ニュージーランド私的釣行記・ 〜知識編〜

 釣行記に続きニュージーランドのランギタイキリバーに遠征釣行した際に得た
釣りに関する情報をまとめてみました。 ここではュージーランドの釣りに関する
歴史や、ルアーによる具体的なメソッドやレギュレーションなどを解説します。

1、ニュージーランドの釣り文化とその歴史

・ニュージーランドと釣り事情・
 南半球のリゾート地として名高いニュージーランドは日本の0.7倍ほどの面積に
約1400万人の人々が暮らす農業、畜産が主産業の国です。 南北に細長い国土は
北の温暖な地域から南の寒冷な地域まで多様な気候風土をもっており、季節に
よっては、マリンスポーツとウィンタースポーツが同時に楽しめる事でも有名です。
 釣り事情はといいますと、海ではロックフィッシングと呼ばれる豪快なルアー
釣りで主にGT(ロウニンアジ)やカジキを狙います。 内水面ではフライによる
トラウトフィッシングがメインですが、一部ではミミズによる巨大川ウナギ釣りも
行われているようです。

・ニュージーランドのトラウトフィッシング・
 先述しましたが、ニュージーランドでのトラウトフィッシングはフライが主流で
その釣法にも様々なルールが設けられています。 しかし私はルアー専門なので
ニュージーランドで釣りをするにあたり、レギュレーション等、色々と調べる事に
なりましたが、結果的にはルアーフィッシングは可能でした。 現地では釣りと言えば
そのままフライによるトラウトフィッシングを指すくらいフライがメジャーですが
これは多分に歴史的背景によるところが大きいようです。(元イギリス系植民地なので)
 ニュージーランドのトラウトの歴史は約100年以上前に遡り、19世紀末頃から主に
北米より輸入したスチールヘッド系ニジマスの子孫が現在定着しているとの事です。
もともとトラウトはゲームフィッシュとして輸入された経緯より、釣りのスタイルも
100年以上もの長い時間の中でニュージーランド独特のスタイルを確立しており、特に
フライの分野においては世界のどこにも見られない独自のスタイルを多く見いだす
事が出来ます。

・ニュージーランドのルアーフィッシング事情・
 私が今回の遠征を計画するきっかけになったのは、1冊の釣り雑誌でしたが
フライ専門の雑誌であったためルアーについての情報を得る事が出来ず、現地に
直接問い合わせて見たところ、河川湖沼のごく一部をのぞきほぼ全域でルアー
が可能な事が分かりました。 後で分かった事なのですが、ニュージーランドでは
ルアーフィッシングは非常にマイナーで、現地釣行を通してルアーを使用している
人は一人も見かける事が出来ませんでした。 しかし、現地のフィッシングガイド
の方に聞いた話では、ルアーのカテゴリーに類する釣法が全く無いわけではなく、
スプーンとスピナーによる釣りは一般的に良く知られているようです。
ここで言うスプーンとスピナーの定義ですが、スプーンは日本のそれとほぼ同じ
スタイルであるのに対し、スピナーはスプーンにスイングスイベルを付けたモノや
バス用のジグヘッドのようなシステムにフライに用いられる羽を巻いたものなど
かなり広範囲のものを指すようです。(というか、スプーン以外のルアーは全部
スピナーと呼んでいるような気もするが) ルアーフィッシング自体も現地では
「スプーンフィッシング」と呼ばれていて、「ルアー」という言葉はフライの中の
一つのタイプを表す言葉として使われているようです。(ルアースタイルという名前の
フライが多く存在する) ここでも日本との釣り文化の大きな違いが見られます。

2、フィールドを取り巻く環境

・ニュージーランドの魚たち・
 先述しましたが、ニュージーランドにいるトラウト類は全て今世紀初頭に人の手により
移入されたもので、もともとニュージーランドにトラウトは生息していませんでした。
 現在ニュージーランドではレインボートラウトを中心にブラウントラウトや少数ですが
ブルックトラウトも生息しているようです。 釣りの主な対象となるレインボートラウトは
もともと降海型のスティールヘッド種なので産卵のために遡上した彼らのファイトは
強烈で、このファイトには多くの釣り人が魅了されてしまうようです。(私もです)
 ニュージーランドでは個体数の確保と生態の調査を目的に「Fish&Game」という団体
による放流も盛んに行われていますが、実は全体の個体数に占める放流魚の数はごく僅かで、
多くの魚達は自然産卵による世代交代を延々と繰り返して来た野生の魚なのです。それらの
魚が素晴らしいプロポーションと強烈なファイトを持つことは言うまでもありません。

