主要漁業の現状と課題

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漁業診断と営漁改善

1、サケ定置漁業

 (1) 経過と現状

@ サケの漁獲変動は大きい。
 昭和40年代で95〜390トン、50年代で260〜690トン、そして60年代に入ってからも360〜590トンの幅で増減を繰り返している。 10年間の漁獲量をそれぞれ累計すると確実に増加傾向を辿っているが、変動周期は変わっていない。
 生産金額はそれぞれ50年代はじめまで生産量と共に増加を続けていたが、50年代における生産金額は生産量雄変動に比べて変化が少ない。
 しかし、60年代には生産量と金額の変化が殆ど対応している。

A 定置漁業健は、62年に6ヶ統から4ヶ統に減らした。
 ここで経営体も網毎であったものを2つの共同経営体に整理した。 
 漁場整理と生産性の低い網を減統し、経費削減を始めとする経営の効率化が図られた。 
 着業者数は27人と変わらない。 
 漁業権行使の上では、沖網を大定置、岡網を小定置としている。

B 定置漁業におけるサケの生産は全国的に増加を続け10万トンを超えるに至っている。 
 北洋における割当量の減少もあり、40年代には価格は上昇傾向にあった。
 しかし、200海里体制に入り、北洋サケの著減に代わり輸入サケが増加し沿岸サケの価格変動も大きくなると同時に低下傾向を辿る事になった。

 (2) 問題点

@ オホーツク沿岸におけるサケの回遊は不安定である。
 しかし、数年間の累積漁獲量でみると、増加傾向にあり、漁業としてはこの事を前提に考えるべきであろう。
 孵化放流事業も行われ,近年海中飼育試験にも取り組まれている。 河川環境の保全・改善が重要になってくる。

A 経営もこうした回遊量の変動傾向に対応した体制にすべきである。
 それは、数年周期の漁獲量変動を経営計画に組み込み、利益・損失の平坦化を図ることである。
 共同経営としての蓄積をどのよおうに行うかが問題である。

B 40年代には数量変化を超えた価格上昇があった。
 50年代の産地における価格は数量変動に連動して変化しており、数量減少には価格上昇が、数量増加には価格低下がそれぞれ対応している。
 しかし、輸入が増加する60年代の問題は、産地における価格変化が産地の数量変化と対応しなくなった事である。
 最近の水産物に多い傾向であるが、大消費地における輸入量を含めた需給関係に基づく価格水準が、産地における生産量にかかわりなく産地価格として設定されるのである。

 (3) 課  題

@ 孵化放流事業も転機を迎えているようである。
 これまで回帰尾数が資源増大・ノルマ設定の基準とされているが、魚体の小型化が問題になるに至って尾数ないし総重量だけの議論では不十分である。
 一尾当たり重量の増加を目指す孵化放流事業に転換すべきであろう。

A 大定置漁業では、設備投資が大きく経費も多額である。
 したがって、水揚げ金額の変動が大きいとすぐ赤字になる。
 現在水揚げを経営者で均等に分割しているが、経営としては内部留保による漁獲変動へのお対応が行われるべきであろう。
 経営者としての自己陶冶が重要である

B 60年代に入ってから価格は低下傾向にある。
 供給過剰ぎみであることと、漁体の小型化による質的低下が主な理由である。
 これまでサケは道漁連の買い支えや販路の確保によって価格維持を図ってきたが,単協独自の販売方法の開発を進めることも必要になっていよう。

2、マス小定置漁業・イワシ・マス・ニシン小定置漁業
  
 (1) 経過と現状

@ マス小定置の主な漁獲物は、昭和61年ではサケが殆どを占めていたが、62・63年にはマスの生産量が増加し、漁獲量全体の半分以上を占めている。 
 63年の金額では、マスが全体の6%以上、サケの倍近くになった。 
 また、イワシ・マス・ニシン小定置の生産量では、イワシ・ホッケ・キュウリ・チカの順で多いが、金額ではキュウリ・チカ・ホッケ・ニシンの順になる。

A 小定置漁業も、基本的にサケ定置漁業者の組み合わせ漁業とされている。 マス小定置12ヶ統、イワシ等小定置6ヶ統、12経営体、いずれも着業者は48名で3名以上の共同経営としている。

B マスの市場取扱量は40年代に増加するが、50年代には減少・低迷を続け、60年代に入り急増している。 
 価格は50年代始めまで上昇傾向を辿り、生産量の減少程度には金額の落ち込みを少なくしているが、50年代半ば以降は低下に転じ40年代の水準に近くなってる。 
 チカの市場取扱量は40年代半ばから急増したが、変動幅が大きい。 
 キュウリは50年代に入ってから市場取扱量が急増している。 
 しかし、いずれも60年代に入ってから減少が著しい。 チカの価格は50年代後半まで増加傾向にあったが、それ以降は低下に転じている。 
 これに対してキュウリの価格は生産量の増加と共に上昇を続けている。

 (2) 問題点

@ マスの漁獲量変動は大きく、短期の好不漁と長期の変動が重なり全体としては停滞的期間が長い。
 62年から急増しているが、これを長期的趣勢とみるわけにはいかない。
 キュウリについても60年代始めまで急な増加を続けてきたが、62年からは急落しており、これも長期的な変動を前提としなければならないであろう。
 チカも40年代後半には増加の傾向にあるが、短期的な変動が大きい。
 50年代後半には急減し、60年代に若干回復したとはいえ、短期的に急落した。
 このように、回遊魚の漁獲量変動は大きく、価格も全体として低下傾向にある下では生産の安定化は困難である。

A 1ヶ統当たり水揚げ金額は、平均で2,000万円前後である。
 大定置開始までの繋ぎ漁業としての位置を占めている。
 着業者数はサケ大定置の27名の倍近くにあたる48名を数えるが、単独で考えるとマス小定置だけが収益的に意味をもつに過ぎない。
 定置漁業者の範囲を特定し、縮小することも考えられよう。

B 主要魚種であるマスの産地価格は50年代後半以降低下の一途を辿っている。
 ここのはカラフトマスで、サケと同様の市場条件の下にあり、サケとの直接的競合とサケの輸入増加によるサケ・マス類の供給増加が、市場条件をますます悪化させている。
 また、キュウリ・チカの価格水準は上昇傾向にあるとみることができるが、安定的なものではない。
 札幌中央卸売市場におけるキュウリ・チカの入荷は、網走ものの割合が高いが、近年量的には全体として減少傾向にある。
 こうした点が価格の引き上げ要因になっているものとも思われるが、入荷量と価格との関係ででみるとキュウリは価格に対する入荷の反応は鈍い(価格弾力性が小さい)し、チカはバラツキが大きい(相関関係が弱い)。
 したがって、産地の価格支配力は殆どないので、市場対応の面で工夫が必要である。

