北海道にもワイン時代が到来!
 
  ここ数年、北海道で個人経営の小ワイナリー(アメリカではブティック・ワイナリーと言う)が次々オープンしている。北海道でも、ようやく本格的なワイン時代が始まったと言える。山梨県からは50年以上遅れているが、気象条件から言ったら、北海道が日本の中で最も高級ワインブドウの生産に適していることは間違いがないのである。山梨県は、残念ながら高級ワインブドウ品種の適地ではない。しかし、北海道では、せっかくの適地でありながら、肝心の高級品種を作って来なかった。これでは、本格的なワイン生産地として名を馳せることはできない。
  北海道のワイン生産は、明治初期の開拓使による実験(これは失敗に終わった)を除けば、40年前の池田町が始めであり、それに富良野市が続き、品種としてはセイベル系(赤&白、フランス)の中級品種が主流だった。今でも、この両地域ではセイベル主体である。その後、道立農試によりミュラー=トゥルガウ(白、ドイツ)とツヴァイゲルト・レーベ(赤、オーストリア)が奨励され、生食用のブドウ生産が盛んだった余市・仁木で各社が契約栽培するようになった。また、北海道ワイン(小樽市)が浦臼町で大規模な栽培を始め、他の市町村も一村一品で栽培に取り組むところが出てきた。しかし、これは品質から言ったら上の下くらいのランクである。それに平行して、余市ではサッポロワインが独自にケルナー(白、ドイツ)の栽培を始め(うちの畑が余市町で最も古い畑)、これはドイツにも負けない品質となり、各社がこれに追随した。また、最近はバッカス(白、ドイツ)の栽培も増えてきた。これらは、まあ上の中ランク。
  では、上の上では何ができるのか。カベルネ・ソーヴィニョンは完熟せず無理。これは、日本では長野県だろう。ピノ・ノワール(シュペト・ブルグンダー)は、余市では昔から少しやっているけれど、残念ながらいいものはできない。品種は上の上でも適地でなければワインの質は上の下がいいところ。リースリングも、なかなか難しい。この2つは、日本では山形県が適地である。北海道で上の上クラスで行けそうなのは、シャルドネとメルロー、私はずっとそう思っていた。この2品種は長野県での栽培が盛んだが、北海道でも絶対にできると思い、10年くらい前に自家用に植えて、自家醸造(密造)して来た。糖度は十分だが酸が強いので、マロラクティック発酵やオーク樽を使うことにより、そこそこ行けるものになりそうだった。しかし、従来のメーカーはどこも栽培すらしようとしなかった。道立農試がダメだと決め付けていたからなのか? ケルナーも道立農試が却下した品種だったから、罪は大きい。
  しかし、最近になってようやく、富岡農場(道南の乙部町、ジャーナリストから転身した個人ワイナリーで、20年以上前からやっているが、最初はヤマブドウとセイベルが中心だった)と、数年まえに三笠市の農家がオープンした山崎ワイナリーで、シャルドネとメルローを相次いで製品化した。両者とも家族経営であり、数ヘクタールの自園から取れたブドウだけで手作りの製品を作っている本当のブティック・ワイナリーである。残念ながら私はまだ飲んでいないのだが、そのうち手に入れて飲んでみようと思う。

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