・ベストシーズン・
 基本的にニュージーランドでは一年中釣りが楽しめます。 湖や一部の川には禁漁期は
ありますが、全ての釣り場が一斉にOFFになる事はありません。 私の訪れた北島では比較的
温暖な地域にあたるので、気温は通年安定しており冬でも雪が降るような事はありません。
もちろん四季による気温の変化はありますが、魚や人間の活動を阻害するほどでは
ないのです。 つまり、釣りのベストシーズンも自分の釣りのスタイルに合わせて好みの
シーズンを選べばそれがベストシーズンという事です。 現地ではこのシーズンを
「春夏型」と「秋冬型」という感じで大きく2つのパターンで考えているようです。
 春夏にかけては魚の餌となる虫や小魚の活動が活発になり、魚達も積極的に補食活動を
するので、ルアーでは表層を泳ぐミノーなどに盛んにアタックしてきます。 
 秋冬にかけては大きく育った魚が産卵行動に入るのでルアーは重めのスプーン、ミノーでは
深く潜るタイプに分があります。 春夏ほど魚達のアタックは多くありませんが、釣れると
デカイのがこの季節の特徴です。 ちなみに現地の釣り人はこの時期の釣りを特に好む
ようで、1年中で釣り人が一番多い季節でもあります。 実際私が訪れたのも秋の終わり頃で
小さな支流に信じられないほど大きな魚がたくさん遡上しているのを目にしました。
私はサイトフィッシングではことごとくバラシましたが、そのファイトにはフレッシュランの
サーモンにも匹敵する強烈な印象を受けました。

・ニュージーランドの川・
 ニュージーランド北島を代表するフィールドの一つにランギタイキリバーがあります。
ランギタイキリバーは北島北部を流れ、タウポ湖へと注ぐトンガリロリバーとともに
その名を世界に知られるトラウトの名河川の一つです。 流程は河口より200km程度の
中型河川ですが、広大な流域面積に多くの支流群をもち年間を通し水量豊かな川です。
上流域ではスプリングクリークのように澄んだ水をたたえ、広大な植林地の中を
延々と蛇行して流れます。 途中にはフレキシー湖やランギタイキカナルなど魅力的な
釣り場があり、巨大なトラウト達が訪れる釣り人を狂喜させています。
 アニュフェニュア湖から始まる中流域は多くの支流群を集め急速に流れが太くなります。
ここではパワーボートなどで川を移動しながら豪快な本流釣りが楽しめます。
 この他にも世界に名の知れた川がいくつも存在しますが、ニュージーランドの川に
共通するのは、ダムを初めとする人工構造物が極めて少ない事で、護岸や砂防施設は
ほとんど見かける事がありません。 これは単に川を水路と考えず、治水を森や海と関連
づけてトータルに考える思想があり、少々の水害でも無闇に自然の河畔を破壊して
しまうような事はなく、川を「生きたまま活かす」考えが定着しているようです。

