写真 UHB PROGRAM INFORMATION

われら!農民オーケストラ 北の大地の賢治たち

5月23日(日) 13時00分〜13時55分 放送


写真1北海道に農民が中心となって活動を続ける世界的にもユニークなオーケストラがある。名前は「北海道農民管弦楽団」。道内各地の農業者と農業試験場や農協の職員など農業関係者が中心となって、農閑期のみ活動を続けている。
団員は稲作・畑作・果樹栽培、代々農家も新規就農も、若手からベテランまで、その横顔はさまざま。演奏会は毎冬1回限り、たった1度の演奏のために、団員たちは、それぞれのスタイルで練習を積み重ね、本番のために集まっている。
 
かつて、「農民芸術概論」を著した宮沢賢治は自ら農民となって、農民オーケストラを作ろうとしたが、病に倒れ夢をかなえることができなかった。
その理想に共鳴し、農民楽団を設立し牽引しているのが、余市町で野菜や果樹を栽培している牧野時夫代表。
番組では、昨年夏の農作業から、秋の収穫、冬の各自練習、函館での直前合宿を経て、演奏会、そして、再び春からの農作業まで約1年間に渡って、農民団員の姿を追う。

写真2楽団代表の牧野さんの農園は、昨年、サクランボが害虫で全滅したものの、ワインぶどうやリンゴはまずまずの出来で胸をなでおろした。彼は昼間、農作業をしながら、演奏会の楽譜の発送や会場の手配、チケット準備、練習場の確保などの楽団の裏方を務める。 

他の団員達は、秋の終わりに牧野さんから演奏会用の楽譜が届いた時から、演奏会の練習が始まる。


写真3当別町の高橋さんは、トラクターに左手の親指を挟んで大怪我をした。それから、3ヶ月、元々演奏の技量的には高くない高橋さんの格闘が続いた。

北村の星野さんは、冷害の影響をもろに受けて、稲の収穫は平年の7割ほど、10年ぶりの凶作となった。楽譜が届くと、星野さんは無念さをふっきるように無心でフルートを吹きつづけた。また中富良野町の藤田さんは、せっかく低農薬で育てた人参が、中国野菜の影響で価格が暴落し、全て廃棄処分せざるを得なかった。栗山町の大井さんも、トマトの収量が落ち、種苗の借金が残った。

写真4この秋、農民管弦楽団のみんなにとって、必ずしも実り多き季節とはならなかった。だからこそ、彼らの、演奏会への期待は大きく膨らむのでしょう。
演奏曲はチャイコフスキーの「悲愴」、決してやさしい曲ではない。半年振りにさわる楽器、果して、演奏会までに間に合うのか?そして、10年目の節目として、初めて開く函館での演奏会、お客さんは集ってくれるのか?
 
1年ぶりに全員が揃った農民楽団は、演奏を纏め上げるために驚くべき集中力を発揮する。それぞれが、それぞれの農業の現実と、公私さまざまな思いを込めて函館の演奏会に集まる。感動を与える演奏目指して・・・。

演奏会が終わった瞬間、彼らはどんな表情を見せるのか?そして、どんな思いでまた始まる農作業に向かうのか?
彼らの姿を通じて、「真の豊かさ」とは何か?を問い掛ける。

------------------------------
ナレーション  中江有里