漁家経営の状況

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漁業診断と営漁改善


1、 漁業権等の行使方法


 (1) 営まれる漁業種類

 当漁協の管理漁業権漁業としては、オホーツク海に設定される共同漁業が18、サロマ湖内では共同漁業が15、同湖内の区画漁業が1件ある。
 この外にさけ定置漁業権が6ヶ統(共同経営)、及び知事許可漁業となる毛ガニ籠漁業3ヶ統(共同経営)があり、免許可に基づく漁業種類は極めて多い。
 しかし、組合管理漁業権漁業のうち、実際に操業されている漁業は表1に示した20種類で,このうち主要な漁業は※印をつけた8漁業である。

 (2) 共同漁業権行使者の資格要件

 一般に、組合管理漁業権(共同・特定区画漁業権)の行使者は、漁業権行使規則によって定められているが、当組合においては、各漁業権ともに正組合員(年間120日以上漁業を営む者)に限られ、一般の行使規則に見られる資格要件(個人である正組合員 規模制限など)を充たし、かつ欠落要件(違反操業、法令違反など) に該当しないものとされている。

 ただ、当組合の場合、特定の主要漁業(着業希望者が多い)については、一般的資格要件に加えて、正組合員としての経過期間を加えており、例えば、ほたてがい漁業の場合、組合員資格を獲得した翌年から満8年経過したもの、ほっき・えぞばかがい漁業とサロマ湖のウに、えび漁業が同じく満7年、湖内のほたてがい養殖業が同5年とされている。
 しかも、申請者が漁業権ごとに決められる承認数を上回る場合、行使規則に基づき作られた漁業権行使方法書の制限基準によって行使者が決められることになっている。

 なお、当漁協の基幹漁業とされるほたてがい漁業については、その操業形態が、行使権者によって組織される[ほたて生産部会] (任意組合) が事業主体になり、4年ごとに漁場を替え、稚貝の大量放流と成貝を捕獲する、いわゆる四輪採制を採用していること、かつ各自の持分に応じた利益配当が行われる事などから、行使資格者=構成員の資格要件については、一定量の放流稚貝の拠出を義務づけるほか、特別の規定が設けられている。 行使規則によれば,前記の正組合員としての経過期間の外に、「満6年目より理事が定めたほたて貝採苗の生産をし、かつ放流したもの」 「この漁業を経営する、者と同一家族でないこと」が資格要件に加えられている。

表1 漁業種類別操業業績
 

      年      度     昭 和 61 年 度 昭 和 62 年 度 昭 和 63 年 度
      漁 業 種 類 経営
体数
着業隻数
 (者)
水揚数量
  (t)
水揚金額
 (千円)
経営
体数
着業隻数
 (者)
水揚数量
  (t)
水揚金額
 (千円)
経営
体数
着業隻数
 (者)
水揚数量
  (t)
水揚金額
 (千円)
知事許
可漁業
毛ガニ籠漁業
サンマ棒受網漁業
ちか機船船曳網漁業
3
15
-
3(15)
11(24)
-(-)
97
26
-
91,416
2,221
-
3
9
-
3(15)
9(17)
-(-)
119
0
-
152,668
0
-
3
8
-
3(15)
8(13
-(-)
122
-
-
172,347
-
-
定置
漁業
さけ定置網漁業 6 6(7) 481 193,907 2 4(27) 386 256,484 2 4(27) 505 339,337























ます小型定置網漁業 12 12(45) 262 67,134 12 12(45) 221 102,527 12 12(48) 364 177,821
は た て 貝 漁 業 10 10(181) 8,666
(37)
1,763,813
(261,554)
10 10(18) 15,121
(58)
3,842,694
(382,475)
12 12(180) 18,308
(186)
4,765,844
(459,362)
いわし・ます・にしん
小型定置網漁業

18

18(72)

1,647

59,353

12

12(45)

974

73,758
12 12(48) 1,016 57,478
いか、ほっけ、かれい
底 建 網 漁 業

26

26(70)

1,087

95,744

25

25(70)

1,607

96,899
24 24(69) 2,095 147,459
ほっき、えぞばか貝漁業
かれい刺網漁業
タ  コ  漁  業
にしん刺網漁業
5
36
18
5(10)
36(42)
18(25)
73
252
15
35,512
65,041
7,716
5
35
17
75
5(10)
35(39)
17(24)
75(83)
132
243
17
15
51,446