 (3) 課  題

@ コマイの資源減少が激しいが、キュウリ・チカと並んでこの海域における特産的魚種に属する。
 これら魚種資源の維持・培養が地域漁業の振興の上で重要な役割を果たすであろう。
 従来地域的な資源は注目を集めなかったが、今後はこうした資源こそ地域の特産品として根強い需要に支えられる。

A サケ定置との組み合わせで小定置の整理が必要である。
 マス小定置では、大定置以外では外海カレイ刺網との組み合わせが大部分であるが、カレイ資源の減少が大きく、刺網漁業の経営的基盤は脆弱であり、組合わせ漁業として最適であるかどうかは疑わしい。
 確かな資源で漁業基盤の確保がまず図られなければならない。

B カラフトマスの需要は弱い、沖取りがなくなった状態で沿岸ものの需要がどのように変化するかが、今後のこの漁業を左右する条件になろう。
 また、キュウリ・チカについても幅広い需要に支えられているわけではない。
 したがって、これら魚種については、消費地市場の動向を十分調査・研究し、どのような販売が適当かを明らかにすべきである。
 このことが、これら漁業にとどまらず地域資源をどのように販売し、有利な市場条件を獲得すべきかを探る有力な経験となろう。


3、イカ・ホッケ・カレイ底建網漁業

 (1) 経過と現状

@ 昭和44年頃から特別採補による試験操業が始められ、48年以降共同漁業権に基づく本格操業になった。
 生産量は、昭和61年に1,000トン強であったが、62年・63年には1,600トンに増加した。
 量の多い魚種はホッケとイワシで、この魚種の漁獲量変化が生産量全体の増減を左右している。
 金額では、ホッケが50%以上を占め量的にも金額的にも重要魚種である。
 次いでカレイと活魚のカレイで漁獲量は増加傾向にある。

A 操業では、区域は水深35〜65m、期間は五月一日投網から12月末,着業数は120ヶ統で、ホタテ資源調査時における楊網やタコ漁業との漁場競合の場合調整が行われる。
 使用漁船は5〜15d、乗組員は2〜6人で、殆どが共同経営である。
 操業の制限は表7の通りである。

B 価格形成の水準は、水揚数量の増加が価格を低迷させ、数量減少が価格を上昇させるという単純な関係の上にある。
 多量を占めるホッケについては、数量変化ほどには価格変化は少なく、そのことが63年度の生産金額を大きなものにしている。
 カレイについても同様の傾向にあるが、活魚の価格低下が大きい。
 これらは、いずれも全道的な需給動向に従った価格形成が行われているとみることができる。

 (2) 問題点

@ 回遊魚の漁獲変動は大きい、資源変動は勿論、定置網漁業のような待機的漁法では、海況条件、他漁業による先取りの影響が大きい。
 したがって、漁獲を維持・増加させるためには漁獲対象に関する他漁業の動向にも注意を払う事が必要である。
 また、成魚のみを漁獲し、それ以外の幼稚仔は放流する等資源培養に留意すべきである。

A 現在120ヶ統の網が投入されているが、1ヶ統当たり生産金額は100万円に満たない水準に止まっている。
 これを2〜4人の共同で営んでいるが、経営としては効率的ではない。
 昭和48年には85ヶ統に制限されていたものを58年に現在の統数に増加させているが、ホタテ貝の地撒き海域も拡大していることからいうと過密のようである。 
 また、共同にする事によって経営統数を増やし易くなるのも問題である。
 
B この漁法は漁獲物を生かしておくことができ、活魚出荷に有利であるが、オホーツク海ものは価格水準では限界的位置にあり、他地域における生産量の影響を受け易い。
 63年の価格低下もこうした中で生じている。
 したがって、大消費地における活魚の増加だけでこお地区の価格が支えられるとは限らない。
 活魚出荷に伴う費用増加と価格動向とを充分勘案するべきである。


 (3) 課  題 


@ 漁場利用上、効率的及び最適な統数と配置を考えるべきであろう。
 とくに、ホタテ漁場が競合するので、この面からの整理が必要であろう。

A 経営形態上、単独で収支が伴う経営ないし実質的な共同経営の確立を検討すべきである。
 とくに、漁業権配分における不公平感は除去されるべきである。

B 定置網による漁獲物は多様であり、魚種構成は変化する。
 したがって、漁獲物を選択的に、かつ高価格でいかに販売するかは重要である。
 市場との協力による効果的な出荷形態=選別・品揃え・鮮度保持等の改善努力が必要であろう。 


4、毛ガニ籠漁業


 (1) 経過と現状


@ 昭和30年における大豊漁以降不漁が続き、36年に18隻あった着漁船が14隻に減少し、37年には組合理事会で前年度着業船の二分の一以下に減船を決定し、6隻が2人共同、1隻が3人共同で計7隻が着業した。
 この年北海道海面漁業調整規則が改定され、雄カニの甲長制限が7cmから8cmに引き上げられた。
 39年道庁は「オホーツク海北見海域毛ガニ籠試験操業許可取扱要領」 を決め、操業海域を現在の東部・中部・西部の3地区に分け操業者を対応させること、許可対象者は実績者2名以上の共同経営であること、使用漁船総トン数10トン未満、使用籠数700個以内、操業期間4月1日〜6月30日、水揚げ港の指定、軟甲ガニの採捕禁止等を制限条件とした。
 3隻に減船し、1経営体5人共同で操業した。
 40年からは知事許可漁業となり、「要領」における制限条件の操業期間を4月1日〜8月31日に変えた以外は同様である。
 43年には漁獲許容量制度(ノルマ)が導入された。 
 この年の取扱方針で操業期間が「4月1日から5ヶ月を超えない期間」 とされ、許容量に達した段階における総業停止、休漁期間の設定が適宣行われることになった。
 また、使用籠数が1,500個に引き上げられた。 
 生産量はノルマ制実施以後も減少を続け、現在も安定した状態にあると考えられていない。
 これに対して生産金額の増加は著しい。

