普天間基地を即時廃止せよ!
 
   せっかく政権交代した民主党政権をゆるがしかねない普天間基地の移設問題であるが、今年1月、普天間基地の移設先(本当は移設ではなく新基地建設と言うべきであるが)として日米間で合意していた辺野古地区のある名護市で市長選が争われ、基地移設反対派の市長が僅差で当選した。そして落選した受け入れ容認派の元市長も、反対運動の高まりの中で、選挙戦では基地移設問題に触れることをあえて避けた。
 普天間基地は、米国海兵隊の飛行場であり、住宅密集地の中にあって、世界一危険な基地と米軍も認めるところのものである。基地の集中する沖縄は、もともと琉球国という独立国であったのであるが、薩摩藩に併合され日本の領土となり、第二次世界大戦では本土防衛の防波堤とされて、国内唯一の地上戦が行なわれ、島民の3分の1近い人が、圧倒的な軍事力を持つ米国との戦闘だけでなく、日本軍による殺害、集団自決の強制などによっても命を落とす悲劇の舞台となった。その後、日本がGHQから独立して以降も、沖縄だけは米国の占領下におかれ、1972年に日本に返還されてもなお、米軍基地はそのまま固定化されてしまったのである。戦後65年たってもなお、沖縄本島の約2割が米軍基地に占められたままである。日本全国にある米軍基地の25%が、国土の0.6%に過ぎない沖縄県内に集中している。その歴史が示すことは、沖縄は徹頭徹尾日本の踏み台にされて来たと言うことである。
  米軍基地が住宅密集地にあることによって、騒音や墜落事故などの危険に晒されているだけでなく、米兵による強盗や強姦などの犯罪も多発している。特に海兵隊は、世界中でそのような犯罪を最も多く発生させている悪名高い部隊でもあるのだ。1995年、20代の若い米国海兵隊員らにより、沖縄の12歳の少女が集団強姦されるという事件があった。そして、日米地位協定によって犯人の米兵の身柄が日本側に引き渡されないということがあったために、日頃米軍基地に経済を依存しているので大人しくしていた沖縄県民も怒りを爆発させ、もうこれ以上我慢がならないと反基地の声がかつてない高まりをみせた。このままでは日米安保をゆるがしかねないと判断した日本政府は、米国との交渉を進めて1996年、危険きわまりない米国海兵隊の普天間飛行場返還だけは合意させたのである。だから、この基地は一端、もう返還が決まっていたものである。それなのに、自民党政府は、アメリカ側の要請で、新たな基地の建設先を検討することになり、ジュゴンの海で有名な名護市辺野古沖の埋め立てによる、新基地の建設を約束してしまった。しかし、この基地建設に対して地元名護市では住民投票が行なわれ、結果は反対多数であった。そして全国から、自然破壊に反対する環境保護運動家などもやってきて、反対活動が続いていた。そのような状況で、今回初めて民主党が政権をとり、この問題をもう一度考え直そうということになったのだ。至極、真っ当なことであり、民主党の力の見せ所でもある。
 ところが、日米安保がある限りは、代替基地が必要ということが、まるで暗黙の了解のようになっていて、マスコミでも誰もそのことに全く異を唱えないし、県内移設に絶対反対、できれば国外と言っている連立与党の社民党でさえ、そのような本質的な問題に触れようとしない。世界侵略の尖兵である米国海兵隊の基地が、何故日本国内に必要なのか、日本の安全保障のためにどうして必要なのかという議論が全くないのは、一体どうしたわけなのか。もともと憲法九条改正論者であり、独自の日本国軍による防衛をすべきだという考え方の鳩山首相も、最初は最低でも県外移設と言っていたが、そのようなことはもう一切言わなくなってしまっている。
 日米安保に関連して、沖縄返還の見返りとして米国への思いやり予算があったことや、非核三原則を破って国民に隠して核兵器持込みを容認していたことなど、過去の日米密約が次々明らかになりつつあるが、今も公にできない日米間の密約がたくさんあるとしか思えないのである。
 日本という国は、未だにアメリカに対して何も言えない傀儡政権の国なのだろうか。アメリカに対して弱腰というよりも、国民に対して隠していることが余りに多過ぎるではないか。これに対して黙っている国民も、余りに情けない。民主党政権になれば、少しはましになるかと思ったが、今のところ全く期待はずれの様相である。
 鳩山首相は、5月末までには移設先をどうするか決定すると言っている。地元の意見も尊重しなければならないが、国益も考え、日米同盟も尊重すると言っている。アメリカは、自民党政権で10年以上もかかって日米同意した辺野古地区以外の選択肢はないと言っている。しかし、それをのむのであれば、地元の意見は全く無視されることになる。
 それにしても、国益とは何なのだ。あの狭い沖縄に米軍の基地が集中し、住民の生活を脅かし続けてきたが、それが国益にかなったことだったのか。悪名高き米国海兵隊のために、世界にも稀なジュゴンの泳ぐ美しい珊瑚の海を埋め立て、倒産寸前の国家予算の中から巨額の思いやり予算を支出して、最新鋭の基地を造ってやることが、どうして国益のためになると言うのか。鳩山首相は、そのことをちゃんと説明できるのか。
  普天間基地は即刻廃止し、日本に返還させ、県内はもちろん国内のどこにも代替基地を作らせないことだけが、国益に適うことではないのか。日本の安全保障のために何の役にも立たない、否、かえって日本にとって外国からの脅威が増すだけの米国海兵隊は、 即刻撤退してもらうことが、地元の利益であることはもちろんのこと、日本の国益にも、日米同盟のためにも、最もふさわしい結論であることは間違いがない。
 フィリピンは、米軍基地を完全撤退させ、北朝鮮と緊張関係にある韓国でさえ、米国海兵隊の基地を撤退させている。なぜ、日本だけが、こうもアメリカの言いなりになっているのか。普天間基地の新たな移転先を日本が見つけてやらなくてはならない義務など、どこにもないはずである。それをあたかも、どこかに移転先を探さならければならないように発言する政治家もマスコミも、どうかしている。
  どこであってもいいから古ぼけた普天間基地に替わる新たな新基地を造って欲しいと願っているのは、巨悪の根源であるアメリカ軍産複合体と、その利益と運命共同体である日本の軍需産業(三菱重工業etc.)だけに過ぎない。一体、日本の政治家は、中国や北朝鮮を仮想敵国として、米軍に守ってもらおうとでも、本気で思っているのだろうか? もうそのような戦争を想定することは無意味であることを、第二次大戦の敗戦で悟ったのではなかったのか? もちろん最低限の防衛力は、あってよいだろう。しかしそれは、現在の自衛隊でも十分過ぎるのではないのか。何故、強大なアメリカの軍事力が日本に必要なのだろうか? 中国や北朝鮮が軍拡に走っているからか? 違うだろう。彼らが軍拡に走るのは、そこにアメリカ軍があるからであって、米軍の撤退こそが、日本の脅威を減らすことであると、なぜ誰も言わないのか。
  自民党はもとより民主党内にも、軍産複合体の利益代弁者が多くいることを見逃してはならないだろう。鳩山首相には、何とかそのような巨悪をはねつけて欲しいし、そのためには「米軍基地はNo!」という国民世論を、沖縄だけでなく日本全国で盛り上げていかねばならない!

>>>> えこふぁーむ・にゅーす見出し一覧