8,981
3,432
5
36
17
76
5(10)
36(36)
17(23)
76(80)
183
276
5
1
65,107
147,670
7,398
205






う  に  漁  業
ほ た て 漁 業
つ  ぶ  漁 業
31
40
0
16(63)
40(80)
0
235
90
0
161,155
22,323
0
16
0
0
16(62)
0(0)
0(0)
26
-
-
16(52)
-(-)
-(-)
67
-
-
118,919
-
-
ちか、いなご、こまい
小型定置網漁業

39

39(42)

122

9,502

41

41(46)

87

9,863

42
42(45) 81 16,647
にしん刺網漁業
かれい刺網漁業
ちか刺網漁業
かれい氷下待網漁業
え び  漁  業
100
40
100
92
40
100(110)
40(43)
100(115)
92(92)
40(40)
4
108
18
113
42
667
58,714
5,363
37,362
114,679
100
40
100
98
40
100(121)
40(43)
100(122)
98(98)
40(40)
5
119
24
70
40
941
83,400
7,085
27,922
138,832
100
40
100
95
40
100(107)
40(42)
100(118)
95(93)
40(40)
22
165
16
80
41
2,623
94,969
2,829
30,480
147,841
シブノ
ツナイ
し じ み が い 3 3(3) 1 419 5 5(5) 0,1 43 4 4(4) 0,1 7
 区  画
 漁  業
ほたて養殖漁業
ほたて養殖(稚貝)
か き 養 殖
79
142
85
79(84)
142(181)
85(85)
1,276
1,460
104
321,501
315,538
121,257
78
144
84
78(83)
144(180)
84(84)
1,103
1,879
171
278,119
405,266
160,747
79
154
84
79(83)
154(190)
84(84)
1,288
2,235
138
335,630
489,391
157,996
  合  計 960 941(1,478) 16,557 3,871,943 972 972(1,472) 22,770,1 6,359,601 988 980(1,430) 27,554,1 7,362,955

注)水揚げ金額が販売取扱と不適合なのは漁業でないサケ・マス事業協会捕獲親魚,及びヒトデ駆除混獲のつぶ等が除外されている為である


 (3) 漁業権の行使承認基準

 行使申請が承認数を超える場合、漁業権行使規則によれば、理事は申請者のその漁業に対する生計の依存度、経験の程度、違反、規則違反の有無などの事項を勘案した承認基準によって行使者を決めることになる。 だが、組合では、組合員の就業機会を均等化して漁業所得の平準化を図るため、毎年[共同漁業権行使方法書] を改訂し、別表のように、各組合員漁家の基幹漁業の収益性を勘案して営む事ができる漁業を限定している。 例えば、サケ定置漁業を営む場合は、うに漁業と湖内刺網漁業のみが操業可能でその他表示×印の漁業には着業できない、また、毛ガニ籠漁業を営む者は,湖内チカ刺網、湖内小型定置漁業のみが操業可能となっている。

 しかも、このような方法によってもなお申請者が承認数を超過する場合には、下記の漁業別持点数表により申請者の持点数の合計を算出して、合計点が下位のものより順次定数まで承認する事にしている。 これが、いわゆる [点数制] といわれる承認基準である。

表2 営む漁業種別の制限漁業種類

 操業できない漁業 う  に

漁  業
湖  内
かれい
刺網漁業
湖  内
ち  か
刺網漁業
蝦漁業 ほっき貝
えぞばか
貝 漁業
湖  内
小型定置
網 漁業
  営 む 漁 業
サ ケ 定 置 網 漁 業 × × × ×
ます小型定置網漁業 × × × ×
外海かれい刺網漁業 ×
毛 が に 籠 漁 業 × × × ×
  ホタテ養殖漁業
(規制量14,000枚以上)
× ×
  蝦  漁  業 × × ×
 う に 漁 業 × ×
ほっき貝・えぞばか貝
漁業
× ×


表3 平成3年度共同漁業権等行使承認審査書

漁業種類 区    分 点数 勘案事項










さけ大定置 1ヶ統当たり 50
さけ小定置 1ヶ統当たり 20
ます定置 1ヶ統当たり 6
かれい刺網 1隻当たり 6 操業日数が平均値を超えるもの  −3点
たこ函漁業 1隻当たり 1
毛がに籠 1隻当たり 50
底 建 網 1ヶ統当たり 2
ほっき貝
えぞばか貝
1隻当たり 20 平均出漁日数の60%以上のもの −10点
さんま棒受網 1隻当たり 1







