アンガスの話


 アンガスと聞いてご存知の方はどのくらいいるでしょう。アンガスはイギリス原産の肉用種で正式にはアバディーン・アンガスといい、成長が早く、外国種の中では肉質が優れていることで知られています。粗飼料でも良く育ち、丈夫なことも特徴です。母牛のミルクも十分出るので子育ても上手だといわれています。まあ、そうはいってもホルスタインはミルクを出すために子牛はミルクを直接飲ませてはもらえず、子育て上手かどうかわかりません。アンガスしか知らないので比べることはできません
私はデンマークでの研修中にアンガスに出会いました。まさかそのときは私がこの牛を育てることになるなんて思っても見ませんでしたが・・・。その地方にいるさまざまな肉用種の中からこうして世界中に広がったアンガスはやはり肉牛として優れているのかもしれません。今、日本に入ってきている牛肉のほとんどがアンガスの血が入っいるのではないかと私は思っています。まあ、今は赤身肉から霜降り肉まで輸入牛でもそろえられるといわれているので、一概には言えないのかも知れませんが。
アンガスの外見の大きな特徴は角が無いことです。日本に導入されて無角の和牛の改良に使われたという記録があります。山口県にいると聞きますが一度見てみたいものです。    
そんな丈夫で飼いやすいといわれるアンガスですが、弱点もあります。ダニを介して移る、ピロプラズマという病気はアンガスにとって命取りになることもあります。貧血になり手遅れになると心臓麻痺を起こして死にます。ダニの季節は初めて放牧する牛は気をつけなくてはなりません。
繁殖はまき牛による自然交配をしています。つまり、山で母牛と共に雄牛を放牧して自然の交配をしているのです。非常に効率よく受精しています。彼らは群れで生活しているので、雄が入るのが自然なのかも知れません。
我が家では年間の出荷頭数を考えると、自家産の牛だけじゃ足りないので、道内のアンガスを飼っている仲間から素牛を買っています。2004年から首都圏コープに牛を買ってもらうようになり抗生物質や遺伝子組み換えの飼料、ポストハーベストなど規制が厳しくなり、何処の牛でも言いと言うわけにはならなくなりました。牛が生まれてきたときからト畜するまで、何を食べたのか全てわからなければなりません。もちろんノンGM,ポストハーベストフリーです。
我家では配合飼料を押さえて、国産の飼料で育てる工夫をしています。1頭あたり配合飼料を1キロぐらい1日に与えています。
この配合飼料も生協仕様でシンプルなものです。
アンガスをアンガスとして売るのは今の日本の規格では非常に難しいです。格付けは下のほう。和牛にはかないません。しかし、穀物をたくさん食べなくても粗飼料で肉を生産することができます。赤身のヘルシーな肉としてなんとか広めたいです。実際草のみで生産しているところもあると聞きます。有機畜産という分野にアンガスは適しているのです。
生協と直接取引きすることで価格が安定し、行き先もわかり生産者として直売とともに顔の見える関係ができています。
牛肉自由化以来、輸入牛肉がどんどん入ってきて、日本の畜産農家の経営を脅かしています。けど、考えてみてください。ホルモン剤、抗生物質と心配なことがあるのが現状です。輸入牛肉を安心して食べられますか?2005.6.5改定

 えさのところにも書きましたが現在うちの牛はビール粕の原料以外は日本産のえさを食べて育っています。厳密に言うと鉱塩、ミネカルも輸入です。こちらは微量ミネラルで体のバランスを整えます。北海道で手に入るえさで牛を育てることは私たちの考えている畜産にぐんと近づく事ができます。今まで穀類、つまり人間と競合する食べ物を外国から輸入して食べさせて育てていたことに疑問を感じて本来の家畜のあり方を考えたときに今のえさの体系になりました。人間と競合しないものを食べて家畜は昔は牛乳や卵、肉を人間に提供してくれていました。近代的な畜産が今の穀類にたよる形を作っていますが、ほとんどの穀物を輸入している日本は世界の穀物の生産状況に大きく影響を受けてきました。何年後か分かりませんが食料がなくなると言われているのにおかしいと思っています。思いがけずバイオエタノールの急成長で穀物が足りなくなって、えさの価格が上がり続けています。私たちの予想してる事が思いのほか早くやってきました。今後穀物価格の値下がりは考えにくい今こそ地域の中で作られた飼料で家畜を育てる事に意味がある気がしています。2008.1.8 改定


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