お風呂免許習得物語
<其の3>

【み・素人】
「おはようございます。あれ?名人?いますか?私です。素人です。」

【Q名人】
「あぁぁ。ふぁぁあぁぁぁ・・。え?あぁ、素人さんね。何の用?」

【み・素人】
「ひどいです。今日から名人の立ち振る舞いをみて私も10級合格を目指すために・・・。」
(涙)

【Q名人】
「はいはい。思い出した。俺、昨日夜更かししたから、コミケのカタログチェックで・・・。」

【み・素人】
「?????」

【Q名人】
「いや、私の身の回りの世話をすると良いでしょう。自然に名人の生活が身に付くでしょう。住み込むと良い。」

【み・住み込み見習い】
「名人のお世話をさせて戴けるんで?光栄です。それでは、朝食の準備から・・。」

【Q名人】
「その前に朝風呂の用意からだ。薪を割って風呂を焚くのだ。」

【み・住み込み見習い】
「はい。あのう。まず、名人の基本の型を見たいんですが。」

【Q名人】
「よ・よろしい・・。まず俺、いや、私がやって見せよう。こうだ。」
(朝からかったるいから、こいつにやらせようと思ったのに・・。)

【み・住み込み見習い】
「こうですか?」

【Q名人】
「腰が入ってない!なんだそのへっぴり腰は!
こうだよ。ほら、こう。や、ほれっ。そらっ。よっ。はぁはぁはぁ。どうだ。」

【み・住み込み見習い】
「上手上手。あれ?終わってしまいましたね。」

【Q名人】
「火を付け、入れる温度になったら呼びなさい。」
(役立たずめ。)

【み・住み込み見習い】
「名人。お風呂の用意が出来ました。どうぞ。」

【Q名人】
「ふむ。かき混ぜ方、良し。温度、熱すぎ。もっと勉強しなさい。 それでは、私の背中を流して貰おうか。」

【み・住み込み見習い】
「え?あの。名人の背中を?あの。そんな。名人、素っ裸なんでしょ。」

【Q名人】
「馬鹿か。お前は。裸に決まってるだろ。俺が、いや、私が見本をみせてお前の背中を・・・」

【み・住み込み見習い】
「ありがたい申し出なんですが、遠慮させて下さい。」

【Q名人】
「そうか・・・。まぁ、10級を受けるんなら背中流しの実技はまだ無いからな。」

【み・住み込み見習い】
「名人がお風呂に入ってる間に、日刊お風呂新聞を読んでもいいですか?」

【Q名人】
「うむ。良し。」

【み・住み込み見習い】
「名人!この記事読みました?来月の名人の受ける1級試験、Q名人の事が! めちゃめちゃ、注目されてるんじゃないですか!
すごいですね。今のところ、ライバルは、前回の1級保持者の田中ツネさん(86) の長男の田中泰蔵さん(56)だけじゃないですか。
ところで名人、今日は、仕事は?」

【Q名人】
「会社でも期待されてね。俺が1級取ると、それが話題になり宣伝にもなるっていう んで1級試験まで、勉強に専念出来ることになったんだ。朝飯は?」

【み・住み込み見習い】
「はい!出来てます。日刊お風呂新聞、面白いですねー。いろんなためになる記事が。」

【Q名人】
「そういえば、明日、私が試験をしてやる。」

【み・住み込み見習い】
「え?1週間後じゃなかったんですか?」

【Q名人】
「気が変わった。これから必死で勉強すると良い。俺もこれから自分の勉強をする。 風呂の掃除、手を抜くなよ。」

【み・住み込み見習い】
「ひゃ〜!勉強の時間が・・。」


next

back



蟹屋 山猫屋