3、レギュレーションについて

・釣りをするためのルール・
 ニュージーランドの内水面において釣りをするには様々なルールを守らなければ
なりません。 その中心となるのが、厳格なライセンス制による釣り環境の整備と
保護ですが、ニュージーランドでは「Fish&Game」という民間団体がニュージーランド
全土の釣りとハンティングを管理しています。 釣りに関するルールは多少複雑ですが
理にかなったルールなので理解は容易です。 もし、ノーライセンスで釣りをしたり
ルールに違反した行為が発見された場合には厳しい罰則が設けられており、原則として
釣りに利用した財産を全て没収されます。 釣りに車やボートを利用していればそれも
没収されてしまいます。 しかし、こうした厳格なルールと釣り人の高いモラルの
おかげで、今日の日本では失われてしまった素晴らしいフィールドと魚達が今も守られて
いるのです。 ライセンスとはいっても資格技能が要求されるわけではなく、誰でも
自由に購入する事が出来ます。 ハイシーズンでも大人が一週間で39N.Z.$ですから
日本の遊魚料に比べると破格と言うべき安さです。 しかもこのライセンス一つで
北島の約半分の釣り場(北海道の3分の2程の面積)を釣る事ができるのです。
 ニュージーランド北島においてはライセンスの種類が地区によって幾つかに別れて
おり、年券ではランギタイキ川があるイースタン地区、タウポ湖とトンガリロ川などの
流入河川を管轄するタウポ地区、ツランギエリアの一部を含むその他の地域の3種類の
ライセンスが存在します。ライセンスの管轄エリアによって釣り場の事情が異なるため、
レギュレーションはそれぞれの地区で違います。 下の写真はイースタン地区の
ライセンスです。


                  
                   ↑ライセンスの種別は季節や遊漁者の年齢、入漁期間
                    などによって細かく料金が分かれる。該当する覧に
                    発行者が日付と時間、サインを記入する仕組み。

 以下に上の写真のイースタン地区のフィッシングライセンスに記載された
レギュレーションを抜粋和訳したものを記します。

〜はじめに〜
  ここに記載されている内容はあくまでガイドラインであり法的に定められた内容では
  ありません、詳しくは「Fish&Game NewZealand Anglers notice」か
  「Sports Fishing guide」を参照して下さい。
  このレギュレーションを尊守しない場合、あなたを守るべき手段が無くなります!
  ※このレギュレーションはイースタン地区でのみ効力を持ちます
〜オープンシーズン〜
 ・ロトルア湖周辺の湖、ランギタイキ川水系の湖、ワイロア川水系の湖、他22カ所は
  10月1日〜翌年9月30日(今年は通年)解禁
 ・タラウェラ湖、ロトイチ湖、オカタイナ湖は定められた区域での岸釣りでのみ
  通年遊漁可能です
 ・ランギタイキ川(同水系各水路も含む)、カイツナ川、ワイロア川、タラウェラ川
  (滝より下流)、ワカタネ川、ワイマナ川、ワイオエカ川、ワイカレタヒケ川、
  ワイアウ川、ンゴンゴタ川、ワイテティ川、ハムランア川とmain road bridgeの下を
  流れるアワホウ沢、Lake road bridgeの下を流れるウツヒナ沢は通年遊漁可能です
 ・タラウェラ川の滝から上流部は10月1日〜翌年5月31日までが遊漁可能です
 ・ロトルア湖とワイカレモアナ湖に流入する川や沢は12月1日〜翌年6月30日まで
  遊漁可能です。
〜漁具についての規制〜
 ・一つのフライ(ルアー)につきフックは1個までで、フック一個につき針は一本まで
  (つまりシングルフック1本のみ)
 ・フックの大きさは針先からシャンクの距離が14mm以下のものを使用すること
 ・各フライ(ルアー)の重さは40gまで
 ・フライラインはいずれもメタルコアがあるものを使用
 ・タラウェラ湖の一部、オカタイナ湖とロトマ湖のフライ専用エリア外の区域を除き
  フライラインにはメタルコアを使用したラインを使用する事
 ・釣り人一人につきリール付きのロッド一本まで(リールなしは不可)
 ・トローリングでの釣りに限っては許可されたリールのみ使用可能です。
〜フライ専用エリアについて〜
 ・ロトルア湖に流れ込む全ての支流群及び、流れ出す川ではインレット及びアウトレット
  から200mの河川内はフライ専用エリアです
 ・ロトイチ湖、タラウェラ湖、オカタイナ湖、ロトマ湖、ロトエウ湖、ワイカレモアナ湖
  ワカマリノ湖のインレット及びアウトレットを中心とした半径200mのエリア、
  タラウェラ湖内のランギウル湾とワカマリノ湖、カイタワ湖とその流入河川は
  フライ専用エリアです。
 ・ホロマンガ川とその支流、ホプルアヒネ、アニワニワ、コロコロ、モカウ沢とその支流は
  フライ専用エリアです。
 ・ルアキツリとハンガロア川の上流からテ・レインガ滝まではフライ専用エリアです。
 ・ワイオエカ川とワイマプ沢、及びオパト沢とその各支流の上流から合流点までは
  フライ専用エリアです。
〜許可されている漁具〜
 ・人工的なフライ、人工的なミノー、自然のフライ(kouraを除く昆虫類)のみが利用可能です。
 ・オハウチャネル、タラウェラ湖のアウトレットとタラウェラ湖の冬季岸釣り指定区域
  ではボートを使用しての釣りが許可されていません。
〜1日のキープ制限量〜
 ・ランギタイキ川、ホロマンガ川は一日2匹まで
 ・ワイカレモアナ湖は一日8匹まで(うち、ブラウンは2匹まで)
 ・タラウェラ湖に注ぐワイロア沢河口では雌の個体は捕獲禁止
 ・その他の全水域では一日8匹まで
〜釣魚のサイズ制限〜
 ・ロトルア湖とワイカレモアナ湖は35cm以下の個体は捕獲禁止
 ・他全水域では30cm以下の個体は捕獲禁止
 ・ルアキツリからワイタンギ滝の間は60cm以上の個体は捕獲禁止
 ・タラウェラ湖では野生の65cm以上の個体は捕獲禁止
〜遊漁時間〜
 ・早朝午前5時から深夜午前0時まで遊漁可能です

