「プロに学ぶ安全な家庭菜園〜春です 始めよう野菜作り」
 
2008.4.9.小樽市消費者協会主催 小樽市くらしの講座より
講師プロフィール:牧野時夫〜有機農園「えこふぁーむ」代表。1986年北海道大学農学部果樹蔬菜園芸学講座修士課程修了、1992年サッポロワイン(株)技術統括部を退職して余市町に就農。北海道有機農業研究会運営委員、しりべしなんでも百姓くらぶ会員、北海道農業担い手センター就農アドバイザー、北海道農民管弦楽団代表。

なぜ家庭菜園か?
  中国製冷凍餃子の衝撃
・・・マスコミの報道は本質からずれている!
食糧自給率39%の衝撃
・・・国家よりも地域(身土不二)、地域より個人としての自給が重要!
政治・経済の問題でもあるが、食生活の変化・乱れが最大の要因。飽食と飢餓の同居する世界の変革には、まず自分の食生活の変革から。

農と個人の関わり方
1. 完全消費者
2. べランダ菜園(プランター、トロ箱)
3. 家庭菜園、キッチンガーデン
4. 市民農園、貸農園
5. 建物付き菜園(クラインガルテン、ダーチャ)
6. 自給的農業=半農半X(生活に必要なことは農業だけでなくたくさんある、百姓には百の仕事)
7. 小規模有機農家→消費者(直売所、朝市、個人宅配などによる産直)
8. 大規模有機農家→流通業者(大地、ポラン広場など)→消費者
9. 専業農家→農協→市場→仲買→小売→消費者・・・必要以上の規格化
消費者と生産者が遠く離れ分断されることにより、食の問題(安全、環境)が大きくなっている。
  1→2→3→4→5→←7←8←9
自給農業の破壊による世界経済のグローバル化がますます進行しているが、格差・差別のない永続的で平和な社会を取り戻すためには、1から6へと自給を目指し、消費行動も9から6の方向へ進む必要がある。