A 現在の着業船は3隻で、5人共同3経営体で営まれている。
 乗組員は6人、1施設(のし)300籠、3,000mとし、5施設1,500籠で操業している。
 操業上の制限条件は表8の通りである。

B 毛ガニの価格上昇は著しい。 
 特に近年活出荷が大部分を占め、高価格で販売をされている。
 そのための活魚設備を不可欠としているが、鮮度保持技術の向上も著しい。

 (2) 問題点

@ 「資源管理型漁業」の代表とされているが、事態はそう簡単には進んできたわけではない。
 ノルマをいかに守るか、資源回復をいかに図るかが最大の問題である。

A 最近の1隻当たり水揚げ金額は5,000万円前後となり、権利者1人当たり1,000万円の水揚げである。
 資源変動、価格変化が大きい事もあり、積極的に参入を希望する組合員は少ないようであるが、今の水準が続く場合このままでおさまるのかどうか検討を要しよう。

B 堅ガニの価格は高い。
 しかし、この地区に多いのは軟甲ガニである。
 時期を延ばせば堅ガニになるが、操業期間の設定で必ずしもそうはならない。
 この辺の販売対応を生産時期との関わりで考える必要があろう。

 (3) 課  題

@ 資源管理を実効あるものにすることである。
 その場合、他漁業における混獲に注意を払う必要がある。
 とくに、保護区域の設定に見られるような沖底の規制が重要であろう。

A 生産数量の増加よりは経営の効率化による収益性の向上が目標とされるべきである。
 経費の節減、販売単価の増加に経営努力を傾けることである。

B オホーツクの毛ガニはこの時期、売手独占的地位にある。
 数量が制限されると当然価格は上昇する。
 しかし、グルメ・ブームに乗って高く売れるうちは問題がないようにみえるが、ここで消費者の立場を考える必要がある。
 広く多くの人々に食べてもらえる価格の設定と流通経路の確立について生産者も考慮することである。

表8 かに籠漁業の制限及び規制

毛ガニ籠漁業は北海道漁業海面調整規則第5条の許可で一項に依る申請を毎年行いその内
 容は次の通りである。
イ、 漁 獲 量〜毎年網走水試等で資源調査を実施し、網走管内のノルマがあり、漁期
            前にそれぞれの漁協のノルマが決定になる。
ロ、 操業期間〜 操業期間は宗谷海域と話し合いをし、3月下旬より8月中旬まで操業し
            、5ヶ月以内とされた。 脱皮休漁漁期を15日間設定する。
ハ、 操業区域〜 中部海域(湧別地域より常呂海域)
二、 漁業根拠地〜湧別港
ホ、 制限または条件
          @ 海中に敷設する籠数は1,500個以内
          A 脱皮直後の毛ガニ及び毛ガニ以外のカニ類は、速やかに海中に放棄。
          B 漁獲物の陸揚げは所属漁協の計量を受ける。
          C 漁獲物が別に定める予定漁獲量に達した場合は操業を停止する。
          D 知事に漁獲成績報告書の提出義務。


注) 海面漁業調整規則第5条第2項、毛ガニの雌がに及び甲長8cm未満の毛ガニの雄
    がには採捕してはならない。 



5、 外海カレイ刺網漁業

 (1) 経過と現状

@ この漁業は、昭和35年に小手繰からの転換漁業として始められた。
 ホタテ貝漁業が重視され、本格化する操業禁止区域は拡大され、操業範囲も縮小している。
 生産量は、250d前後で推移しているが、うち150d前後はカレイで占められている。
 金額もカレイが大部分を占めている。

A 操業海域は1〜6マイルを禁止区域とし、ホタテ稚貝放流との調整を図っている。
 期間は、氷が開ける4月1日から12月末までである。
 操業隻数は40年代半ばに70隻まで増えたが、ホタテ貝資源保護のため操業区域に制限が加えられ、50年代終わりには承認数が削減され、60年以降26号40隻以内33号25隻以内となっている。
 操業の制限は表11の通りである。
 網は一晩止めである。

B カレイの価格は60年に急上昇している。
 これはオホーツク海を始めとする全般的な漁獲量減少に基づくもので、とくにマガレイ等の高級魚の価格上昇が著しい。

 (2) 問題点

@ 全道的な資源減少が問題になっている。 
 カレイの回遊範囲は広く、一海域だけを対象にした資源培養の効果は少ない。
 資源管理適正化方式事業にカレイも加えられていることを利用してこの魚種の資源調査を徹底すべきである。 
 また、ホタテ漁業との関連で漁場が縮小している事も考慮して漁べり楊の適正化が必要であろう。

A 操業隻数は35〜38隻の間にあるが、1隻当たり生産額はその他を除くと200万円前後にしかならない。
 経費率を考えると収益の低い漁業である。

B カレイ自体は価格上昇が大きく、市場対応上の問題は小さいといえるが、とにかく数量が少ない。

 (3) 課   題

@ ホタテ漁場の拡大、操業海域の遠隔化の下でこの漁業のメリットを何に求めるかである。 
 現在の水揚げ水準では、漁閉期の穴埋め的役割しか果たせないであろう。
 沖合い海域の利用を主体にした操業及び経営形態を考えるべきであろう。

A 刺網漁業の効率的なことは明らかであるが、魚種の選択性については不十分である。 
 底性魚を選択的に捕獲することの困難は大きいのであろうが、資源保全を目標にした漁業規制を行う場合避けて通れない。
 刺網における技術的改善が経営上余裕のあるうちに取り組む課題とするべきであろう。

B 資源増大をどのように図るかである。
 とくに、カレイについてはオホーツク沿岸一体のものとして総合的な管理ないし利用方式を考えていく手立てが必要である。
 ヒラメの種苗放流をオホーツク海にも広げてゆくことが計画されている段階でもあり、競合する他漁業との調整も含めた管理方式の開発が課題となろう。

表11 かれい刺網漁業の行使方法 (網海共第26号、33号第2種)

 使用できる漁船   20トン未満
使用できる漁具  網目91mm以上、掛目30目以内とする。
 海中に敷設する網の長さ6,000m以内とする。
操業期間  1月1日より12月31日まで
乗組員  制限なし
操業の制限  1、敷設した網には次の標識を設定する。
   上ーボンデン赤白、自分の目印
   下ーボンデン黒
 2、湧別地先海面の全海域の沖出し1マイル〜5マイル
   の海域は操業禁止とする。
 3、定置より3方に150m以上離れて操業する事。
 4、26号40隻以内  33号25隻以内
 5、その他制限を定める時,又は1部解除する場合は
    理事が定める。



