コンサート2009

ごあいさつ

余市室内楽協会 代表  牧野 時夫


                            本日は、余市室内楽協会のコンサートにご来場下さり、まことにありがとうございます。余市室内楽協会(1988設立)の代表(1999〜)を務める牧野は、1994年に北海道農民管弦楽団(通称:農民オケ)を設立し、その代表も務めています。そして余市室内楽協会のメンバーの多くも、冬期間限定で全道からメンバーが集まり道内各地で演奏活動を行っている農民オケにも参加して、音楽を楽しんでおります。そして、農民オケでは、本年2月に初の海外公演となるデンマーク演奏旅行を行い、当団の団員も多数この海外公演に参加いたしました。それをきっかけに、農民オケに参加しておりますホルン奏者の助乗慎一氏(旭川市在住)が、余市室内楽協会コンサートにおいてホルン協奏曲の独奏者として演奏してくださることになり、さらには無理をお願いしてホルンを含む室内楽曲と交響曲の奏者としても参加してくださることになりました。遠方より何度も練習にかけつけて、我々の演奏会に華を与えてくださったことを感謝申し上げます。
 このような小さな町で、室内オーケストラを有して継続した演奏活動を行っているところは、北海道でも他にはありませんし、全国でも珍しいのではないかと思います。願わくば、生の楽器の演奏に適した、もっと音響の良い会場があれば、さらに充実した音を皆様に楽しんでいただけることと思いますが、贅沢ばかりは申せません。我々も教育委員会等から後援をいただいて、毎年会場費免除にて無料コンサートを開催させていただいていますことを、深く感謝する次第です。ぜひ皆様にも、今後とも我々の活動をご支援いただければ幸いに存じます。

  

演奏曲目

1. ドップラー/ノクチュルヌ(夜想曲)
  ★ フルート   瀧谷まゆみ
★ ヴァイオリン 牧野時夫
★ ホルン   助乗慎一
          ★ ピアノ   安河内真樹

2. モーツァルト/セレナーデ第6番 「セレナータ・ノットゥルノ」
          第1楽章 行進曲 マエストーソ 
          第2楽章 メヌエット
          第3楽章 ロンド アレグレット
          ★ ヴァイオリン独奏 牧野 時夫、嶋田 宏
★ チェロ独奏 山川雅裕、 ★ティンパニ 高嶋孝寛

            ―――― 休憩 10分 ――――

3. ハイドン/ホルン協奏曲 第2番 ニ長調
        第1楽章 アレグロ・モデラート
          第2楽章 アダージォ
          第3楽章 アレグロ
            ★ ホルン独奏  助乗 慎一

4.ハイドン/交響曲第7番 「昼」
      第1楽章 アダージォ〜アレグロ
       第2楽章 レチタチーヴォ〜アレグロ
       第3楽章 メヌエット
       第4楽章 フィナーレ
★ ヴァイオリン独奏 牧野 時夫
★ チェロ独奏    山川 雅裕
           ★ コントラバス独奏 荒木 雅幸

曲 目 解 説

1. フランツ・ドップラー(1821〜1883)
ノクチュルヌ(夜想曲)作品19

  ドップラーはオーストリアに暮らしたハンガリー人の作曲家だが、名フルート奏者でもあった。ハンガリー風のフルートのための作品が多数残されているが、ウィーン宮廷歌劇場の首席指揮者まで登りつめ、生前はオペラやバレエなどの作曲家として有名だったらしい。また弟カールと、カールの息子アールパードも、フルートの名手で作曲家であった。彼の作品中には、ノクチュルヌ(夜想曲)という題の曲が、少なくとも2曲残されているが、1曲(作品17)は、ピアノ伴奏によるフルートの独奏曲であり。もう1曲(作品19)が、今回演奏するフルート、ヴァイオリン、ホルン(またはチェロ)、ピアノという珍しい楽器の組み合わせによるアンサンブルの小品である。ホルンの代わりにチェロで演奏することも可とされているが、チェロよりもホルンの方がダイナミックな感じがする。
昨年当団の山川氏のチェロと、他は全く同じメンバーでこの曲を演奏する機会があったが、せっかくホルンの名手に来ていただけるので、無理をお願いして、この珍しい編成の室内楽曲を、オリジナルの楽器編成で皆様に聴いていただくことにした。実は4名での練習が前もって1回しかできなかったので少々不安があるものの、何とか音色的にも音楽的にも非常に変化の富んだこの佳曲を皆様に楽しんでいただければと思う。

2.ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
(1756〜1791)セレナーデ第6番 ニ長調 「セレナータ・ノットゥルナ」K239(1776)

