果物を食べよう

 現在、日本人一人当たりの果物の消費量は、世界の中でかなり低い水準にある。世界平均の半分程度で、食糧事情の悪い北朝鮮よりも少ない。2〜30年程前はもっとずっと食べたものだが、今は特に年齢の若い層ほど消費量が少なく、これは栄養学的にも由々しき事態である。
 日本では果物といえば、入院のお見舞いとか、贈答品として、見栄え重視で高価なお遣い物にされたりする。また、お菓子や清涼飲料水と同じように、嗜好品と見なされたりもする。しかし、これは大きな間違いで、米や野菜と同様に、欠くべからざる食品であるという認識を持たなければならない。甘いものを菓子類で多くとるようになった近頃、国内の果樹生産農家は、果物の消費低迷と海外からの安い輸入果実攻勢のダブルパンチで、非常に厳しい経営を強いられている状況なのである。
 一般に果実は、野菜と同様に、ビタミン、ミネラル、繊維質を多く含み、「1日1個のリンゴは医者を遠ざける」とか、「リンゴが赤くなると医者が青くなる」などとも言われたものだ。また、酸味のある果物は、疲労回復や動脈硬化予防になる有機酸を豊富に含み、カリウムなどのミネラル分で血液を適度なアルカリ性にしてくれ、特に血液を酸性に傾けがちな肉を多く食べた時には欠かせない。また、キウイなど蛋白質分解酵素を多く含む果実もある。ブドウやブルーベリーなどは抗酸化作用の強いポリフェノールを多く含み、生活習慣病を引き起こす活性酸素を除去する作用にも秀でている。残念なことに、ポリフェノールを多量に含んでいるブドウの皮の部分は、ほとんど食べないで捨てられてしまう。しかし、皮ごと発酵させる赤ワインにはアルコールによってポリフェノールが多く溶け出しており、また抗ガン作用のある物質も発酵により生まれ、酒の中でアルカリ性食品なのもワインだけである。だから、肉料理にワインを飲みながらというのは、理に適っている。
 「カロリーが多いので、果物を控えている。」などと、誤った認識がもたれたりもするが、ケーキや清涼飲料水と比べて決して高カロリーではない。また、果物のほかハチミツにも多く含まれる果糖は、砂糖と違って体に優しく働き、肥満の原因にはなりにくいものである。
 宮澤賢治は、果実が穀物のように子孫を残すためにある種子を全部食べるのでなく、種子以外の部分だけ食べればよいので、一切の生命を殺さずに生命の糧となる理想食だと考えていたようである。その考え方はともかくも、もともと先史人類の食べ物はドングリ(ナッツ)と果物、それに少々の動物性蛋白質であった。当時と現代では食物は大きく変わったが、人間の体の方は、そんなに変わったわけじゃない。昔ながらの食物バランスが現代人にもふさわしく、病気にもなりにくいのである。偏った栄養をサプリメントで補ったからといって健康が維持できるものではない。
 ただし残念ながら、現在ではことわざ通り市販のリンゴを毎日食べ続けると、3ヶ月ほどで確実に農薬中毒になる。それほど一般のリンゴ栽培には、農薬が多用されている。余市の農家の間でも、「ブドウは手間で取り、リンゴは薬で取る。」と言われているくらいだ。それでも本州の農家に比べると、3分の2くらいしか掛けてはいない。農薬がたっぷり掛かっていれば、最も栄養の豊富な皮を厚くむいて食べなくてはならないが、浸透する農薬を完全に除くことはできない。現在使用されている殺虫剤の多くは、植物に浸透し、その植物を食べた害虫が死ぬようにできているから、表面に付いているのは一部でしかない。果物ではまだ実用化されていないが、トウモロコシなどは遺伝子組換えで殺虫成分を最初から含む品種がアメリカを中心に栽培されており、その遺伝子が野生植物にまで入り込んでいることが分かっている。恐ろしい時代になったものである。
 また、リンゴやブドウの表面に白く粉をふいたようになっているのは、ブルームといって、果実に含まれる成分に天然の酵母が付いたもので、農薬と誤解してはいけない。農薬がついた場合には、白い粉は均一ではなく斑模様になる。最近は、昔使われたボルドー液のように見た目に汚い農薬は、消費者に嫌われるため使われなくなっている。ところが、実はボルドー液は有機栽培でも使用が認められるほど、環境に対しては安全度の高い農薬なのだ。また、ワインブドウに使用した場合、酵母が消化するため合成農薬とは異なりワインには全く残存しないため、食品としての安全度も極めて高い。ワイン会社に勤めていた時に、原子吸光でボルドー液をたっぷりかけたブドウのワインを分析したけれど、ボルドー液に含まれる銅イオンはppmレベルでは検出できなかった。これが合成農薬だったら数ヶ月前に散布したものでもほとんど検出できる。ちなみに、うちではワインブドウのみ、合成農薬を2回ほど掛けているのだが、隣のワインブドウ農家は毎週掛けているので、年間15回以上、その他に除草剤を3回くらい掛けている。
 りんご栽培は、袋掛け(光を通さない袋の場合)や葉摘みなど、外観を向上させるが味にはマイナスとなる作業に非常に多くの労力を費やしている。これは全く、農家にとっても消費者にとっても馬鹿げたことだ。中身を重視し正しい情報に基づいて行動する、賢い消費者になってもらいたい。サンふじ(袋掛けを省いたふじ)や、葉取らずリンゴという銘柄で、外観より味を重視したリンゴも出ているから、できればそういうものを選んでいただきたい。
 もっとよいのは、<えこふぁーむ>の無農薬果実を食べていただくことです。リンゴもブドウも皮ごと安心して丸かじりしていただけます。また、果物の栄養を凝縮した自家製の低糖度ジャムやストレートジュースも、ぜひご愛用ください。当園のジャムには、砂糖以外にいかなる添加物も加えていません。味を調整するためやペクチンを補うための、クエン酸やレモン果汁なども、一切使用していません。そのような添加物の必要のないジャムに向いた品種を選択して栽培し、無農薬の自家製原料100%で細心の注意を払って手作りしています。
 ジャムに向いた品種とは、何よりも酸味、そして色、香りの強いものです。しかし、これらの特長は、特に日本では果物の特性としては嫌われています。酸味が薄く、色も濃くなく、香りも控えめというのが、日本の高級果物の特色です。しかし、これらの特性はジャムには全く向きません。したがって、普通の果物のハネ物をジャムに加工したのでは、あまり美味しくないため、砂糖以外の添加物を必要とするのです。当園では、ジャムにはジャム専用の品種を用いています。また、ペクチンを補うためにペクチンそのものを添加することはもちろん、レモンなど外来のものの使用も避けています。具体的には、ペクチンの乏しいラズベリーには、ペクチンの豊富なレッドカーラントを少量ブレンドするなどの工夫をしています。また、ジャムに余り向かない品種のハネ物が多く出た場合は、ブレンドにより品質の向上を目指しています。イチゴ単独では、サマーベリーという品種が最高ですが、今年はこれが余りとれないので、イチゴのキタエクボにハスカップをブレンドしてみましたが、かなりよい品質のものができました。

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