6、 ホッキ貝・エゾバカ貝桁網漁業


 (1) 経過と現状

@ 調査事業としてホッキの生息が確認されたのは、昭和39年になってからである。
 41・42年に調査及び漁具改良を行い、43年から本格操業に移行した。
 このときの操業期間は7月16日から1231日で、3隻で操業した。
 40年から稚貝放流事業を実施し、町の補助金も支出されている。
 この事業は、40年に引き続き、42・46・49・50・51・61・62年に実施されている。
 57・58年に採苗試験が行われたが、成功には至っていない。
 また、57年から資源量調査に基づく許容量を決め、その範囲で操業している。
 ホッキの生産量は、53年まで多くて6〜7トンに止まっていたが、54年以降20トンから50トンに増加している。
 エゾバカ貝は数年おきに異常発生しているが、漁獲量基準は上昇傾向にある。
 生産金額については、価格の低下傾向の下で生産量程の増加はみられない。
 エゾバカ貝の生産金額は、異常発生年にはホッキ貝のそれを超え、価格も安定していて重要な位置を占めている。

A 操業期間は4/20〜5/20と8/1〜11/30、操業海域は沖出し1,500m以内の定置より算法に150m以上離れたところ、使用漁船5d未満、乗組員は原則2名である。
 使用漁具は桁網2台以内で,墳流式桁網の場合は1台以内である。
 この墳流式は、海底噴射のため定置網への汚泥の付着等が懸念されたが、試験の結果影響のないことが確認され58年からノルマ制の導入を条件に認められたものである。
 ホッキの総漁獲量規制は50トンで(現在は120トン)、殻長は8cm以上(現在は9cm)に制限されている。
 着業隻数は7隻以内(10隻)とされているが、54〜57年7隻、58・59年6隻、60〜63年5隻、そして平成元年6隻と資源量の変動に合わせて変化している。
 経営単位は2名以内の共同とされているので着業者数も隻数と共に変わる。
 また、操業日数は61年の68日から62年79日、63年87日と漁獲量の増加と共に増えている。

B 販売価格は、40年代には200円台から500円台へ上昇し、50年代前半には700円から1,000円を超えるまでに上昇した。
 しかし、50年代後半以降価格は低下を続け、600円台まで落ちている。
 札幌中央卸売市場における貝ホッキの価格は、50年代後半に入って月別変動の傾向が変化している。 
 すなわち入荷量の変動にもかかわらず価格変化が平坦になっていることである。
 かかる傾向は、ホッキ輸入量の増加や福嶋における「資源」 管理による出荷調整等全国的動向の影響という事が出来よう。
 55年以降の入荷量と価格との関係では右下がりの傾向が読み取れる。

 (2) 問題点

@ 62年以降漁獲量は安定している。 稚貝放流の効果がどの時点で表れるかであるが、放流数が増えた50・51年のものと57・58年の漁獲量増加との関連、61・62年の大量放流と次の漁獲量への影響が検証される必要がある。
 とくに、62年における放流事業費は2,000万円を超え、62年生産金額の40%にのぼり、対費用効果が問われるところである。

A 噴流式桁網は、桁を曳く時の抵抗が少なく,そのため壊れ貝がツメ式の時の5分の1〜10分の1に減少し、曳き網等の道具の耐用年数も格段に伸びたとされている。
 5隻操業・ホッキ漁獲量50トン水準では1隻当たり10トン、操業1日当たり600kg前後であるが、これにエゾバカ貝約1トン以上が加わるので桁の曳き揚げ作業は必ずしも楽ではない。
 後継者の見習い期間及びエゾバカ貝出荷機関には1名の増員を認めているが、若干労働力の確保が不可欠である。
 1人当たり生産額は500〜600万円を超え、収益性の高い漁業である。
 資源増大と着業希望者をどのように調整するかが問題となろう。

B 札幌市場における入荷量は、50年代前半に400トンから一挙に1,200トン台に増加し50年代後半も同水準で推移するが、60年代に入り再び増加にテンジ88年には1,500トン台になる。
 これは、北海道からの出荷は1,200トン前後で殆ど変わらないので、専ら道外の出荷増に基づいている(主に福島県)。
 同時に、60年代の価格は低下傾向をたどる結果となっている。
 かくして、生産量の少ない産地は、価格の全体的動向に対して受動的な地位に甘んじざるを得ない。
 価格を与件とした効率的な生産・販売対応を考える事が重要である。

 (3) 課   題

@ 資源培養と管理の徹底である。
 62年における稚貝放流海域は禁漁処置が取られている。
 これによる成果をどのように上げるかが今後の管理に大きく影響するであろう。
 ホタテ漁業は組合員の共同事業であるが、ホッキ貝漁業は個別漁業者による管理型漁業として外海における安定漁業に仕上げるべきである。
 他漁業からの間引きにも役立つ。

A 噴流式の導入効果は大きいが、桁網の操作レベルにおける省力化・効率技術の改善が課題であろう。
 また、ホタテ漁場との係わりでホッキ貝漁場をどのように確保し、管理するかである。
 管理について先進地に学ぶ事が必要である。

B 市場価格に対する影響力は小さいので、オホーツクものとしての品質における差別化、販売ルートの独自開拓による以外に価格形成における主体性を持つことはできない。
 生産が増大し、管理が徹底するなかでかかる課題が大きくなろう。

表12 ほっき・えぞばか貝漁業の制限及び規制
 

使用できる漁船 : 5d未満
使用できる漁具 : 桁網2台以内、但し噴流式桁網は1台以内
操業できる期間 : 4/20〜5/20 及び8/1〜11/30
乗組員の制限  : 2名以内
             但し、見習い期間20日間1名増員認める(報告)
             エゾバカ貝稚貝出荷期間1名増員認める
操業の制限
 経営体制    : 2名以上の共同経営
 採捕禁止    : ほっき殻長8cm未満
 漁獲制限    : ほっき総漁獲制限 50トン(現在は120トン)
 隻数制限    : 7隻以内 (現在は10隻)
 操業規制    : (1)定置より3方に150m以上離れて操業
             (2)A〜D海域の当年貝の放流区域は、当核区域の移植又は   
                漁獲終了まで操業禁止   



