有機農業講座 第1回
 

1.有機農業とは何か


1−1.有機農法⇔慣行農法(近代農法、科学農法、収奪農法)
 化学肥料(火薬)と合成農薬(毒ガス)を使用しない農法
   兵器産業が平時に需要ターゲットを農業に定めた歴史
  +放射線照射を行わない 1970代〜 
   ガンマ線照射ジャガイモ(日本)
 +遺伝子組換え作物(GMO)を使用しない 1990年代〜
   交配によらず細菌・動物などの遺伝子を人為的に組込む

1−2.有機農業運動(歴史的背景)
 ヨーロッパの場合 地下水汚染問題〜政治主導
 日本の場合 残留農薬問題〜消費者運動+農薬健康被害農家
   レイチェル・カーソン「沈黙の春」1962
   有吉佐和子「複合汚染」1975
 キューバの場合
   ソ連邦の崩壊と米国の経済封鎖による資材の供給遮断

1−3.なぜ有機農業なのか(有機農業の目的)
@自然と共存する農業の構築(自然を支配する農業からの脱却)
 化学的・物理的意義
  地力(土壌肥沃度)を長期的に維持、増進させる
   堆肥〜土壌構造の改善、有機物の吸収はない?
 生物学的意義
  安全で、栄養価が高く、味の良い食品の供給
   残留農薬害(発ガン性、変遺伝性)〜生物濃縮
   亜硝酸害、ミネラルバランス
  作物・家畜本来の生理生態に即した栽培・飼養環境
   適度なストレスは必要
 生態学的意義
    土壌微生物、動植物の生態学的循環を守り、発展させる
     環境保全型、持続可能(サスティナブル)、循環型
  遺伝的多様性の保護
   GMO禁止の最大理由
           社会的意義
  農業技術に起因する公害、自然破壊を避ける
   土壌浸食、塩類集積、環境ホルモン
  農地の多面的機能の保全
   ダムとしての水田、生活環境(アメニティ)、景観

A人間的な農業の創出(人間疎外の農業を克服)
 農産物を商品ではなく食物として考え、消費者の健康と豊かさを守る
   → 経済<生命、医食同源
 経費の節約と、資本支配(資材・流通)からの脱却と自立
   経済的意義も必要、経済的持続性
 地域内資源の有効活用と、廃棄物の再活用(リサイクル)
   家畜・人糞尿、作物残渣、生ゴミ、絞り粕、ホエイ、バーク、剪定屑、海産物(アラ、カキ殻、カニ殻)・・
 流通に伴う経費、エネルギーの浪費を省き、公害や事故を防止する
   → 地産地消、フードマイレージ
 人権と公正な労働の保障
   安全な労働環境、労働に対する適正な報酬
 金銭だけで計れない価値(幸福度)の追求
   過去の重労働と被搾取状態に逆戻りしてはならない
 農業・農村が持つ社会的・文化的・教育的価値の尊重
   スローフード(伝統品種、伝統食)
 自給的、永続的な社会(コミュニティー)の創出
   生産者と消費者が相互理解と信頼に基づく友好的で顔の見える関係を築く
    CSA(Community Supported Agriculture)
    提携(Teikei)〜日本有機農業研究会 1971〜

2.有機農法と自然農法


 自然農法(natural farming)⊂有機農法(organic farming)
  無農薬 + 不耕起、不除草、不施肥(無肥料)
 狭義の有機農法=科学的有機農法(ビオ・ロジック)
  堆肥の利用、総合的防除、輪作・混作など・・・
   ハワード卿『農業聖典』1940 インドール式処理法、 1951 英国土壌協会
   ロデイル『Pay Dirt(黄金の土)』1945 (酪農学園1950)
 自然農法の実践者
  岡田茂吉 1935〜 MOA(世界救世教)、神慈秀明会
    EM菌(有効微生物群)1980代〜以前は厩肥不可
  福岡正信 1937〜(『わら一本の革命』)〜粘土団子
  川口由一 1970代〜(『妙なる畑に立ちて』) 「自然農」 赤目塾
  赤峰勝人 1986〜 (『ニンジンから宇宙へ』) 「循環農法」 なずなの会
  木村秋則 1978〜 (『奇跡のリンゴ』) 「自然栽培」
  林幸美、城雄二 2000代 「炭素循環農法」
  ルドルフ・シュタイナー 1924〜 「バイオ・ダイナミック(=ビオ・ディナミ)」
     調合剤、天体の運行(太陰暦、黄道十二宮、惑星)、人智学、芸術(オイリュトミー他)
  ビル・モリソン 1979〜 「パーマカルチャー」 
  藤井平司 1970代〜 「天然農法」 
  賀川豊彦 1933〜 「立体農業」 『立体農業の研究(ラッセル・スミス)』
  趙 漢珪(チョウ・ハンギュ)1960代〜 「韓国自然農法」  天恵緑汁、土着菌

3.有機農産物(オーガニック)の基準


IFOAM(国際有機農業連盟)基準 1980年制定
 2012年現在116ヶ国750団体加盟
EU基準 1991年制定〜IFOAMに準拠
コーデックス(国際食品規格委員会)基準 1999年制定
  国連のFAO、WHOにより設立、165ヶ国加盟
有機JAS規格 2000年制定〜コーデックスに準拠
 許可された肥料、農薬以外を3年以上使用していない圃場で生産されたことを認証機関に認定されることが必要(有機肥料でない肥料でも天然由来や微量要素、有機合成物質でない無機農薬・天然由来で安全性の高いものは使用できる=無農薬とは限らない)
 現実は海外からの輸入が多い〜ハーモニゼーション
特別栽培農産物 1993年農水省ガイドライン
  無農薬栽培(2年以上無農薬、化学肥料使用)
  減農薬栽培(50%以上減、化学肥料使用)
  無化学肥料栽培(2年以上、農薬使用)
  減化学肥料栽培(50%以上減、農薬使用)
北のクリーン農産物(Yes! Clean北海道)2000年制定
  農薬30%以上減、化学肥料(窒素)30%未満、除草剤不使用、生産者団体ごとに認定
エコファーマー 農水省1999年制定
  持続性の高い(環境に優しい)農業生産方式(土作り、化学肥料低減、合成農薬低減を目的とした20技術)を導入する計画を都道府県に提出し、導入計画が適当である旨の認定を受けた農業者に与えられる称号。
有機農業に関する基礎基準2000 日本有機農業研究会 2000年制定。
  JAS 法およびIFOAMとに準拠

>>>> えこふぁーむ・にゅーす見出し一覧