モールァルトはセレナーデを13曲残しているが、これは「セレナード音楽の年」というべき1776年の1月に書かれ、他に第2番、第7番「ハフナー」、第8番「ノットルノ」もこの年に作曲されているようだ。セレナーデは、主に野外で演奏することを想定した多楽章からなる合奏曲であるが、この曲はモーツァルトのセレナーデの中では最も規模が小さい。「ノットゥルナ」の表題は父レオポルト・モーツァルト が息子の自筆譜に記したもので、音楽的意味は明らかでないがモーツァルト自身は複数のオーケストラ群を用いた音楽をこう呼んでいたという。実際この作品はティンパニ 付きの2群の弦楽アンサンブル のためのもので、それぞれのグループは独奏群と合奏群の役割を担っている(これはバロックの合奏協奏曲 を思わせる)。作品の成立の機会は不明だが、管楽器 を省き、しかも1月の冬場に書かれていることから、室内で演奏されたものとも考えられる。しかし、野外で演奏される通常のセレナーデが、楽士の入場と退場のために行進曲をつけている通例に従って、第1楽章は行進曲で書かれている。
 2台のヴァイオリンの独奏を伴う弦楽合奏とティンパニという、面白い編成の楽曲であるが、短いながら変化に富んだ楽しい曲であり、当協会では15年くらい前にも演奏したことがある。

3.フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732〜1809)
 ホルン協奏曲第2番 二長調 (1761〜1762?)

 ハイドンはホルン独奏を伴う作品として、ホルン協奏曲第1番と第2番、2本のホルンの為の協奏曲の計3つを残している。第1番は、エステルハージ侯の楽団でホルン奏者を務めていたタデウス・シュタインミュラーのために作曲された。(今回演奏する第2番も含めヨーゼフ・ハイドンではなく弟のミヒャエル・ハイドンの筆ではないかと言われているが憶測の域を出ない)
しかし、真偽が確かなはずの第1番も近年の研究では、客演に来ていたロイドゲープ(モーツァルトの親友、悪友?でホルン奏者、4つの協奏曲を献呈された人物)の為に捧げられたのではないかと言う説も出てきている。 謎が多いハイドンのホルン作品だが、この曲も決してハイドンの名を辱めるものではない。ホルン独奏と弦楽合奏との対話、第1、3楽章の快活なリズムやと躍動感、そしてロ短調に転じた第2楽章のアダージョが白眉。メランミリックな色彩が印象深く、自然倍音列による音とハンドストップ奏法に依存していた当時のホルンに対して無理のない美しい旋律に仕上がっている。どこか栄枯盛衰、貴族の煌びやかで典雅な様子とは反対に、世の中の儚さを感じる。

4.フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732〜1809)
   交響曲 第7番「昼」ハ長調 (1761)

 第6番「朝」、第8番「夕」と三部作となっており、当団では2000年に「夕」、2005年と2009年に「朝」を演奏しているので、今回で全てを演奏したこととなる。
曲はハイドンがエステルハージ侯のために作曲した最初の作品で、標題的内容からも合奏協奏曲(コンチェルト・グロッソ)、嬉遊曲(ディヴェルティメント)、組曲、協奏交響曲(シンフォニー・コンツェルタント)、交響曲など諸様式の混在からも、この時期のハイドンを率直に伝えるユーモアに溢れた興味深い作品である。 第1楽章は、バロック的な付点リズムの音型から開始される。第2楽章では「レチタティーヴォ」と題され独奏ヴァイオリンが主役。通常レチタティーヴォはオペラやオラトリオ、カンタータなど声楽曲のアリアの前に置かれるが、器楽に伴奏つきのそれを演じさせるとはハイドンの機知は多くの作曲家の関心を惹いた。第3楽章は生き生きとしたメヌエット。全体を通じて効果的な各楽器のソロがある。ハイドンの社交性により、当時の楽員のご機嫌を取り結び、彼らの心をいち早く捉えることに成功したようである。

 

出 演 者

 (★印:コンサートマスター、*印:賛助出演)

ホルン独奏 助乗 慎一
旭川市出身。北海道教育大学旭川校芸術文化課程音楽コース卒業。同大学院教育学研究科教科教育専攻音楽教育専修修了。これまでに、ホルンを島方晴康(札響)、小沢千尋(道教大教授)、西條貴人(都響)の各氏に師事。また室内楽を森田寛、千葉圭説の両氏に師事した。北見新人演奏会にてモーツァルトのホルン協奏曲第2番を演奏、余市室内楽協会とは今回が初共演。道内各地で教員として勤務する傍ら、ホルンや吹奏楽の合奏指導を行なっている。今年2月には北海道農民管弦楽団の団員として牧野代表らと共に訪丁。ご当地デンマークの作曲家ニールセンの管楽五重奏曲を演奏し好評を博した。

第1ヴァイオリン
   ★牧野時夫、井坂有美子、久保田 睦、小泉雅広
第2ヴァイオリン
   嶋田 宏、嶋田覚子、廣田洋子、中岡亮子、舘巖晶子、金田 勇
ヴィオラ
   清水三佐子、古谷洋子、井坂 綾
チェロ
   山川雅裕、越智恵美子
コントラバス
   荒木雅幸
フルート
   瀧谷まゆみ、*濱川まどか
オーボエ
石田浩子、*奥谷瞳子
ファゴット、ティンパニ(モーツァルト)
   高嶋孝寛
ホルン
*助乗慎一 *屋根谷了司
ピアノ
   安河内真樹

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