7、 ホタテ貝養殖業


 (1) 経過と現状

@ 養殖ホタテ貝の水揚げは、昭和46年から開始されている。
 生産量は、54年まで殆ど急勾配の増加を遂げたが、陸奥湾・噴火湾と続いた大量斃死がサロマ湖にも及び、59年には700トン台に落ちる。
 この段階で湖内全体の養殖許容枚数が決められ、湧別は1,190万枚とされている。
 しかし、現在のよう食料は、1,054万枚に止まっている。
 59年を底に生産は回復するが、40年代後半のような伸びは見られない。
 精算金額も生産量の増加と歩調を共にするが、50年代後半以降の価格の低迷で生産量程は増加していない。

A 漁場はサロマ湖養殖組合の管理下にあり、一応地先が当該漁協の漁場であるが、入会って利用している場所もある。
 養殖枚数は14万枚以上を養殖漁家としているが、許容枚数別漁家数は表14の通りである。
 経営体数は79、着業者数は83人、14万枚以上は45で、過半数を占めるに過ぎない。

B 50年代前半まではムキ身販売も行われていたが、価格の低下傾向に入ると共に出荷はなくなる。
 殆どが殻付出荷で、その価格変動は大きい。
 全国的な生産増加と外海ほたての増産によって養殖ホタテの価格も引き下げの方向に動く。
 しかし、これまでのところ地蒔き貝の場合は干し柱や玉の冷凍等の加工に向けられ、養殖ホタテの生出荷とは流通経路を異にしている。
 とはいえ養殖ホタテの価格水準から考えると競合がないということはできない。

 (2) 問題点

@ 湖内のホタテ養殖業はほぼ満度に近いといわれている。
 斃死率が高い所もあり、注意が喚起されている。
 漁場環境の変化とホタテの生育条件の点検が必要になっている。
 
A 養殖主業とされている14万枚以上漁家は45万戸に過ぎない。
 施設は錯綜し、効率的漁場利用とは言えない状況にある。
 また、最近における価格の低下によって生産金額を伸ばす事ができない。
 さらに、養殖業の経費率は高く,労働集約的な割りには経営効率は低い。
 こうしたなかで、生産金額の増加・規模拡大の要求があるが、そのためには限られた漁場の整理と効率的な利用が図られなければならない。
 それは、保有枚数と施設の再配分を必要とするが、漁業権行使の全体的見直しが前提となろう。
 もう一つは、ホタテ養殖業の作業過程が周年に亘り、労働投入量も多い事である。
 とくに、収益性を考える上で家族労働力を量と質の両面から評価する事が不可欠である。
 働きに見合った所得の保証が後継者確保の基本的条件である。

 (3) 課   題

@ 漁場環境に見合った養殖量の再検討が必要である。
 そのための基礎的調査と管理方式の見直しも同時に行うべきである。

A 個別経営の内実に即した養殖規模と施設配置の合理化が課題である。
 全体としては外海ホタテの配当があり、生活に不自由がないように見えるが、個々の生産者のレベルでは自らの経営に関する向上と改善が目指されているし、そうしなければならない。
 なぜなら、それを抜きに後継者の確保を始め地域漁業の将来を確保する事ができなくなるからである。
 養殖管理技術の向上、最小経費と高価格販売による経営の効率化、そして自然環境の維持が、個別経営における重要な課題となろう。

B 天然ホタテとの市場における競合問題がどこかで繋がり、関連をもってくる。
 低コスト・大量生産物である天然ホタテとの最終消費における差別化を常に念頭に置くことが、多労・多費用の養殖物の有利な販売に道を開く条件である。
 消費に視点を置いた生産は養殖においてこそ発揮されるべき課題である。

表13 ホタテ貝養殖の操業状況 

 経営対数   着業隻数   着業者数 
 昭和60年 79 79 84
 昭和61年 79 79 84
 昭和62年 78 78 83
 昭和63年 79 79 83
 平成元年  79 79 83

表14 ホタテ貝養殖許容枚数別漁家数

 2万枚以下       0
 3万枚以下      2
 4万枚以下      3
 5万枚以下      7   12  
 6万枚以下      6
 7万枚以下      2
 8万枚以下      2
 9万枚以下      2
10万枚以下      2   14
11万枚以下      8
12万枚以下      5
13万枚以下      1
14万枚以下      3   17
15万枚以下      9
16万枚以下      4
17万枚以下     32     45



8、 カキ養殖業


 (1) 経過と現状

@ 昭和26年から試験操業を開始し、28年には企業化した。
 40年には越冬試験に成功し、2年貝の生産が可能となった。
 生産量は、45年の181トンを最高にその後減少を続けて54年には50トンにまで落ちた。
 再び生産量が増加するのは59年以降で62年には171トンまで回復する。
 生産金額のピークは51年でこの年初めて1億円を突破した。
 その後生産量の減少と共に金額も減少する。 54年には金額でも最低で、その後増加にテンジ62年には1億6,000万円の水準である。

A 着業者数は84ないし85人でここ数年殆ど変化がない。
 種苗は仙台市のものを買い付け5月上旬にサロマ湖に到着する。
 5月下旬までに1本7枚の種カキ付きのホタテ貝殻をつけ、1基(100m)辺り30連(1連=10本)を垂下する。
 出荷は早いもので9月下旬、多くは10〜12月に集中する。
 また、冬期間の出荷が1月中旬から4月下旬まで続けられる。
 サロマ湖養殖漁協が決定した当地区の許容量は18,000連であり、操業上の協定は表15の通りである。

B カキの平均価格は、60年のs辺り1、200円をピークに低下傾向にある。
 出荷形態は一年貝と二年貝の剥き身そして殻付きで殆どを占めるに至っている。
 一年貝の剥き身が数量で60%以上、金額で85%以上を占めている。
 他方,殻付きは数量で40%近くにのぼるが、金額で13%近くに止まる。
 手間と時間をかけない回転の速い生産が志向されている。
 また、価格維持も目指した産地直送が61年11月から1ケース4kg”ふるさと小包”として郵便局を利用して試験的に始められた。
 62年には芭露かき出荷組合および湧別かき出荷組合が設立され、かき業者全体の取り組みとなる。

 (3) 問題点

@ サロマ湖におけるカキ養殖は拡大の余地はない。
 単位面積辺り生産額が低いことも他漁業の漁場まで潰して拡大しない理由であるが、それにもかかわらずこの漁業が残るのは労働の投入が他漁業と競合しないこと、すなわち剥き作業及び出荷が冬期間に集中している為である。
 最小の家族労働力で漁業を行おうとする場合少ない漁業種類を周年繋ぐ方が有利である。
 カキ養殖業者はこうした労働力構成の漁家か、冬以外の期間漁業をしない組合員によって営まれることになる。
 したがって、労働力投入の期間延長の意義は大きいが、漁場利用上では必ずしも効率的とはいえないのである。

