水産基本法改訂について

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水産基本法


「漁業者も漁業に対する意識を変えてみよう」


  全国の漁業者が待ちに待った水産基本法が出来ました。
しかし、同業者の皆さんも自分も、水産基本法について浜の人たちのどれほどの人たちが知っているのでしょうか?
    水産基本法が出来たから漁業はもう大丈夫だとか、水産物の輸入の乱入も良識のあるものになるだろうとか、水産物の自給率も示されているのだから我々漁業者の漁業経営も安定したものになるだろう?
と皆さん思ってはいませんか?

ある、場所での講演に耳を傾けた時に、感じた事を講演者の言葉を借りて綴ってみたいと思います。

 農業基本法、水産基本法の第9条には適切な保存、管理により生産物の重大な支障があるときは輸入の制限等の施策を講じるとあります。
 平成12年度の水産物の輸入は金額で一兆七千億円、トン数で三百五十万八千トンです。 今年、政府がネギ,シイタケのセーフガードを実施しました。 それにより日本製の電機、自動車は実質、中国に輸出できなくなりました。 輸入水産物で我々は大変に困っているが簡単には輸入規制は出来ません。 水産基本法では平成22年に1104万トン、自給率を77%にするとあります。 平成12年度は814万トンで自給率は66%で平成22年までに11%アップするとありますが、数字上は可能な数字かもしれませんが。

 しかし農業基本法には野菜、肉類など合わせて22品目にわたって自給率を示しています。  水産基本法では魚貝類、海藻類となっており、秋サケ、ホタテ、ウニ,アワビではありません。 それは、サンマ、イワシ、スケソ、ホッケ等です。 食料自給率について我々浜に生活するものは、しっかりとした物の考えに基づき国に対して物を言わなければならないと思います。

 また、農業基本法と水産基本法との大きな違いは農業基本法30条に農産物の価格の形成と安定と言う項目があり、その中で基本計画の中で”価格保障”するという文面があります。  しかし我々の、水産基本法の中にはありません。 基本法に大きな違いがあります。 自分達浜の人間はこのような情報を皆さんはどのように得ているのでしょうか?

 今、組合合併と言う事で根室管内をはじめ、道南、日本海、えりも以西等と大きな問題になっています、北海道指導漁業協同組合連合会が全道の組合111組合を55組合に減らし19年を目標に推進するとありますが、基準になるのが取扱高20億円、預金が30億円以上となっています。

 現在111組合のうち、取扱高20億円以上は54組合です。 日本海の石狩、厚田、浜益の3単協併せても17億円です。 小樽、余市を含まなければなりません。
 つまり、一つ、二つの組合合併ではなく広域合併をしなくてはならなくなります。 今あるいくつかの問題提起をしてみたいと思います。

 本当に取り扱高が最低20億円、預金量が30億円の組合を作って将来やって行けるのか、今の合併は困って借金があって合併するのではない。 何とかほどほどの組合もある。 規模を大きくする事によってスケールメリットは出るだろう。 でも合併した事によって我々漁業者にどのようなメリットがあるのだろうか。
 例えば日高管内の組合貯金量は300億円以上あります。 それぞれの組合が何とか漁業経営を行っている組合が漁業者からは何のために合併するのかという疑問がわいてきます。

 此れからの合併で考えなければならない事は合併した事によって漁場が大きくなりますが、漁場をどのように使うのか、例えば、300人の組合で刺し網、ウニ、アワビ、コンブ、秋サケなど、どの位の規模であれば経営が成り立つのか、根本的に考え直さなければなりません。 例えば、標津、羅臼、野付、別海等も共同漁業権で区別されています。 仮に合併をしたからといって、この区分は取り払うことは出来ません、漁業者が反対をするからです。 そうすると合併をしても何も変わることなどありません、しかし、この4つの組合の持っている漁場を一つとして考えて、その中でどういう組み合わせ、どういう漁業経営をやればどれだけの人が安定した漁業が続けてゆけるかを考えていかないと合併は意味が無いと思います。

 桧山、松前は合併したが依然として共同漁業権は今まで通り。 では漁業者の反対理由は自分達の権利が侵される、そして漁業経営、資源の再編成した時に不利益になったら困る。 それが最大の問題です。
 対等合併においても第3者機関において公平な判断のもと漁場の再構築をするのであれば将来に向け大きなメリットが出てくると思います。

 次に遊漁の問題ですが、北海道では人口の20%にあたる250万人の遊漁人口がおります。 釣りをする時は川、湖、海に限らず知事が発行するライセンスを出し、ライセンス料を徴収し、その資金を増養殖資金にしてはどうだろうか?
 例えば、公社が羽幌、瀬棚で行っているヒラメの放流事業は年間で一億六千万円、又平成16年から行われる日高管内以西のマツカワの種苗生産事業は漁業者負担が九千万円位になります、ライセンス料の中から資源増大にかかる経費を生み出すことが出来ないか、他県では協力金の形で行っている所もあります。

