コンサート2009

ごあいさつ

余市室内楽協会 代表  牧野 時夫


                            本日は、余市室内楽協会のコンサートにご来場下さり、まことにありがとうございます。余市室内楽協会は、弦楽合奏を中心に、何本かの管楽器を加えた古典的なオーケストラ編成で、毎年様々な楽曲に挑戦してきました。今回は、モーツァルトの後期3大交響曲のうち、金管楽器や打楽器を含まない最も編成の小さな第40番をメイン曲目に取り上げ、ヘンデルの2つの協奏曲、そしてモーツァルトと同時代のチマローザのフルートのための協奏曲(ピアノ伴奏版)を演奏いたします。ヘンデルの協奏曲に関しては、団員の山川氏が所有している電子チェンバロを用いて、合奏協奏曲の通奏低音パート(チェンバロ+チェロ、コントラバス、ファゴット)、そしてオルガン協奏曲では内臓されている小型パイプオルガンの音源を用いて独奏オルガンとして、初めて公開での演奏に用います。
 バロックから古典にかけての様々なタイプの音楽を、味わっていただければと思います。どの楽曲も、決して易しい曲ではなく、我々にとっては挑戦とも言えるものですが、上手く演奏できるかどうかという緊張感も、また音楽の楽しみとしては、欠かせない要素です。皆様にも、私たちと一緒に楽しんでいただくことができれば幸いです。

  

演奏曲目

1. チマローザ/2本のフルートのための協奏曲から
 第2楽章 ラルゴ
第3楽章 アレグレット・マ・ノン・タント
★フルート(第1フルート)  瀧谷まゆみ
★ヴァイオリン(第2フルート)  牧野時夫
★ピアノ(オーケストラ)   安河内真樹 

      2. ヘンデル/合奏協奏曲 第11番 Op.6-11 HVK.329
          第1楽章 アンダンテ・ラルゲット・エ・スタッカート
          第2楽章 アレグロ
          第3楽章 ラルゴ・エ・スタッカート
          第4楽章 アンダンテ
          第5楽章 アレグロ
            ★ヴァイオリン独奏 牧野時夫、嶋田 宏
            ★チェロ独奏    山川雅裕

―――― 休憩 10分 ――――

3. ヘンデル/オルガン協奏曲 第2番 Op.4-2 HVK.290
          第1楽章 シンフォニア
          第2楽章 アレグロ
          第3楽章 アダージョ・エ・スタッカート
          第4楽章 アレグロ・マ・ノン・プレスト
           ★オルガン独奏  板谷知子

4.モーツァルト/交響曲第40番 初稿版 KV.550-1
      第1楽章 アレグロ・モルト
       第2楽章 アンダンテ
       第3楽章 メヌエット(アレグレット)
       第4楽章 アレグロ・アッサイ

曲 目 解 説

1. ドメニコ・チマローザ(1749〜1801)
2本のフルートのための協奏曲 ト長調(1793) 

 チマローザはオペラの大家として知られ、70を超えるオペラを作りました。この作品は、古典様式の珠玉の2重奏曲で、今回演奏する第2楽章は、歌劇作曲家にふさわしい明るく美しいラルゴの歌。第3楽章は軽快でさわやかなロンド形式で作られています。今回は、フルートとヴァイオリンの二重奏とピアノ伴奏によって演奏いたします。

2.ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(1685〜1759)合奏協奏曲(コンチェルト・グロッソ)
第2集 第11番(1739)Op.6-11

 ヘンデルは、作品3と作品6の二つの合奏協奏曲集を残していますが、そのうち、作品6の合奏協奏曲集は、驚くべきことに1739年の9月29日から10月 30日までのわずか1ヶ月足らずの期間に連続して作曲され、『12曲のグランド・コンチェルト』のタイトルで翌年4月にロンドンで出版されたものです。当時、ヘンデルは54歳で、ちょうどオラトリオの創作に力を注ぎ始めた頃にあたります。
 合奏協奏曲は、バロック時代の協奏曲の最も重要な形式のひとつです。コンチェルティーノと呼ばれる独奏楽器群とリピエーノと呼ばれる合奏からなり、コレルリの作品に典型的な実例を見ることができます。ヘンデルの作品も、様式的にはコレルリの流儀にならっていますが、シンフォニックな豊かな響きや強弱の鋭い対比、音楽の劇的な転換、即興的な自由さなどが、ヘンデルならではの斬新さといえるでしょう。