A 着業者数の変化は少ないが、水揚げ金額の変動は大きい。 昭和59年に許容量が決まり18,000連の配分を受けて以降、この規制数量の変化はない。
 しかし、生産数量の変動は2倍にのぼる。
 60年に養殖施設の整理整頓が行われているから、これによって始めて許容量までの生産体制が作られたことになる。
 規模拡大の可能性は客観的にも主体的にも少ないが、170トン出荷体制における安定的な養殖技術の確立は重要である。

B カキの需給関係は、全国的に厳しい状況にある。 一般的な形態の製品は供給超過傾向にあり、価格は低水準で推移している。
 これに対する高価格販売の方法として一粒カキとか、産地名による製品の差別化とかが図られている。
 産地直送もその一形態であろう。
 生産コストの引き下げ努力とともに販売価格の引き上げ努力が一層大切である。

 (3) 課   題

@ とくにホタテ養殖業との漁場調整が課題であろう。
 湖内漁場が満度に利用されている現状の下で、価格低下とコスト増によりホタテ業者の規模拡大の希望は強い。
 しかし、カキ養殖を兼営している場合が多く、業者の内部問題でもある。
 周年の操業体制の確保の視点から考える事が重要であろう。

A 当地のカキが最北端のものである事を最大限生かした技術の確立ができないか、という点である。
 結氷期を有効に利用したカキ作り,製品差別化の追及である。
 少量生産のレベルで、家族労働力による小回りのきいた管理体系の模索の模索という課題である。

B 生産の冬期間への集中は、需要の季節性から解消するわけにはいかない。
 したがって、販売も一時的に集まる事になり、出荷量調整は難しい。
 湧別の最盛期における販売量は、札幌市場における取扱量を超えている。
 したがって、道内市場に分散するばかりでなく、新製品の開発、販路の開拓等が常に課題となる。
 販路を開拓するためにも産地銘柄の確立や殻付きカキの商品化の新たな工夫とかが大きな課題であろう。

9、 エビ籠漁業  


 (1) 経過と現状

@ ホッカイエビは船曳き網で漁獲されてきたが、資源保護を目的に昭和55年から籠漁法への転換が進められ、平成元年には船曳網漁法を禁止し、籠漁法に全面的に切り換えられた。
 この間、36・37年の禁漁、51〜55年までの稚エビの孵化・放流、51年から体長制限・出荷量制限が実施されてきた。
 資源調査に基づいてサロマ湖全体の教養漁獲量を決め、一人一日当たり出荷量に制限を加える方法を採用している。
 55年以降の生産量は40トン前後で安定しているということができる。
 最近では56年36トン、60年33トンと底があるが、漁獲量は4〜5年周期で変動しているようにみえる。
 生産金額は、価格上昇によって58年頃まで急増しているが、それ以降は停滞的である。

A この漁業はサロマ湖3単協の共有海面で、共通の行使規則に基づき、3単協エビ部会の規則及び協定によって操業されている。
 使用漁船は2トン程度で、イワシ・ウグイ等の餌を入れた籠を一昼夜湖に置き、エビを獲るとともに餌を取替え、再び投籠する。
 エビは直ちに生簀に入れられ、翌日塩水でゆであげ煮エビとして出荷される。
 着業者は40人で最近変わらない。
 34日の操業で1人当たり漁獲量は約1トン、金額は300万円前後である。
 操業規制及び出荷制限は表17の通りである。

B 野付半島のホッカイシマエビとともに道東の名物になっている。
 湖内の漁獲量はほぼ一定に維持されているので、価格水準は野付における漁獲量に左右される。
 近年野付けの漁獲減で価格は上昇傾向にある。
 特産・珍味的要素が強いといえよう。

 (2) 問題点

@ 3単協および試験場による資源調査が毎年行われ許容漁獲量が示されているが、58年から63年までのサロマ湖の漁獲量は132,103,83,101,98,102トンと変動している。
 これを不安定的とみるかはともかくとして、資源量のギリギリのところで漁獲されているのではないかという点は検討を要しよう。

A 操業1ヶ月歩度で00万円の水揚げがあることから、この漁業への着業希望は多い。
 資源量を考えると着業数の増加は不可能な状況にあるが、労働力構成、組み合わせ他漁業を考慮した承認方式を考える事もありえよう。

B この地区で最も高い価格の魚種である。
 特産品であることもあり、製品の質をいかに維持・向上するかにかかっているといえよう。
 製品化については、個々の業者で少しずつ異なっていて,バラツキがあるといわれている点をどう考えるかであろう。

 (3) 課  題

@ 資源維持から資源増大にむけた管理体制の確立である。
 この面は漁業管理が推奨されるなかで、殆ど成功していない分野である。
 湖内という閉鎖系である有利な条件と長い間の資源管理の経験を生かした技術開発の取り組みは、先駆的なものになろう。

A 船曳網から籠への転換によって重労働的側面は軽減されている。
 したがって、家族労働力が少ない場合、労働力が高齢化している場合の着業業種として位置づけられないかどうか、検討課題であろう。
 実績を考慮しつつも合理的な漁業権配置が考えられてしかるべきである。

B 加工・製品化について、業者間の協力体制の確立が必要であろう。
 先端にある個々の技術はされに改善されるべきであろうが、とくに技術の全体的底上げの為の体制作りが重要である。
 また、需要に応じた供給体制、とりわけ生産額を減少させないで価格水準に応じた出荷量の調整が業者全体として行われる体制を確立する事である。

表17 エビ籠漁業の制限及び規制

使用できる漁船 5d未満
操業期間 7/1〜8/31
海域 サロマ湖
乗組員の制限 3名以内
行使承認数 40隻












体長の制限 目より尾の付け根まで6cm未満は採捕禁止
日産制限 煮エビで30s以内
籠の制限 3組合で統一した籠
籠の網目 12節以内
籠の数 委員会決定 部会決定
7/1〜7/10  15籠以内 7/1〜7/15  15籠以内
7/11〜7/20  20籠以内 7/16〜7/28  20籠以内
7/21〜8/5  30籠以内 7/29〜8/5  25籠以内
生簣の使用  @ 使用数  15ヶ以内
 A 生簣1ヶのエビの収容量3s以内
取り決め事項  @ 日産制限を超過した場合は、超過分は組合で徴収する。
 A 操業方法及び悪質な違反の場合、全船操業禁止とする。
 B 小型定置網の身網、垣網より75m以上、養殖施設より
    50m以上離れて操業する事。
 C その他部会で協定、又は取り決めた事項。
 D 操業開始2日間は2回操業を認めるが、以降は1回操業とする
    但し、日産制限達成が不可能な時は3単協エビ部会に一任する。 
    


