食品の表示偽装問題
 
  このところ、創業300年を誇る老舗の和菓子「赤福」が、製造日の偽装問題で製造停止に追い込まれたり、「比内鶏」という会社が、卵を産まなくなった廃鶏を比内地鶏と偽装表示していたことが明らかになったり、いずれも内部告発による発覚と思われるが、この手の事件が続いている。
 北海道でも、食肉偽装の「ミートホープ」(廃業)に、賞味期限ごまかしで大きくつまづいた北海道土産の看板「白い恋人」製造元でコンサドーレ・スポンサーの「石屋製菓」(現在も休業中)など、「雪印乳業」(解体分割)以来、全国に先駆けてこの種の事件が起きている。
 発覚すれば会社の存亡に関わることなのに、なぜ目先の利益にとらわれて偽装表示をするのだろうか。ミートホープ社がやった偽装の数々の手口にはあきれるばかりであるが、経営者の資質を問うだけでは、この手の事件は次々と起こるばかりで、一向に問題は解決しない。
 私もかつて食品業界(ワイン製造会社)にいたので、表示の問題には頭を悩ませていた。マスコミは、会社の体質を問題にするが、本当に問題にすべきことを追求していないし、問題をさらに悪くする方向に進みかねないので、全く歯がゆくて仕方がない。
 まず、せっかく作ったものを無駄にしたくない「もったいない」という意識は、生産者として当然でもあるし、農家としても肌身で感じることである。これを否定するような報道には、非常に疑問を感じる。何よりも食品とは、元をたどれば生命であって、消費期限を過ぎたからといって、簡単に廃棄する方がおかしい。偽装表示は許されないが、何らかの形で再利用することこそ、生命を最後まで尊重することなのである。食品製造業に限らず、コンビニやスーパー、ホテルの宴会に至るまで、膨大に廃棄される食品の再利用こそ、考えなくてはならない重要な課題である。
 そして、ミートホープ社の社長は、消費者の無知・無理解に対する不満を口にし、大いに反感を買っていたが、牛肉並においしいものが豚の心臓を使ったミンチで仮にできるならば、それはもっと評価されてもよいのである。しかし、大半の消費者は、ブランドやイメージで評価を下し、自分の舌で評価をしない。それなら、いっそのこと偽装してしまえという考えに至ることが、もちろん許されることではないにしても、そんなに責める資格が消費者の側にあるのだろうか。
 また、何とか利益を上げて従業員を養わなければならないというあせりもあるし、ミートホープ社も社員の待遇は悪くなかったということである。消費者を欺くことによって利益を上げていたことは言語道断だが、まともにやっていたら利益など上がらないという状態は、何かが間違っているのであり、まともな生産者が報われるようなシステムこそを作らなくてはいけない。
 さらには、表示規則に関してもまだまだ問題が多く、原材料や原産地の表示、賞味期限や消費期限といった表示に関しても、少しずつ改善されてはいるが、まだとても合理的であるとは言い難く、消費者のためにも生産者のためにもなっていない点が多々あるし、偽装やごまかしを誘う大きな要因になっている。
 もちろん、このように色々な問題があっても、経営陣がしっかりしている会社では、このような問題を起こすことはないだろうし、苦しい経営に耐えながら頑張っている会社だってたくさんある。しかし、良心にばかり期待していては、ダメなのだ。変えなくてはならないことが、たくさんある。何よりも、マスコミも含めて消費者が、余りにも食の生産について無知であることこそ、改める必要があるだろう。金さえ出せば安全で美味いものが食えると思っていたら、とんでもない間違いである。表示など、最初から信用できないものと思ってかかるべきである。   

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