 以上が、ライセンスに記載されているレギュレーションですが、冒頭にもうたわれて
いる通り、この記述内容は一つ一つが法的根拠に基づく規制ではなく、規範として守る
べき事項として述べられています。 ニュージーランドの法律には自然環境の保全や
資源保護に対する各種法律がさだめられているので、上記レギュレーションに違反したり
ノーライセンスでの遊漁が発見された場合は、それらの法律に照らし合わせる形で
違反者を逮捕ではなく「告訴」する方法で、法廷で違反行為が裁かれるそうです。

・その他釣りに必要な許可・
 フィッシングライセンスの他にニュージーランドで釣りをする上でよく必要になる
許可証があります。 それは国立公園や人が管理している植林地に分け入って釣りを
する際に必要な「Forest permit」と呼ばれる、いわば入林許可証です。 これは
山中の林道を走っていると森の入り口あたりに「この先の地域への進入は入林許可証が
必要です・・」などと書かれた看板を目にします。 これは釣りのためのガイドマップ
にもエリアが記載されていて、注意が必要です。 この入林許可の目的は入林者の行動
を規制するためのものではなく、広大な森林で行方不明などの事故を未然に防ぐために
もうけられているそうで、日本の登山者名簿にに似た働きを持つようです。 そのため
許可証の取得は至って簡単で、各町や村にある管理事務所(営林署みたいなもの)で
署名や入林時間や目的など、簡単な項目を記入すると小さな紙片としてもらえます。
 また「Forest permit」が必要な場所で釣りをする場合、ライセンスの他に
「fishing permit」とよばれる許可証も必要な場合があります。

4、ガイドシステムについて
 ニュージーランドではそこを訪れた人々が釣りを心ゆくまで楽しんでもらえるように
様々な形で遊漁者をガイドするシステムが揃っています。 

・フィッシングマップ・
 まず、釣りを始めるには川の情報が必要ですが、これには釣り客用の便利な地図があり、
有名河川は河口から最上流までの全流程の地図が記載されており、細かなポイントの説明
も初めて訪れる人を意識してやさしく解説されています。 私の訪れたイースタン地区
でも4つの大河川と2つの湖についてこの地図が発行されており、非常に役に立ちました。
 この地図はライセンスを扱っている宿泊施設やスタンド、観光案内所等、色々な場所で
手に入るので入手は簡単、しかも全て無料です。

               
               ↑イースタン地区で扱っているフィッシングマップ。
                各水系ごとに本流とその支流群全てを網羅する。

    