10、 ウニ桁網漁業


 (1) 経過と現状

@ 昭和30年から資源調査および試験操業を実施し、本格的な承認になったのは37年である。
 しかし、乱獲のため38〜43年を禁漁として、解禁された44年には無動力船1隻1名、八尺1台またはタモ網1本、ヤツデを義務採捕にした。
 そして、45年には水揚げされるウニの殻長4,5cm以上に制限した。
 しかし、またも47〜49年の間禁漁に追い込まれた。
 50年の解禁は45年までの条件のままであったが、52年には八尺を四尺、タモ網を2本、殻長5cm以上に変更し、操業期間を4月20日〜6月30日とした。
 その後、58年に動力巻きとし知事許可漁業になる。
 この年乗組員を2名以内とし、1日当たり生産量の制限が導入された。
 生産量は、禁漁・操業規制を加えられながら59年以降上向きの方向にあるといえよう。
 金額も生産量もほぼ同じ動きを示している。

A 操業上の規制は、漁船5d未満(新測度法の対象選は4、5d未満)、棹の長さ7m以内のタモ網2本以内,桁(桁幅132cm以内、桁重量65s以内) 1台、改良型桁網(四分チェーン 2本以内) の操業最終10日間義務化、操業期間4月20日〜6月15日の乗組員2名以内、殻長5cm以上、1日当たり生産量120s,ホタテ貝混獲不可、ウニの移植義務、そして前ぐりを巻き取る動力巻き・前ぐりの長さ200m以内としている。
 59〜62年の着業数31〜32隻62〜64人、1隻当たり操業日数27〜29日で、63年には26隻52人に減少するとともに操業日数は33日に増加している。

B 剥き見加工・生鮮出荷するためには許可を受けたか向上と雇用者の確保が必要で、他漁業における労働力確保を圧迫するため殻付きで販売している。
 価格は、61年以降上昇傾向にある。

 (2) 問題点

@ 資源量は趨勢的には増加しているが、安定した状態にはない。
 100トン以上の漁獲を維持するための方策をどのようにするかである。
 種苗採取,アマモ漁場保全のための操業方法の採用等資源維持・増大策が採られてきた。
 しかし、決定的な方策が見出されているわけではない。

A 1人あたりの生産額は、200万円強である。
 63年には隻数を減らし、操業日数を増加させることによって200万円の水準が維持できた。
 このように経営的にも不安定である。
 そして、乗組員2人による65sの桁網揚げは重労働とされて、体力のある若い時でないと水揚げはできない。
 この面をどのように改善するかも問題とされよう。

B 他漁業との組合せで営まれているので事業と同一の議論はできないが、殻付き販売がこのまま続くかは疑問である。
 この方向を見据えた処置がとられないと、桁網による従事するものの減少を招くか、資源維持への関心も希薄化するであろう。
 投入した労働力の量と質に応じた収益性の確保が販売を通しても図られなければならない。

 (3) 課  題

@ ウニはエビと並んでサロマ湖の根付き資源といえよう。
したがって、これら資源の変動は、サロマ湖の漁場条件の変化を反映するし、またこの湖の自然条件を保全する上での指標にもなる。
 これら資源の保存・培養についての根本的な位置づけを漁業者全体の課題とすべきであろう。

A 基幹的な着業者の確保と継承が重要である。
 一方で省力技術の導入による労働の軽減と他方で体力のある若い労働力に担われる体制をどのようにするかであろう。
 中心的漁業者の存在によって始めて資源・漁業条件の保全が図られることに留意すべきである。

B 生鮮市場の動向を系統的に把握できる体制が必要であろう。
 加工をするしないは別にして、殻付きで販売する上でも参考にすべきである。
 原料供給の側は、おうおうにして消費者の動向に疎くなる傾向をもつ。
 いま必要なのは消費者を頭においた生産であるとすると、敏感な生産者になるためには生鮮ウニの市場動向に常に注意を払わなければならない。
 このことで、この漁業はさらに活性化されるであろう。

表19 ウニ桁網漁業の制限及び規制
 

 5d未満(新測度法の対象船は4,5d未満とする)、さおの長さ7m以内、網2本以内、
桁の重量65s以内又改良型桁網(4分チェーン2本以内) の操業最終10日間義務化、
操業期間4月20日〜6月15日まで乗組員前ぐりを巻き取る動力巻きとし、前ぐりの長さ
は200m以内とする。

 つぶ、なまこの混獲を認め、資源増大を図る。


11, 湖内小定置網漁業


 (1) 経過と問題点

@ この漁業の生産量は100トン前後で変動しているが、数量の割りに最近における金額の伸びが大きい。
 魚種別にみるとキュウリ、コマイが減少し、サケ・マスの漁獲量が増加している。
 金額増加は、専らこのサケ・マスの増加による。
 湖内におけるサケの生産量は、86年から88年まで増加したが、89年にはそれ以前の水準に戻り、不安定である。
 それに較べてマスの湖内の生産量は増加傾向を辿っている。
 金額では、80年代後半における伸びが大きい。

A この漁業は現漁業法のチカ小型定置として出発し、39年に雑小定置に名称変更したが、48年の漁業権切り替えで現在の名称になった。
 この間、漁家経済安定のため行使期間を3年間に延長したり、サケ雑魚の放流期間の楊網が義務づけられたりしているが、48年の切り替えでほぼ現状の操業体制が確立した。
 漁具は1経営体1ヶ統、操業期間における河川放流中のサケ雑魚及び親魚の捕獲禁止、乗組員は3名以内、承認数は70ヶ統以内とした。
 そして、目合規制の強化と承認数の縮小を図りながら現在に至っている。

B 湖内におけるサケの価格は、河川に近くなっているので海面のものより安い。
 漁協段階の取り組みでみると最近その差が拡大傾向にあり、全国的なサケ生産の増大によるブナサケの価格形成上の不利が窺える。
 マスについては、サケよりも海と川の量が大きく、ここでも不利な位置にある。