かれい刺網 1隻当たり 4 操業日数が平均値を超えるもの  −2点
小型定置 1ヶ統当たり 1
えび籠 1隻当たり 10 前年度行使実績者          −5点
     (平均出漁日数80%以上のもの)
つぶ籠 1隻当たり 1
うに桁網 1隻当たり 28
ほたて貝漁業 1隻当たり 0
かき養殖 別   紙 別紙
ほたて養殖 別   紙 別紙


2、漁家の営漁タイプ別経営状況

 現在の漁家の営漁タイプ(漁家の組み合わせ)は、漁業権行使方法書による行使制限と点数制によって幾つかのタイプに区別されるが、個々では、漁業所得が最も大きい漁業を機関漁業として類型化し、タイプ別漁家の漁業所得額と漁業別所得構成について考察する。

 (1) 営む漁業種類と所得構

  1) さけ大型定置タイプ
     
     このタイプに属する漁家は12戸で、さけ大型定置(2ヶ統)とます小型定置(4ヶ統)、及び底建網漁業についても、各人の持分に応じて配分されており,各漁家共に、さけて位置の比重が最も高く、漁業所得の79%(平均)を占めている。

     このグループの漁業所得額は、最高が2,091万9000円、最低が1039万5000円、平均漁業所得額は1602万2000円となり、他グループに比較して最も大きい。 このうち、持分の大きい漁家(6)の所得額は2000万円台で、さけ定置の依存度は81%、のこり19%がます小型定置、底建網漁業によっている。  持分の少ない漁家(6)では、所得額は1000万円の水準にあり、このうち4戸が、ほたて、かき養殖、うに桁曳漁業などの湖内漁業に従事し、漁業所得に占めるさけ定置の割合は、54〜67%。  1戸が毛がに籠漁業の共同経営に参加し、さけ定置の所得は51%を占めている。

  2) さけ小型定置タイプ

     このタイプに属するものは6戸、さけ小型定置(2ヶ統)、ます小型定置、底建網漁業などの共同経営に参加しこれら漁業の共同経営による配当が漁業所得の主要部分をなしている。  平均所得は549万8000円で、その60%がさけ定置によるもので、ます小型定置が22%、底建網が11%をしめている。 このグループの所得格差は小さく、最高853万3000円を上げる漁家が1戸あり、上記共同経営の外、うに桁曳、その他湖内漁業にも従事し、共同経営の配当が漁業所得の69%になるが、その他のものは、外海かれい刺網漁業に2戸、湖内漁業に2戸従事しているものの、いずれも漁業所得の大部分は共同経営の配当である。

  3) 毛がに籠タイプ

     このタイプに属する漁家は14戸あり、三つの経営体の共同経営に参加している。 各漁家共に毛がに籠漁業が主業となり,その配当額は平均570万円で漁業所得の60%を占め、平均漁業所得は、943万4000円で、さけ大型定置タイプに次いで高い。  このタイプの漁家は、さらに、さけ小型定置、ます小型定置、底建網などの外海漁業を兼業するタイプ(12戸) と、ほたて、かき養殖、その他湖内漁業に従事するタイプ(3戸)に分けられるが、外海漁業兼営タイプは、殆どのものが1000万円前後の所得をあげているのに対し、湖ない漁業を兼営するタイプでは500〜600万円の水準に止まっている。

  4) 外海かれいタイプ

     外海かれい刺網漁業を営むものは33戸あるが、この漁業を主業とする漁家は4戸である。 平均漁業所得は46万9000円と極端に少なく、このうち、2戸がかれい刺網専業で39万8000円、2戸はその他の外海漁業に従事して54万円の所得をうるに止まっている。

  5) ホタテ養殖タイプ

     このタイプの漁家は、ほたての養殖規模が14〜17万個(45戸) で、ほたて養殖を中心に、かき養殖、うに桁などの湖内漁業や、底建網、外海刺網を兼営していおり、ホタテ養殖の所得が最も大きいウェイトをしめている。 このタイプの漁家の組み合わせをみると、@ほたて+かき+うに(11戸) Aほたて+うに(17戸) Bほたて+かき(6戸)、 Cほたてのみ(11戸)、 の四つのタイプに区別される。 このタイプには、14万個以下のDほたて+かき(2戸) Eほたてのみ(5戸) を付け加えた。