3.G.F.ヘンデル(1685〜1759)
 オルガン協奏曲 第2番 Op.4-2

 オルガンの名手でもあったヘンデルは、全部で21曲のオルガン協奏曲を残しています。ただし、そのうち5曲は、「合奏協奏曲 作品6」からの編曲で、現在とりあげられるのは、「作品4」と「作品7」の各6曲と、作品番号のつかない4曲の計16曲です。これらのほとんどは、ヘンデルがイギリスにわたって活躍していた時代に、彼が力を入れていたオラトリオの上演の幕間に、一種のアトラクションとして演奏する目的で書かれたものです。どちらかというと地味なオラトリオの上演の途中で披露され、ヘンデル自身のオルガンの妙技は、聴衆を魅了したといいます。
 ただし、バッハの「トッカータとフーガ」みたいに、巨大なパイプオルガンを使って朗々と鳴り響く音楽ではなく、ヨーロッパならどこの村の教会にもありそうな比較的小さなオルガンで弾かれるのを前提に作曲されています。その証拠にほとんどの曲がペダルなしのオルガンを前提に書かれています。そこで聴ける音楽はなかなか静謐な美しいもので、ダイナミックという言葉とはおよそ無縁なものです。

4.ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)
交響曲 第40番 ト短調(1788)

 9歳(1764年)で最初の交響曲を書き、88年に書かれた後期3大交響曲まで短い生涯のうちに41曲もの交響曲を残したモーツァルトですが、短調で作曲されたのは、同じト短調の第25番と、この曲の2曲しかありません。しかし、いずれも名曲に数えられています。また、第39番や第41番(「ジュピター」)のようにトランペットやティンパニもなく、弦楽5部の他は、フルート1本、オーボエ2本、ファゴット2本、ホルン2本だけのシンプルな編成になっています。後にモーツァルト自身がクラリネット2本を加えた編成に書き直し、そちらの版で演奏される機会の方が多いですが、今回は初稿版の編成で演奏いたします。
 この曲は、編成が古典的でシンプルな割には、音楽的な内容は実に実験的で新しい試みがいっぱいです。まず第1楽章の始まりが、ちょっと普通ではありません。ヴィオラの短い序奏(たった3拍)に、いきなりつぶやくような旋律で始まります。このメロディーの最初にある「タララータララータララーラ」という単純なモティーフは、ずっとこの楽章を支配しています。ベートーヴェンの第5交響曲第1楽章が「タタタター」という「運命」の動機でずっと支配されているのと同じです。また、展開部、再現部などの入り方も、冒頭同様にだまし討ちみたいにすっと入るので、演奏者はしっかり拍を数えてないと、入り損ねます。

 第2楽章は、8分の6拍子ですが、ビートがはっきりしていなくて、これもちゃんと拍を数えてないと演奏しにくい曲です。また、モーツァルト特有の半音進行が、かなり多く使われています。

 第3楽章のメヌエットに関しては、本来3拍子が2小節単位で続く踊りの音楽ですが、このメヌエットでは冒頭から3節単位のフレーズが2回続き、これはもう現代音楽の変拍子のようなもので、完全に舞踊音楽を脱した新しい音楽になっています。中間部のトリオも、普通の割り切れる感覚ではありません。演奏者泣かせですね。

 第4楽章、この展開部はすさまじい転調の嵐です。こんな音楽は、これまでなかったでしょう。こういうことを突き詰めていくと、無調音楽になります。その後の色々な音楽を聴き慣れた我々には、びっくりするようなものは何もないのですが、モーツァルト以前の過去の音楽しか知らない当時の聴衆にとっては、とにかく斬新な響きであったに違いありません。モーツァルトの偉大なところは、やはりこのような実験的な新しいことをやったというところにあるでしょう。

 

出 演 者

 (★印:コンサートマスター、*印:賛助出演)

第1ヴァイオリン
   ★牧野時夫、古谷 甫、井坂有美子、久保田 睦、小泉雅広、中岡亮子
第2ヴァイオリン
   嶋田 宏、嶋田覚子、廣田洋子、舘巖晶子、金田 勇、岡村雄一(Handelのみ)
ヴィオラ
   清水三佐子、古谷洋子、浦 宏吉、高嶋恵子、板谷知子(Mozartのみ)
チェロ
   山川雅裕、越智恵美子
コントラバス
   荒木雅幸
フルート
   瀧谷まゆみ、寺島隆司
オーボエ
  *堤 耀広、*須藤智美
ファゴット
   高嶋孝寛、*白川由貴
ホルン
  *上田博美、岡村雄一
チェンバロ・オルガン
   板谷知子
ピアノ
   安河内真樹

 余市室内楽協会は、会員を募集しています。普段は、月3回金曜日または土曜日の夜、余市中央公民館にて練習しています。興味のある方は、上記連絡先までお問い合わせください。オーケストラで使用する楽器ならどんな楽器でも歓迎です。楽器初心者には、個人指導もいたします。
 また、学校、施設、病院などでの訪問演奏もいたします。ご希望がありましたら、是非お気軽にご相談ください。

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