有機農業講座 第3回
 
4.有機農業の技術
4−2.生態学的な技術の利用
@ 土壌への有機質の還元(有機農業の基本)と、有機質を分解する微生物の保護
 堆肥、厩肥(牛糞、馬糞、鶏糞)、下肥(人糞)はJASでは禁止だが、汚泥コンポストは可。バーク堆肥、ぼかし肥(少量で効果)、草木灰、籾殻くん炭、緑肥(イネ科、マメ科、ヒマワリなど)の鋤込み、有機質マルチ、食品加工副産物(コーヒー粕、ジュース粕、醤油粕、ワイン澱、おから、廃糖蜜)、米糠、油粕(菜種粕、大豆粕、綿実粕など)、魚粉(フィッシュミール)、カニガラ、ウニ殻、ヒトデ、珊瑚、カキ殻、ホタテ殻、ケルプ(海藻)、グアノ、肉骨粉(BSEで入手しにくくなった)、血粉・・・
★2011年3.11以降は放射能(セシウム)を注意しなければならない!
A 適地適作、適期栽培
  病気や害虫がつきにくいだけでなく、地場の旬のものは、美味しく栄養価高く民族の体質にも合う(身土不二)〜人種による消化器官、消化酵素の差異
  あえて害虫、病菌の発生時期を避けて播種する〜ダイズ、ダイコン
B 耕種的防除・機械除草
 病害虫のつきにくい健康な作物に育てることが基本
  風通し、日当たり、水はけを良くする、徒長防止(窒素過多を防ぐ)
 耐病性・耐虫性台木の利用
 手押し除草機、カルチベータ
C 物理的防除・除草(光・熱・音・風・水などの利用)
 温湯消毒、日光消毒、誘蛾灯、防蛾灯、防虫ネット、防草マルチ(できれば紙など分解性のもの)、トラップ(蠅取紙)、米糠散布による田圃の雑草抑制、水管理による除草、雨よけ栽培、特殊フイルム・マルチ(UVカット、シルバーマルチ)・・・
D 生物的防除・除草
天敵の保護、天敵農薬の導入(外来昆虫は注意)
 捕食性昆虫(テントウムシ、カマキリ)、捕食性ダニ(カブリダニ類)、寄生蜂
微生物農薬
微生物そのものを利用するもの(昆虫病害性糸状菌、拮抗菌など)、微生物の出す成分を利用するもの(BT剤)、フェロモン・トラップ(シンクイコンなど)
動物による除草
 ヒツジ、ブタ、ガチョウなどによる果樹園の除草、
アイガモ、コイ、タニシ、カブトエビなどによる水田の除草
カバークロップ、浮草による雑草抑制
忌避植物、トラップ植物、バンカー植物の利用
  対センチュウ〜アフリカンマリーゴールド、エンバク
天然農薬(自然農薬)

 除虫菊、ニーム(インドセンダン)、クララ、アセビ、クスノキ、タバコ、木酢液、食酢、ストチュー(食酢+黒砂糖+焼酎)、牛乳、植物エキス(ヨモギ、スギナ、ドクダミ、ニンニク、トウガラシ)・・・
E 輪作・混作の利用
共栄作物(コンパニオン・プランツ) トマト+バジルなど
他感作用(アレロパシー) 麦の根から出る天然除草成分など
F 耐病性、耐虫性品種の導入
 既存品種は農薬・化学肥料使用前提に育種(緑の革命の失敗に学べ)、品質との兼ね合いが難しい(品質と栽培性は相反しやすい、コシヒカリ)
 ★ただし、遺伝子組換えによらないこと
G 家畜の生態に合った健康的飼育
平飼養鶏、放牧酪農、放牧養豚

4−3.資源とエネルギーの節約と自給
@ 石油製品(農薬、燃料、被覆資材など)からの脱却
 天然由来製品、バイオ燃料(木質、メタン、アルコール、BDFなど)、紙マルチ、油紙などの利用
 農耕牛馬、人力農具、自然エネルギー(小風力、小水力、パッシブソーラー)
 小規模複合(零細多角)経営が望ましい
A 家畜や人間の糞尿、作物残渣、生ゴミなどの資源活用
     肥料、飼料、燃料(バイオマス発酵)としてリサイクルし廃棄物を出さない
 →ゼロ・エミッション
  農場・地域内で循環を完結=ゴミ問題解決、地力維持、資材費節約の一石三鳥

4−4.流通の改革
@ 産地直送・産消提携
 大量生産・大量流通・大量消費の弊害
  流通合理化を目的とした主産地形成による地場生産の破壊
 規格化による過剰選別がもたらした生産現場での非合理化
  産地間競争による過剰生産と価格暴落、それに伴う生産調整の無駄
  →顔の見える関係で、新鮮で安全な食物を、相互理解の下に届ける
  CSA(地域が支える農業)、朝市・マルシェ(農家マーケット)、提携グループ、野菜ボックス宅配、自然食品店
A 地域内自給
 地場の旬のものを食べることで、健康も維持でき、長距離輸送による交通問題やエネルギー浪費を見直すことにもなる。  自給により、依存したり搾取したりという関係を脱し、自立することができる。
 南北格差による飢餓問題に加え、人口爆発により絶対的食糧不足の時代に→国際分業論は世界的な非難の的であり、食糧自給は国としての責務でもある。

まとめ
<有機農業は、農業の本来あるべき姿であり、未来の社会の核となるもの。>
国〜 1970年代、有機農業を、非科学的なものとして冷遇。環境保全型農業という言葉を使う。
1989年 農水省に有機農業対策室設置
1993年 消費者ニーズに応える形で有機農産物に関する特別表示ガイドラインを通達
特殊な高付加価値農産物の生産方法として矮小化
2000年 有機JAS規格を制定
2006年、「有機農業の推進に関する法律」制定
有機JAS認定の農産物は、未だに1%に満たない流通量。
ヨーロッパでは数%、キューバではほとんど100%(ミミズ利用が発達)

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