・各種サインボード・
 釣り場環境もかなり充実しており、車でアクセス出来る有名なポイントには道路標識と
一緒にプールの名前やポイント名が記載されており、ポイントの前には駐車スペースが
確保されています。 マイナーな川でも人が川にアクセスするような小さな小道に
キレイな立て看板が立っており、川沿いのトレッキングにかかる時間や、避難小屋までの
所要時間などが記載されており、便利です。 また、湖には湖畔に遊漁に関する
細かい規則や各種規制区域などが分かり易く図説された看板があり、英語に自信のない
人でも安心して釣りが楽しめます。

・フィッシングガイド・
 ガイドシステムの究極にはやはり心強いフィッシングガイドの存在があります。
どんなに釣りに精通している人でも初めての川では思うように釣りが出来ないものです。
それが初めて訪れる異国の釣り場ならなおさらのはずですが、ニュージーランドには
世界中から釣りに訪れる人々を確実に「釣らせてくれる」素晴らしいフィッシングガイド
が数多くいます。 彼らは釣り場への案内はもちろん、各種ライセンスの確保、
適切なメソッドの説明やキャスティングのレッスンなど、様々なサービスの他にも、
必要ならタックルのレンタルもしてくれますので彼らに同行してもらえば釣りに関して
不自由する事はまずありません。 限られた時間の中で良い釣りがしたい場合には彼らの
ガイドは必須です。 経験に裏打ちされた彼らの技術には目を見張るものがありますが、
中でもサイトフィッシングを旨とする彼らの、魚を探す目の良さには舌を巻くものが
あります。

          
          ↑我々をガイドしてくれたGraemeさん。 非常に目が
           良く、水中に潜む魚を絶対見逃さない。

 フィッシングガイドはフリーで探す方法もありますが、
大抵はロッジや釣り具店等に所属しているガイドを釣りのスタイルによってコーディネイト
してもらうのが一般的です。 ガイド料金は1日二人くらいまでで300〜450N.Z.$が標準的
ですが、これにヘリコプターを使った源流釣行や馬に乗って釣り場をめぐるオプションを付ける
場合はその料金が加算されます。
 また、フィッシングガイドは単に「釣らせてくれる」というだけではなく、釣り場で
起こる様々な危険の回避や初めての川での安全な釣りを保証してくれるという意味で、
非常に価値のある存在でもあるのです。
 ニュージーランドのガイド達は世界中の釣り人を相手にしているだけあって、英語圏以外
の釣り客をガイドする事も多いようで、身振り手振りで熱心に色々な事を教えてくれるので
英語に自信のない人でも安心してガイドしてもらう事が出来ます。

5、ニュージーランドでのルアーメソッド

・全体的な傾向・
 冒頭で述べましたが、ニュージーランドにおけるルアーフィッシングはとてもマイナーな
存在です。 が、しかしレギュレーションが示す通り、ごく一部を除いて北島ではルアー
が大抵の場所で可能であり、マイナーな釣法ゆえにルアーにスレていない素晴らしい魚達との
ファイトが期待出来ます。 したがってルアーの色、形には決してセレクティブではありません
が、水が澄んだ釣り場が多い事と、人影には敏感な魚が多いので移動やキャスティングの精度
には気をつかいたいところです。

・シーズナルパターン・
 季節に対するルアーのパターンは日本と基本的に同じですが、私の訪れた北島では気温の
年格差が少ないので、例えば冬でも流れの緩い場所であれば暖かい日には表層を意識した
ミノーなどで楽しい釣りが出来ます。 しかし、例外的に冬季にスポーニングで遡上して
きたような魚を狙う場合はやはり、スプーン系の独壇場となります。

        
        ↑5月と言えばニュージーランドでは初冬にあたるが、
         温暖な気候のせいでミノーにも盛んにアタックしてきた。
         写真はランギタイキ本流で7cmのミノーで釣れた
         ベビーサイズのレインボー。 とにかく元気。

