21世紀の渓流フォーラムに出席して



 去る2/26に山形県山形市で開催されました「21世紀の渓流フォーラム」に出席し て参りましたので その模様を一参加者の視点から報告したいと思います。 なお、この会の模様は釣 り人社刊「FlyFisher」 5月号に詳しく掲載されておりますので、興味のある方はご一読をオススメいたしま す。(既にバック ナンバーですが・・)

・渓流フォーラムとはなんぞや?
 21世紀の渓流フォーラムとは・・山形県内の釣り人、河川行政、漁協の代表者に 全国で活躍中の各方面の有識者の方々をパネラーとして交え、21世紀の渓流釣り場の理想像を探る場 として1997年より毎年開催されているフォーラムなのです。 今回で4回目を数える今年のテーマは「 渓流釣り場に関する人間の役割」です。

・出席の動機
 私がこのフォーラムに出席してみたいと感じたきっかけはやはり、釣り人、行政 、漁協という釣り場環境を大きく左右する力を持つ三大勢力が一同に会して、次世代の渓流環境にどの ような理想像を描きそれをどのように実行しようとしているのか・・という事が知りたかったためです 。 

釣りクラブや自然保護団体が河川保護について話し合うフォーラムはよく目にしますが、釣り人 、行政、漁協という立場も利害も全く異なる三者が一同に会してフォーラムを開くというのは全国的に 見ても非常に希(というか唯一かもしれない)なケースだと思います。 私は関東の人間ですが、 たとえ新幹線代をはたいても出席の価値アリ!と思ったワケです。

・山形に渓の未来を見た!
 今年で4回目を迎えるこのフォーラムは河川環境を改善してゆく三者が来世紀から の実際の行動に向けて、ざっくばらんに意見交換を行う事を目的に開かれていて、特に会期中に〜を採択す るとか、〜問題について統一した見解を導く・・というような会議的な側面はありませんでした。あくまで 、参加者がパネラー諸氏の講演をふまえながら、それぞれの意見を述べ、時には意見を闘わせながらお互いの 知識や行動力に厚みを増すという主旨の集まりと感じました。

 フォーラム中、出席者各位のお話を聞いて行く中で私が感じた 事は、全国的に見れば比較的河川環境が良好に保たれている印象の山形県内の川に あっても、非常に多くの問題が山積みされており、現状ではそれらが解決するするより早く様々な問題が新 たに起こりつつあること。そして、それらの問題が既に放置しておけない状態にある事などでした。 主な問 題提起は「C&Rの現状と今後」「河川行政に釣り人の意見は反映出来るのか」「砂防ダム工事は本当に必要 か」など全国の釣り場が抱える問題がここでも真剣に語られていました。 昨今、特に問題となっている河 川環境の問題では、河川法の改正を受けて行政も河川工事のありかたやダム計画の見直しについて交渉 のテーブルに付く姿勢を見せ始めているそうです。

 会場では行政代表として参加された農水省水産部の樋田氏から 「個人的な意見はどうしても参考程度になりがちですから、組織的な声として意見 をまとめた方が行政には意見が通りやすい傾向にあります」というような具体的な提案が寄せられるなど、 「どうしたら我々の暮らす地域の川がよりよい環境になってゆくか」という視点で多くの意見が交わされまし た。 この会で印象に残ったのは総括で述べられた、「川はその地域の財産であり、地元の人が声を上げ なければ、他の地域の人が何を言っても変わらない」「川を良くするも悪くするも地元の方々の努力次第であ る」という言葉でした。現状のままでは例外なく山形の川の未来も決して明るいとは言えないと思います。

 しかし、このフォーラムに集まった人々は立場も利害も違いますが、なにより「自分たちの川を愛する心」 という大きな共通項で結ば れているように感じました。

 このような人たちが集い語り合う山形に、私は21世紀の日本の渓の未来像を 見たように思います。

・このフォーラムに出席して
 「川はその地域の財産である」このフォーラムに象徴されるこの言葉はそのまま 、その地域の人々がどのように地元の川とつき合っているのかを示す言葉とも言えると思います。 ゴ ミだらけのドブ川なのか、美しい清流なのか、それを決定づけるのは紛れもないその流域に住む人々の川に対 する想いそのものだと思います。

 私の故郷は北海道なのですが、北海道の河川環境は全国的に見ても非常に悪い状 態になりつつあります。原因は一般的なものから北海道特有のものまで様々ですが、現状では荒廃の進む速 度に対しそれを改善して行こうとする人々の数が(人口密度の問題ですが)あまりにも少ない事です。 北 海道はもともとふんだんに存在していた天然資源を搾取する事で産業を発達させて来た背景があり、多くの資 源が乱獲や乱伐で枯渇した今も「山や海の天然資源はタダで無尽蔵」という無意識下の悪い(かつてはそ れでよかったのですが)風土が存在しているのも荒廃の一因になっているようです。 山形の報告にもあっ たのですが、多くの自然に恵まれた地域では以外に身近で起きている自然破壊に地元の人々が無関心な事が多 いとの事です。

 現に私自身も故郷を離れる前は情けない話ですが、周囲の自然環境に対しほとんど無関 心でした。

 それは自分の生活に自然があることがあまりに当たり前過ぎて、意識すらしなかったからかもし れません。それが首都圏に出て働くようになり、ソレらが如何に貴重な存在であることか遅まきなが らに気づき、そして今大いに焦っているのです。 古くから人間が住み着き開発の手が加えられて来た都 市部にはすでに守るべき自然の原型が失われていますが、東北や北海道にはまだ守るに十分値する河川を取 り巻く環境が残されており、そしてそれらは今まさに人の手により急速に失われ続けています。 これら の危機的状況を回避してゆくには1年の多くの時間を川の中で過ごす釣り人が発言、行動してゆく以外にない と私は思います。

 山形ではフォーラム後すぐに「釣り人自身」の意見を反映するために、釣り人に よる全山形規模の組織を今年より結成し、21世紀の山形の釣り場環境保全に向けて具体的な行動に入りまし た。

 これはまさに 「釣り人自身の意見を釣り場に反映するたに、組織的な声として意見をまとめる」 というフォーラムで得られた教訓をそのまま生かした組織といえないでしょうか。 この組織が今後ど のような成果を上げて行くのか注目されますが、山形の人々とそのフィールドは次の時代に向かって新し い一歩を踏み出した事は間違いないと思います。

 私も北海道に育った人間として故郷の川の荒廃をただ眺めているばかりではなく 何か具体的な改善に向けて行動を起こして行かなければならないと感じました。  この文章を読まれた方も、普段自分がフィールドにしている河川環境について今一度、改善出来る所はないか ?あるとしたらどのようにすれば良いのか、考え些細な事でも実行してみる事をお勧めいたします 。

 自分の川を守れるのは、自分自身であると私は信じています。

flat-fish@mug.biglobe.ne.jp / りょうじ


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