     所得構成を見ると、14万個以上では、ホタテ養殖の所得額が200〜300万円で、総所得額の50%以上を占めているが、ほたて+かき養殖のBグループが605万2000円で最も高額で、次いで、ほたて+かき+うに桁の@グループが562万7000円、ほたて+うに桁のAグループが402万8000円となり、ほたてのみのCグループが279万円で他のグループと比較して低額であるのが目立っている。

     14万個以下(7戸)では、平均所得額は213万4000円で、ホタテ養殖は59%、かき養殖が10%,その他湖内漁業が31%になり、湖内かれい刺網、同小型定置を営む漁家(2戸)では、369万7000円であるが、残りの6戸は、湖内刺網(3戸)同小型定置(1戸)などの湖内漁業に従事しているが、これらの漁業所得は127万1000円である。

  6) ます小型定置タイプ

     このタイプは、ます小型定置を中心に底建網、外海かれい刺網などを兼営する16戸の漁家を含み、このうち上記三つの漁業を兼営するものが6戸、ます小型定置と底建網が5戸、ます小型定置とかれい刺網が3戸、ます小型定置と書き養殖などの湖内漁業に従事するものが3戸ある。 漁業所得額は平均443万6000円で、最高が725万9000円、最低が311万9000円になるが、漁業別ではます小型定置が65,6%、底建網が16,8%、かれい刺網が4%で外海漁業が87,9%、かき養殖などの湖内漁業は12,1%をしめている。

  7) ほっき桁網タイプ

     このタイプは、ほっき桁網を主業とするもの(10戸) で、かれい刺網、底建網などの外海漁業を兼営している。 平均所得額は456万8000円で、最高が550万6000円、最低が380万6000円になっている。 このうちほっき桁網漁業が88%、外海漁業の所得が94,5%を占めている。 漁業の組合わせをみると、ほっき桁網、底建網を兼営するもの(4戸)が510万円で,外海かれいと湖内漁業を組合わせたもの(3戸)が485万円、湖内漁業を営むもの(3戸)が390万円になっている。

  8) えび篭タイプ

     このタイプに属する漁家は40戸で、えび篭漁業の外、かき養殖、ほたて養殖、及び湖内漁業に従事している。 平均所得額は473万7000円で最高が707万6000円、最低が279万円であるが、各漁家の所得額は400〜500万円の水準にあり、えび篭漁業に対する依存度は61%である。 漁業の組み合わせでは、@かき養殖との組み合わせが最も多くで21戸、うち9戸は湖内華麗刺し網漁業に従事し、Aほたて、かき養殖を兼営するものが10戸、Bホタテ養殖に従事するもの3戸、Cえび篭のみが6戸になっている。 これらグループのうち、@〜Bのグループは500万円前後の漁業所得をあげているが、C〜Dのグループ300万円にとどまっている。

  9) うに桁タイプ

     このタイプの漁家は17戸で、うに桁、ほたて、かき養殖、その他の湖内漁業に従事するほか、かれい刺網、底建網漁業などの外海漁業にも従事している。  平均漁業所得は366万円で、最高が733万円、最低が182万円であるが、ほぼ300〜400万円の所得をあげている。 漁業の組み合わせでは、@かき養殖に従事するもの7戸、Aほたて養殖に従事するもの6戸、Bかき養殖が2戸であり、その所得額は@Aのグループで480万円台、Bのグループは350万円台になっている。

 10) かき養殖タイプ

     このタイプの漁家は6戸あり、ホタテ養殖に従事するもの4戸、このうち湖内刺網、同小型定置を営むものが戸、底建網を営むものが1戸、かき養殖と湖内かれい刺網を営むものが2戸である。 平均漁業所得は419万8000円。 開港が底建網を兼営する漁家で720万円、最低はかれい刺網を営む漁家の120万円である。

 11) ホタテ乗組員タイプ

     外海ほたて漁業に従事する漁船乗組員(12) がこのタイプに属し、底建網、ます小型定置などの外海漁業のみに従事するものが2人、その他は、主にかき養殖などの湖内漁業に従事している。 ほたて乗組員の賃金は740万円〜750万円のものが8人、600万円台が1人、500万円台が3人であり、漁業所得は平均115万2000円で、かき養殖が39%、その他湖内漁業を含めて52%、外海漁業が48%を占めているが、ます小型定置、底建網漁業に従事する2人のみで、その他のものは専ら湖内漁業に従事している。

