競馬との出会い

競馬ファンなら誰もが通過してきた”初心者・入門時”のお話。
何となく競馬中継を見だした私は、当然、知っている馬など一頭もいなかった。ただ、{前年に「ミスターシービー」という馬が”三冠馬”とやらになったらしい}と言うくらいしか、知識が無くただ漠然と中継を見ていただけに過ぎなかった。
一月もたつとローテーションが一回りして前に見たとき走った馬が出てくるようになる。
「この馬この間も走ってたな」
そうなると、俄然その馬に肩入れし、なんの根拠もなく応援したくなる。その馬が、たとえボロボロに負けようが漠然と見ているよりは面白い事が判ってきた。
そう、競馬を好きになるには、まず”好きな馬”を作ることである。誰かの応援をし、そいつを追っかけていれば、さぞかし面白いであろう。
折しも季節は春。ダービーとか言う、競馬最大のイベントがあるらしく周りは盛り上がっていた。
さて、ある日何気なく新聞に目を通すと、ダービーの特集記事が出ていた。
確か「今年のダービーはS&B対決」とか書いてあったような気がする。
別にS&Bと言っても、カレーとコショウが対決すると言うわけではない。S=シンボリルドルフ、B=ビゼンニシキ、この2頭が群を抜いて強いという記事だったわけだ。
私は思った。スポーツ新聞でもない一般紙が、こうまで書くからには、この2頭よほどに強いのであろう。では、この2頭のうち、どちらかを応援しようではないか。
さて、どっちにするか。毛色すら判らない以上選択基準は名前しかなかった。ビゼンニシキ。漢字を当てはめると”備前錦”であろう。米か日本酒か、そうでなければ相撲取りのようだ。
一方シンボリルドルフ。ハプスブルグ王朝の王様の名前が由来であるなんて、当時は知らなかった。ルドルフ・ヴァレンティノ から来たのかな?くらいにしか思わなかった。まぁいい。とりあえずこっちの方がかっこいい。決めた。今日からルドルフのファンになる。
さて、そんなわけで”即席ルドルフファン”が一人できあがり。もちろんそれまでの成績も知らない。血統なんてさっぱり判らない。適正距離、乗っている騎手、所属厩舎など、全く知らない。基準は”名前だけ”なのだ。ビゼンニシキにしろシンボリルドルフにしろ、まともに顔すら知らんのだ。
で、ルドルフはダービーを勝った。辛勝だったなんて事は、後々知ったことであって”なんだか判らんが自分が応援していた馬が勝った”と言う事実は脳天気な私を舞い上がらせるのには充分であったのだ。
ほぉ・・・なるほど強い馬だ
後のJRA史上最強馬に対してこんな感想を抱いたものである。物事を判って無いというのはかくも恐ろしい・・・。
まぁとにかく、こうなると「10年のファンより3日の追っかけ」とか申しまして・・・片っ端から競馬の本を読みあさり、知識を得ていったのである。そして、現在に至るわけだ。
しかしねぇ・・・あのころのルドルフは、私にとって「なんか知らないけど強い馬」にしか過ぎなかったのである。あぁもったいない・・・。

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