょっとの料金に5千円札を出す。別にどうってことない光景のハズだ。日本ではね。
釣り銭のない兄ちゃんは、ホテルで両替をしてくれ、お釣りをくれた。手間をかけさせてゴメンネということで、チップを多めに渡したが、実に納得がいかない。こんなに流通していないのに、どうして高額紙幣を作るのか。エリザベス女王の肖像入りのこの紙幣が、こんなにも嫌われていることを女王陛下はご存知なのだろうか。
成田で両替をするときは、三井住友銀行の係員に厭な顔をされても、「小額紙幣ばかりにしてください」と食い下がろう。銀行員に厭な顔されるほうが、現地の係員に厭な顔をされるよりはマシである。
ホテルに戻り、いつもながらの素早さで身支度を済ませ、いよいよ本格的に寝るスタイルに入る。持参したスピーカー付きのMDからは、SMAP曲がエンドレスで流れている。「しようよ」という、ライブでよく歌われる曲の間奏で、いつも中居君がやってる「We are SMAP !!」の叫び声を上げながら、布団に入るのであった。
こうして、どんな一流ミュージカルを観ても、ちゃんとSMAPで締めくくる、実に律儀なワタシなのである。