 (2) 漁業従事者      


 組合員全体の平均年齢は53才であるが、タイプ別漁家の平均年齢は、乗組員タイプが最も若くて39才、次いでかき養殖が46才、湖内かれい刺網が46才、えび篭が52才、うに桁が57才、ほたて養殖、さけ定置大が55才、ます小型定置が56才、さけ定置小、ほっき桁が57才、外海かれいが58才、毛がに篭が59才である。

 これを年齢別にみると,20才代が2人(1%)、30才代が23人(11,8%)、40才代が41人(21%)、50才代が70人(35,9%)、60才以上が59人(30,2%)となり、50才以上の者が66%を占め、全体として高齢化の傾向が顕著である。 しかし、50才代では、59%、60才代では71%が後継者を持つ二世代漁業従事者世帯である。

 タイプ別では、かき養殖、湖内かれい刺網、乗組員タイプのものには50才未満のものが多く、その他のタイプでは、いずれも50才以上の高齢者が多いがホタテ養殖を営む、ほたて養殖、えび篭、うに桁タイプでは50才未満ものが多く、かつ二世代漁業従事世帯も多い。


 (3) 漁船所有

  タイプ別の漁家の所有漁船数は、サケ大定置タイプでは平均2,6隻、総トン数は19,98トンになり、10〜20トンクラスの漁船を所有するものが5戸、うち3隻所有と2隻所有が各1戸。 
5〜10トンクラスが1戸、3〜5トンんp漁船を所有するものが2戸。
3トン未満の漁船所有が6戸。
うち8隻所有が1戸、2隻所有が3、漁船なしが3戸ある。

 さけ小定置タイプの漁船所有数は平均2,3隻で、総トン数は9,98トンであるが、10トンクラスの漁船を所有するもの2戸、3〜5トンの漁船を所有するものが2戸、3トン未満が5戸、漁船なしが1戸あり、これらの中には4隻の漁船を所有するものが3戸ある。

 毛がに篭タイプの漁船所有隻数は平均3隻、総トン数は19,20トンで、10〜20トンクラスを所有するものが4戸、うち3隻と2隻所有が各1戸あり、5〜10トンくらすが4戸、3〜5トンクラスが5戸、うち3隻が1戸、3トン未満が5戸、うち4隻と3隻及び2隻所有が各1戸、1隻所有が2戸あり、漁船なしが4戸ある。

 外海かれいタイプの平均漁船数は2隻、総トン数は7,79トンである。
5〜10トンの漁船を所有するもの1戸、3〜5トンが4戸、外に各戸ともに2トンクラスの漁船を所有している。

 ホタテ養殖タイプでは、一漁家当たりの漁船所有隻数が3,1隻、総トン数は8,1トンであり、5〜10トンクラスの漁船を持つものが5戸、3〜5トンクラスが24戸、残り15戸は2〜3トンクラスの漁船を所有し、このほかに3トン未満の漁船を各戸が所有している。

 ます小型定置タイプの漁船所有隻数は平均2,3隻、総トン数は11,3トンであり、規模別では10〜15トンの漁船を持つものが1戸、5〜10トンが3戸、3〜5トンが6戸、3トン未満が4戸、漁船なしが2戸となっている。

 ほっき桁網タイプの一漁家当たり漁船数は2,4隻であり、平均総トン数は8,48トンであり、規模別では、5〜10トンの漁船を所有するものが1戸、3〜5トンが8戸、3トン未満が1戸ある。

 えび篭タイプでは、一漁家当たりの漁船数は2,7隻、平均総トン数は5,3トンであり、漁船規模では、3〜5トンの漁船を所有するものが13戸、残り27戸は3トン未満の漁船を所有しており、このほか大多数の漁家が1〜2トンの漁船を数隻所有している。

 うに桁タイプの漁船数は2,8隻,平均総トン数は8,33トンである、規模別の漁船の所有状況を見ると、5〜10トンの漁船をもつものが3戸、3〜5トンが7戸、3〜5トンが6戸で、5〜10トンの所有漁家では上記漁船のほか、3〜5トン、3トン未満の漁船を3隻、ないしは4隻所有している。