 (2) 問題点

@ 漁業種類の名に該当する魚種の生産量の低下が著しい。
 これは、概にみた海面においても同様であるが、この漁業の安定の為には何らかの資源回復策が必要であろう。
 サケへの依存が高まっている事を捉えて、海の切り上げを早める等の処置をとり湖内への回遊増加を図る事も可能である。
 しかし、海面の漁業者との調整もあり、正常な方策とは考え難い。

A 1人当たり生産金額は多くて40万円弱と少ない。
 手間がかからない。
 好きな時に網上げができる、等がこの漁業の良さであろうが、漁業としての自立化にはほど。遠い
 魚場整理を行い、将来に向けた適正漁獲体制の確立が検討される必要がある。
 
B ブナに近いサケの販売については個別漁家の段階ではどうにもならない。
 どこでも同じであるが、漁協単位で何らかの加工あるいは売り先が考えられなければならない。
 サケを買い取った加工業者が工夫している場合もあるが、開発費の負担も大きく、リスクを全て転嫁するわけには行かないであろう。
 マスも同様である。

 (3) 課   題

@ チカ・キュウリ・コマイ当が回遊性であるとはいえ、湖内における再生産機構の解明が不可欠である。
 試験場との共同によるこの分野についての調査研究が急がれる課題である。

A 魚場利用の適正化が図られる必要がある。
 それは、錯綜・混乱しているからというのではなく、資源変動に対する対応として点検を要するという意味である。
 漁具・漁業規制・建て場等検討すべきであろう。

B 販売に関する対応は海面で指摘した事と同様である。
 とくに、湖内における魚の特性に海と差があるかどうか差別化の可能性は検討に値する。
 また、定置網であり、かつ刺網でも行われている事を考慮すると、活魚の出荷の可能性が追及される必要があろう。
 鮮度管理、製品技術等の高度化が期待される。

表22 湖内ちか・いかなご・こまい小型定置網漁業行使方法

 使用できる漁船   10トン未満
 使用できる漁具  1経営体1ヶ統 但し身網2個以内 
 操業できる期間  3月1日より12月31日まで
 但し、12月1日以降の操業は、組合で調整する。 
 操業できる海域  組合の魚場図
 乗組員の制限  3名以内
 操業の制限  1、稚魚放流期間中、網目の大きさ14節以上大きい 
   目合いとする。
 2、親魚確保における楊網規制期間中は操業を認めない。 
 3、46ヶ統以内とする。
 4、その他、別に取り決めた事項。



12、 湖内刺網漁業 (カレイ)


 (1) 経過と現状

@ 生産量は、ここ数年間の増加が著しい。
 金額でも順調に増加し、平成1年には61年の倍以上となった。
 数量ではカレイが大きな割合を占め、金額でも2分の1〜3分の1にのぼる。
 地区内における活魚販売に占める割合も高い。
 湖内における活魚出荷は、漁協取扱の大部分を占め、この分野では先駆的役割を果たしている。

A 昭和38年以降、操業隻数は40隻で変わらない。
 この間、日中の止め網禁止、養殖施設内操業の制限等があったが、現状は表24の通りである。
 1人当たり生産金額は、最近では200万円を超え、収益性の高い漁業となっている。

B 生産の大きな割合を占めるカレイ価格は、漁協全体の水準よりも高い。
 また、活魚価格は、カレイ価格より40%増し高く形成されている。
 取扱数量に限界があるようである。
 地区全体としては40トン前後で単価の低下を招いている。
 また、ナマコの価格上昇がみられるが、最近中国市場の引きが強く全国的に価格は上昇傾向にあるといわれ、単に産地の需給で決まるようではない。

 (2) 問題点

@ カレイについては、漁獲が増加傾向にあり、資源的に問題がないように見える。
 しかし、活魚についてみると、数年毎の変動を繰り返す傾向にあり、安定しているとはいいがたい。
 活魚と生鮮出荷の割合、捕獲技術等の検討から、効果的な資源利用が行われるべきであろう。

A 湖内刺網業者は,カキかホタテの養殖をしているので、ぎょば利用上の調整は自ら行う事になっている。
 この漁業で自立できるわけではないので、組合わせ漁業の選択が重要であるが、刺網漁業自体の採算性をどう高めるかは漁場の総合的利用の観点から考慮されるべきであろう。

B カレイは、資源減少で全道的に価格が上昇し、さらに活魚出荷志向が強まっているが、他方で活魚ブームがどこまで続くか考慮のうちに入れておくべきである。
 高価格販売は追求される必要はあるが、価格上昇に安住しない販売対応が求められる。

 (3) 課  題

@ 前の小型定置網漁業と同様に湖内を一つの形態として考えた資源維持・培養システムの確立が課題である。
 他漁協との連携と試験場の協力の下に体制作りを始めるべである。

A 資源動向に見合った操業体制の確立が必要である。
 それは、部会として操業隻数、操業反数,操業時間等を状況に応じて可変的に決めることができる体制である。

B 消費動向をかうりょした販売は、いつでも・どこでも不可欠である。
 同一魚種でも漁業が違えば生産物の品質にも差が出てくる。
 こうした差異を販売面でどのように生かしてゆくか検討課題である。
 質の問題がますます大きくなってこよう。

表24 湖内かれい刺網漁業行使方法

 使用できる漁船   5d未満
 使用できる漁具  1、海中に敷設する網の長さ2,500m以内。
   但し、1/1〜4/15の期間は、かれい氷下待網漁業に
   準じる。
 2、網目91mm以上。
 操業できる期間  1月1日から4月15日まで
 6月1日から10月20日まで
 乗組員の制限  4名以内
 操業の制限  1、隻数  40隻
 2、湖内小型定置建て込み中にあっては、身網・垣網より 
   75m、養殖施設より50m以上離れて操業する事。 
 3、結氷期の操業にあっては,燐網との間隔はいづれの
   方向でも75m以上離れて操業する事。
 4、養殖施設内での操業を禁止する。
 5、6月16日より10月20日の期間、日中の止め網を認める。 
 6、ボンデンの長さ水面より1,2m以上。 旗とコード番号を
   明記する。
 7、操業に当たり、組合と部会にて協議した事項。
 8、使用漁船は同時に2隻以上使用してはならない。
 9、その他、制限を定める場合、理事が別に定める。