 次に秋サケの資源増殖の技術では二つの問題があります。 それは回帰率は0,2%・1,2%・5%を越える水準になってきました。 稚魚の生残率も全道で82,8%、根室では85,8%になっています。 サイズも全道平均で1,13g、根室は1,24g、オホーツクは0,9gとなっている。 しかし今、3gにして放流時期を遅らせようと話が一部の研究者から出ています、いま、 民間の増殖体制の中で11〜15億粒を放流しています。 いまは、 卵を取り、ふ化して放流までは技術が確立しています。 これから必要になってくるのは北洋と北海道の沿岸をつなぐ中でどのような状態で稚魚が動いて戻ってきているのか究明する必要がある。
 例えば、道立ふ化場、資源管理センターの発表する事項と違った結果がでた時に、浜の自分達はものを言えますか?
 それと今年から資源管理センターは独立法人になりました。 3年間は今までどうりですが基本的には自主財源で運営をする事になります。 浜の我々が調査、研究に対する負担をしなければならなくなります。 此れからの行政、研究機関に対しては、ちゃんと物を言って結論を見つけ出す事が大切な事と思います。

 もう一つの問題として、此れからの漁業協同組合の役目があります。 現在の個人水揚金額でいうと日本海は一戸平均で700万円、根室を含むえりも以西では1,300万円、根室以東では2,000万円、オホーツクは2,800万円位です。
 これだけ北海道の漁業の中で格差があります。 その中で漁業協同組合がどこも同じような事をしていては、やっていけなくなるのではないか。 現実に日本海の組合で信用事業、指導事業が出来ない組合が出て来ています。 此れからの漁協は販売、指導、信用,共済など総合漁協としてやれる所は良いが、やれない漁協はどんな形の漁協にするか考えていかないとならないと思います。
 例えば、信用事業は信連が直営をし漁業権管理と指導事業を組合がするといった組合があっても良いのではないか。 それと流通対策でいうと、今はだまっていても物が売れる時代ではない。 どのようにして自分達の作ったものを売っていくか考える時代になっています。 その中で標津が取り組んでいる地域ハサップは大きな力を持った事業だと思えました。 長い目で見ると競争の武器になる。 しかし他の地区も同じ事をやってくるでしょう。 又一つ工夫をしなければなりません。 つまり獲った魚は仲買人が買い。 加工業者が売ってくれるだろうの時代ではない。 そこで自分達が獲ってきた魚をどのようにして売るかという事を真剣に考えなければならない時期に来ているという事です。

 それから行政は今まで全て漁業協同組合に対して働きかけてきました。 それは前提として組合に話すと組合員まで話がゆくだろうという前提でやってきた。
 しかし今、漁業組合は、例えば水産基本法の中味、問題点など直接組合員に話をするような組織になっているだろうか?
 これから大切な事は漁業者一人一人が自分達の漁業をどう進めるのかどのような事が問題になっているのか、どのような状況になっているか情報として受け止めなければなりません。

 それに対して自分の考えを言える体制にしなければなりません。
この水産基本法の改正には、大きな目標として全国の食糧自給率の問題と、水産資源の流通及び保管の直営ならびに補助組織の整備があります。
第1次産業としての、農業及び林業に並ぶ漁業の法律の整備が必要不可欠になります。
 農業でいうところの保障と漁業の保障には全く異なった意味づけがなされていることを知る必要があるのです。
農業でいう保障とは、補償と明記すべきでしょう。品目的保障・組織的保障・構造改善的保障があり、これらは全て補償という形で農業を支えています。しかし、現実に北海道を例にとるならば、この補償が農家経営を圧迫しているのも一つの例である。
全国の農業と北海道の農業とでは、比較できない部分の歴史的背景があり、「去るのも地獄残るのも地獄」という現実がある。
 これに対しての漁業は、個別的横断的保障は政策課題にも挙がることはない。組織としての漁業には政策の目は向けられてはいるが、漁業者(当事者)としての政策は無い。自主自立が原則であり、いきおい漁業権の争奪に目が向けられるし、漁業権の権益や対立に漁業者の目が向けられ、漁業者全体として国や都道府県及び消費者への、漁業者への認識と保護に動く事に意識が向けられることはないだろう。

 食糧自給率でいえば、我が国の自給率は40%(2002年)であり、2006年度のカロリーベースで北海道は195%の食料自給率を誇っているのであるから、95%の食料を本州などへ輸出を計るのも一考だとは思う。一向に糸口の見えない生産者の生活向上施策に、農業・漁業の枠を越えて北海道の食料輸出という形で、本州及び世界へ目を向けるのは、やはり道州制の制定は必要になると思うのだが・・・

続く