 かき養殖タイプの漁船数は3,3隻、総トン数は6,94トンである。
規模別では、3〜5トンが2戸、3トン未満が3戸、漁船なしが1戸である。
3〜5トン、3トン未満では、外に3〜4隻、及び2隻の漁船を持っている。

 ホタテ乗組員タイプでは、漁船なしが4戸あるが、平均漁船数は1,6隻、総トン数は8,29トンである。
このうち、10〜15トンの漁船をもつものが3戸、3〜5トンが2戸、3トン未満が2戸である。

 (4) 問題点

@ 基幹漁業であるさけ定置(さけ定大・小グループ)の漁業収支は

大定置の場合、昭和63年には水揚げ高も増加して、総収入は3億1500万円となり、1億9300万円の利益を上げている。
しかし、平成元年には水揚げ高が半減し、利益も著しく減少し、水揚げ高の増減が収益性に大きく影響している。
 
 この地区におけるさけ定置漁業は、漁場の整理統合による経費の節減で収益性は向上したものの、漁獲量の増減と魚価の変動に大きく左右されており、販売面でも、輸入さけとの競合、国内生産量の増加に伴う供給過剰などにより、価格は低迷の状態にある。
 こうした状況の下でさけ定置漁業によって安定した所得を確保する為には、経営改善と合理化の方策が求められるが、漁業経費の37%を占めている人件費の所得化、すなわち共同経営参加者の漁業従事を考慮する必要があるのではなかろうか。

 さけ小型定置の63年度の水揚げ高は、漁獲量の増加により、前年に比べて6%増の1億1200万円になり、所得額も5470万円と前年を上回っているが、大定置の場合と同様、水揚げ高の増減が収益性に直接影響しており、大定置と同様、経営の改善、合理化が求められよう。

A 外海かれい刺網漁業の標準収支を見ると

収入は816万円であるが、支出が843万円で所得額は43万7000円となり、その収益性は5%と著しく低い。
これは、主に水揚げ高の伸び悩みによるものとみられるが、漁業経費が課題であることーーー特に人件費と減価償却費が多額である事ーーーにも起因するとみられる。
 まず収入についてみると、総収入は886万7000円で、このうち水揚げ高は816万円で漁業収入のみでは赤字となり、雑収入を加えて辛うじて黒字になっている。
 また水揚げ高をみると、主な漁獲対象であるカレイの水揚げ高は67%、その他が28%となり、その他魚種の混獲なしでは完全な採算割れの状況にある。

 このような状況の改善を図るため、第一にカレイの資源保全と回復と一隻当たりの漁獲量の増加を図るための操業隻数の削減を検討すること、第二に漁獲物の付加価値を高めるための販売方法の改善 (活魚販売など) を考慮すること、第三に漁業経費の中で大きな比重を占めている減価償却費と人件費の節減を図る必要があろう。

B ほたて養殖タイプの漁家は

組合わせによる漁業種類と割当養殖枚数によって6グループに分けられ、下記養殖、うに桁を営む魚価の漁業所得水準が高くなっている。
これを割当枚数別にみると、うに桁を営むものは最高限度枚数17万個の漁家に多いが、割当枚数別のほたて養殖額をみると、最高限度の割当枚数をもちながら、限度一杯の生産を上げていない漁家が少なからず見受けられる。
 例えば割当枚数17万個の魚価のほたて養殖の所得額をみると、100〜150万円が1戸、150〜200万円が3戸、200〜250万円5戸、300〜350万円4戸、350〜400万円が1戸となり、15〜16万個のものと同水準にある漁家が少なくない。
 漁場の有効活用を図る意味で、割当枚数の枠内で漁業所得の向上を図る一方、養殖許容量の範囲で規模拡大を図り、ほたて養殖を主業とする魚価の自立しうる条件を検討する必要があろう。

C えび篭、うに桁漁業は

14万個以上のホタテ養殖業に比較して投下資本、投下労働力が少なく、所得率も高く着業者が多いようである。
 これらのタイプの多くは、ほたて、かき養殖を営んでいるが、先のほたて養殖タイプとともに、魚価の所有漁船と設備、家族労働力構成などを考慮して、これらの漁業を配分すべきではないだろうか。