家庭菜園の実際
@ 土作り・・・有機農業の基本
 有機肥料にも色々あり、有機化成肥料(有機肥料と化学肥料を配合したもの)もある。
◆畜産廃棄物(牛糞堆肥、馬糞堆肥、発酵鶏糞、肉骨粉)・・・自然卵鶏糞がお勧め(異臭なし)
◆水産廃棄物(魚かす、カキ殻、ホタテ殻、カニ殻、ウニ殻)、珊瑚、ヒトデ、海藻(ケルプ等)
◆食品加工廃棄物(油カス=ナタネかす、大豆かす、米糠、ふすま、コーヒーかす、おから)
◆鉱物資源(リン酸グアノ=海鳥糞の化石、キーゼライト=天然硫酸苦土、貝化石、海水にがり)
◆汚泥コンポスト(安価だが重金属など不安。下水処理施設=札幌コンポストより、汲取り=余市有機の方が安心。寄生虫は発酵させれば問題ない。)
◆コンポスト・トイレ(正和電工〜旭川)
◆腐葉土(最も安全で良質、針葉樹は向かないが、笹や竹は良質)
◆藁・籾殻(堆肥化したり燻炭にすればよいが、生で与えると分解時に窒素欠乏を招く)
◆生ごみコンポスト(雑草などと共に土に埋めておくだけでもよい。C/N比、水分率)
◆ボカシ肥(各種有機肥料を自分で発酵させる〜EM菌、土着菌、納豆菌=枯草菌、イースト)
◆緑肥(クローバーやレンゲ等マメ科は窒素を増やす、逆に窒素を減らしたい場合ソルガムやデントコーン、センチュウ対策にマリーゴールド等、他にヒマワリ、エンバク等)
 最近、不耕起・無肥料の自然農(法)という方法が一部で流行しているが、条件が整えば不可能ではないものの、一般には除草を兼ねよく耕し、有機質を十分に施すことが重要。
A 播種
 直播きは、苗床に比較して発芽率が低く(低地温、土壌乾燥、病虫害、鳥害)、雑草との競合もある。種子価格の高いもの(F1)、高温発芽性のもの(スーパースイートコーン)などは苗移植がお勧め。スイートコーンはビート用ペーパーポットで、カラス口を使って移植。根菜類は移植できない。
 播種時期〜大抵のものは遅霜の心配があるので、蒔き直すリスクを負っても早く食べたいのでなければ、カッコウ(たねまき鳥)が鳴くか、ヤエザクラが咲いてから。さもなくば、トンネルやキャップで保温する。定植直後はトンネル内でさらに新聞紙で苗毎に覆う。エンドウ等は、いくら早くてもよい(前年秋でもよい)。抽苔(とう立ち)しやすいもの(ホウレンソウ、ダイコン等)は、播く時期によって品種を変えなくてはダメ。虫害がひどい場合には時期をずらすと被害がなくなる場合がある。
B 苗作り
 苗半作とも言う。数が少なければ手間とコストがかえってかかるが、ホームセンターなどの野菜苗で入手できない品種などは必要。サンルームがなくても室内で播種+トンネル育苗で早採りが可能。
 種子の入手〜自家採取が理想だが、F1のタネを播けば、品質の悪いものがたくさん出てくる。品種固定には10年くらいかかる。果樹は結実までに時間がかかるが、挿木や接木で増殖するため品種固定しなくてよい(ほとんどの品種がF1と考えてよい)。在来品種を中心に扱う種苗店もある。(地元種苗店、通販〜サッポロノウエン、札幌興農園、大学農園、インターネット〜在来品種、海外種子)
C マルチング
 除草が主目的。他に乾燥防止、地温制御など(有機マルチは地温を抑制)。
 ポリマルチ(地温上昇=黒が最も促進、銀色はやや抑制)、生物分解マルチ(プラスチックが粉々になるものも)、紙マルチ(土に戻り処理は楽だが高価)、敷き藁雑草マルチカバークロップ(草生)
D 交配(授粉)
 有機栽培ではほとんど不要(ミツバチなどによる虫媒)。果樹は、他品種が必要な場合が多い(=自家不和合性〜一般にブドウは自花受精するので単品種でよいが、ヤマブドウは雌雄異株なので2本必要)
 トマトトーン(植物生長調整物質=植物ホルモン剤は、発ガン性などの危険、ジベレリン等の天然と同成分のものでも、合成や遺伝子組換え微生物によるものであれば危険な不純物を含むものが多い)
E 防除
天然資材〜◆植物系(農薬適用外で液体肥料などとして登録。ニセモノ多し〜碧露=中国製、アグリクール=日本製、いずれも合成殺虫剤混合偽装が判明し問題になった)
◆木酢液(原料・純度で大きな違い、タール分などの発ガン製も考慮する必要)
◆バイオ農薬(BT剤=殺虫バクテリア、拮抗菌などの微生物農薬)
◆無機農薬(石灰硫黄合剤、ボルドー液=硫酸銅は、オーガニックで許可)
◆ストチユー(玄米酢+黒砂糖+焼酎)
◆天恵緑汁(ヨモギ+黒砂糖で発酵)
◆トウガラシ、ニンニク〜殺菌・防虫効果あり
◆牛乳、石鹸〜アブラムシなどに効果あり
◆重曹〜ウドンコ病に効果あり
耕種的防除〜水田の場合(手作業はもちろん機械除草、アイガモ、コイ、タニシ、カブトエビなどの生物除草、ウキクサ、米糠、紙マルチ、深水管理などによる雑草抑制、様々な方法がある)
共栄作物(コンパニオン・プランツ)例:トマト&バジル、スイカ&ネギ
トラップ作物(ただの虫で益虫を増やす)例:ハウスの周りのヨモギ
耐病性・耐虫性品種(ただし、遺伝子組換えによらない)
〜ただし、一般には品質と反比例
肥料感受性の高い(化学肥料でよく伸びる)品種は抵抗性が弱い、肥料のやり過ぎは最も×
適地適作(適地でない品種もホームセンターで売っている〜ブドウの巨峰など
家庭菜園でこそ挑戦したい作物も〜サツマイモ、サトイモ、ラッカセイ)
水はけ日当たり風通しが重要。土壌の栄養バランスpHなども影響。
播種時期も重要=虫や病気の付き難いタイミングを選ぶ
〜ダイコン、ダイズなど
F その他の管理
 間引き土寄せ〜除草効果+深耕効果、誘引芽掻きなど
不要な作業は省く(トウキビの芽掻き〜収量にメリットなし)
 除草、芽掻きなどは早め作業が肝心(篤農は草を見ずして草を取り、精農は・・・、惰農は・・・)
G 収穫・貯蔵・加工
 生育期の限定される北海道ならでは、雪の下での貯蔵などを工夫したい(キャベツ、ダイコン、ジャガイモ、ナガイモ、ニンジンなど)
耐凍性があり、戸外で越冬できるものもある(ニンニク、メキャベツなど)
茹でて冷凍したり、乾燥、漬物、水煮などの加工も大いに利用したい

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