・春夏パターン(10月〜3月)・
 この時期は水温も上がり朝夕に表層での釣りや、源流部を目指すバックカウントリー
フィッシングが楽しい季節です。 この時期はミノーにも猛然とアタックしてくるので、
積極的に大きなルアーを使ってみるのが効果的なようです。 ミノーのサイズで言うと
川では5〜9cm、湖なら7〜13cmくらいまでが適当です。 そして、意外に効果的なのが
実は、日本製の「やまめルアー」で、産卵期以外に本流などに定位する大物などは警戒心が
強いため小さなエサを好んで補食しており、例年このルアーで大物が釣れているようです。
現地のガイドの中には大一番で「Japanese Yamame Lure」を指定する人もいるくらい
です。サイズは3〜5gが中心。

・秋冬パターン(4月〜9月)・
 この時期はなんといっても産卵のために遡上した巨大なトラウトを狙う豪快な釣りが
エキサイティングです。 彼らを釣るにはサクラマスやサーモンを釣るようなメソッド
が有効で、川の流れに浮き上がらない重くて細いスプーンが有効です。 私が試した
中ではウィローリーフ型の赤金スプーン(10g前後)が効果的でした。 もう一つ、やはり
スプーンですが、地元ニュージーランドのキルウェル社製の小判型のスプーンもかなり
効果があり、地元のショップで見かけた際は是非購入しておきたいアイテムです。
 また、スプーンが飽きられたような状態では大型のスピナーにも良い反応がありました。
いずれも、川底を転がすようにリトリーブすると良い反応があります。

・ルアーのセッティング・
 ニュージーランド北島のイースタン地区でルアーフィッシングを楽しむ場合は、
上記したレギュレーションに基づいてルアーに取り付けられるフックの数はルアー1つ
につきシングルフックが1本までと定められています。 フックのサイズにも上限があり、
シャンクと針先までの最短距離が14mm以下と定められています。 バーブの有無については
特に規制はありませんが、サイズの大きい針に関してはバーブレスの使用が望ましい
そうです。 

・タックル・
 ニュージーランドで釣りをする場合ラインの太さは最低でも6lbs、通常は8lbs〜10lbsが
標準的です。 これはかかる魚がなにせ大きい事と、ラインを気にする程セレクティブでは
ないことが理由ですが、魚が疲れないうちに素早くランディング出来る事も理由の一つです。
 湖で大物を狙う時は12lbsくらいのラインや20lbsくらいのPEラインを使用する事も
あります。
 ロッドは川なら本流も意識して6.5〜7.5フィートくらいのものでミディアムアクションか
バットのしっかりしたライトアクションのものが、リールはロッドの長さに合わせて
2000番か2500番クラスのものが適しています。
 日本と違い源流部でもメインターゲットは巨大なレインボーで、ひと跨ぎ出来そうな小さな
流れに信じられないような大物が潜んでいるので、源流部といえどもライトなタックルで
臨むと痛い目に遭います。
 他に特に必要なモノとして、大きめのランディングネットがあると重宝します。

・装備・
 釣りをするときの服装は気候が北海道などに比べると比較的穏やかなので、冬場の服装は
日本のソレと同じ感覚で揃えてゆけばまず大丈夫ですが、湖のインレットなどで
ウェーディングしながら立ちこんで釣りをする場合は真夏でも流入する川の水温はかなり
低いので、ネオプレンウェーダーが必携です。 また、川で釣りをする場合、真冬以外の
ほとんどの季節は人を刺すサンドフライというブヨの仲間がいますので、多少暑い日でも
長袖が必要で、肌の露出部分には必ず虫避けを塗る必要があります。 虫避けは街の薬局や
スタンドなどで簡単に入手出来ます。 虫避けは「insect repellent」と呼ばれていました。
 

 以上、長くなりましたが、ニュージーランドにおける釣り事情と規則、ルアーによるメソッド
を紹介させて頂きました。
 フライマンの聖地として世界にその名を知られるニュージーランドのフィールドですが、
多くの名河川、湖沼を擁する北島ではルアーフィッシングにも無限の可能性を与えてくれます。
 日本の北海道にも似た景色の中で巨大なトラウト達と対峙するとき、それが人の手と100年
たらずの時間によって創られた事に驚きを禁じ得ません。 彼の地は釣りの楽しさに添えて
大切な事も教えてくれるのです。

ニュージーランド私的釣行記3知識編  / 終わ

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