3、 共同漁業権行使方法についての所見 


 (1) 点数制について


 組合員の自主的計画に基づき就業機会の均等化によって漁家所得の均衡を図ろうとする現行の点数制は、各自の能力と意欲に応じて営む漁業を配分するという点で優れた方法ということができる。
 組合員のアンケート調査の結果においても、大多数の組合員が点数制を支持していることが窺われる。
 また、点数制によって配分された漁業実績に基づく漁家の漁業所得額をみても、免許、許可漁業を営む漁家を除き、大部分の漁家の漁業所得は400〜500万円の範囲で平準化されている。
 しかし、アンケートの回答にも見られるように、 「一部不適当である」 「一部のものに利益が片寄る」 という意見も少なからずあり、実績調査の結果でも、個別的には漁業の組み合わせによる所得のアンバランスがみられ、漁業別点数の見直しが必要である。
 以下このことに関する検討事項を列記する。

@ 点数制が、就業機会の均等化を図るために採用された方法であるにしても、その目的が漁家所得の均衡を図ることにあるから、この点では、その基準として、漁家の漁業所得を構成する漁業別の所得額、ないしは各漁業の投下資本(使用漁船と漁具,遊設装備) 投下労働量(操業日数と時間、従事者数) に見合った所得額があげられる。
 しかし、実際には、各漁家の操業体制(漁船、装備、養殖施設台数、労働力等) によって、操業パターン(漁業の組み合わせ、就業日数) が異なるので、点数の基準を画一的に定めることは極めて難しい問題である。
 漁家所得額を基準にして漁業別の点数を定めるとした場合、実績に基づき、一定の所得額(家計費) を実現できるタイプ別漁家の標準的(適正)経営モデルをつくり、その漁業収支と所得額に基づき、漁業別の配点を行うのが妥当であろう。
 ただし、対象とする資源や魚価の変動を考慮すると、漁業別の点数は概ね5年毎に見直す必要があろう。

A 当組合では、現在のところ後継者難、あるいは労働力不足といった問題はそれ程深刻ではないようにみうけられる。
 しかし、現在、漁業の主な担い手となる昭和一桁代の漁業従事者の大幅な減少が予測され、かつ資源管理型漁業の推進と経営改善を図るうえで、後継者を養成し確保することはこの地区の場合も極めて重要な問題と思われる。
 このため後継者の漁業に対する生産意欲を高め、かつ漁家の経営・生活の安定を図る一つの方法として、親子二代が漁業に従事する漁家の就業機会についての優遇処置を検討してもよいのではなかろうか。

B 現在の漁家の営漁形態は、多数漁業の組合わせにより漁業が細分化されているため、漁業経費が割高になり各漁業の所得額も少ない。
 資源管理の実効性を高めることや、漁場の有効利用、操業の合理化と漁業経費の節減を図る意味で、漁家の営漁条件 (労働力、漁船、立地) を考慮した専業化の方向を検討することが必要である。 

(例えば、さけ定置、かに篭漁業の免許、許可グループ、カレイ刺網、底建網、ほっき桁曳等の外海漁船漁業グループ、湖内のほたて、かき養殖グループ、えび篭、うに桁曳、その他の湖内漁業グループ)

C 現行の漁業権行使方法書によれば、外海カレイ刺網漁業は、基幹漁業とされている。
 しかし、着業者の水揚げ金額を見ると1000万円前後のものから数10万円に止まる者まで存在し、実際に利益を確保している経営は少ないようにみられる。
 全般的にカレイ資源が減少傾向にある現状の下では、資源量に見合った承認隻数の見直しと操業日数が著しく少ない漁家の配点を考慮する必要があろう。

D 底建網漁業の所得率は20%と極めて低い水準にあるが,一経営体の承認統数の見直しと実質的共同化の実現 (名目共同の禁止) を図り、その配分についても検討する必要がある。

E 前述のように、ほたて養殖において配分された割当量にたいして、その生産額が平均水準を大幅に下回るものがみうけられるが、過去数年間の生産実績を考慮して、一定水準以上の生産額を上げたものの実績を評価し,例えば、実績点数を設けて漁場の有効利用を図るべきではないだろうか。

F 免許、許可漁業としてさけ定置漁業と毛がに篭漁業は、現行制度の下では漁協の漁業権管理の枠外にあり漁連の漁業権管理に基づく組合員の新規参入は不可能になっている。
 一方、現在のさけ定置漁業経営は、前述のように必ずしも安定した状態にないことも事実であるが、他の営漁タイプのものに比較してその所得は高くなっている。
 こうしたことを考慮すると、これらのタイプの漁家の共同漁業権の行使については再検討の余地があろう。