侵略戦争の準備に入った日本

   先日小樽で開かれた「戦争に協力しない市民の集い」に、農業者代表のパネラーとして参加した。戦争は、人間性を破壊するだけでなく、環境を破壊して地球上すべての生命を脅かす。農民から農地を奪い、奪われなかった農地からは食糧を強奪する。農民として、どのような闘い方ができるのか。暴力に対して暴力で抵抗することは、ナンセンスである。非暴力的抵抗より他に、暴力に立ち向かうべき道はない。暴力は暴力を生むだけだ。私は、過去の日本における農民の非暴力的闘争の一端を、反基地闘争を中心に紹介した。
 この集会でよく分かったことは、今回出された一連の有事法案が、決して日本が攻められることを想定したものではなく、アメリカの侵略戦争へ加担するための法律であるということだ。備えあれば憂いあり!決してだまされてはいけない。自衛隊は、国民を守るためにあるのではなく、作戦のためには警察と協力して戦争に反対する国民を排除する(=銃を向ける)ことが明白である。そのような法律の素案は、小泉純一郎の父親が防衛庁長官だった時に、すでに出来上がっているのだ。アメリカ中枢テロをいい機会と、今までなかなか出せなかったものを出して来ただけに過ぎない。つい数日前には、防衛庁が組織ぐるみで情報公開請求者の身辺や思想信条の調査を行ってリストを作っていたことが発覚した。戦争に反対する者を、かつてのように非国民と呼んで弾圧する時代が再び来るのではと、空恐ろしい不安がよぎる。
 そして、戦争遂行のために、再び天皇が担ぎ上げられることも間違いない。アメリカが天皇制を廃止しなかったのは、日本を従わせるために最も有効な道具であることが分かっていたからに過ぎない。天皇を手なずけさえすれば、日本が再びアメリカに背くことはないのだから。天皇制に反対する人が非常に少数しかいない現状では、象徴という訳の分からない形で残した天皇が君主としての機能を復活させ、国民の意志統一の道具にされることは火を見るより明らかだ。
 アキヒト天皇は、北海道から東チモールに派遣されたPKO部隊に激励を行い、アメリカのアフガン侵略と内政干渉(=王制復古)を歓迎する発言を行っている。自衛隊が再び天皇の軍隊となるおそれが十分にある。戦前、天皇は国家元首であるとともに、帝国軍隊の最高指揮官=大元帥であった。国民は天皇の赤子とされ、皇后は銃後を守る皇国の母として活躍した。今回の有事法制において真っ先に戦争協力を求められる指定団体になっている日赤病院の名誉総裁は、皇太后つまり大元帥ヒロヒトの妻その人である。敗戦時に全国の日赤病院は、ほぼ従軍独占となっており、民間人の医療は排除されていた。再びそのように利用される可能性は高い。
 アメリカはアフガニスタンで、ビンラディンに何の反撃もできないまま、すでに世界貿易センターでの死者を上回る4000人以上の民間人を空爆で殺した。自衛隊(=日本軍)は、未だにその後方支援とやらを続け、完全に自衛を逸脱した軍事行動を行っている。かつてアメリカは、ソ連を追い出すためにビンラディンに資金を提供し、パキスタンを使って抑圧的なタリバン政権を作った。アメリカこそ、まぎれもない世界最大のテロ支援国家である。それが、言うことをきかなくなったらといって、今回の同時テロに乗じ世界中の軍隊を引き連れ力ずくでの傀儡政権樹立だ。石油資本家であるブッシュは、カスピ海の膨大な石油・天然ガスをアフガン経由のパイプラインで何とか手にしようとしているのに過ぎない。アフガン人民の平和を願うならば、戦争ではなく、もっと別の方法があったはずだ。正義の戦争など絶対にあり得ない。戦争そのものが絶対悪である。
 ブッシュが悪の枢軸と名指ししているイラクでは、ブッシュの父親が、やはり石油利権を守るために起こした湾岸戦争で、兵士12万人、民間人7万人を殺戮し、その後の経済制裁では、栄養失調と医薬品不足で150万人にも及ぶ子どもや老人などの弱者を死亡させた。使用した劣化ウラン弾による白血病などの健康被害は今なお深刻である。第二次世界大戦後にアメリカが空爆した国々は、中国、北朝鮮、グァテマラ、インドネシア、キューバ、コンゴ、ペルー、ラオス、ヴェトナム、カンボジア、グレナダ、リビア、エルサルバドル、ニカラグア、パナマ、イラク、ボスニア、スーダン、ユーゴスラヴィア、そしてアフガニスタンである。これほど好戦的な国があるだろうか。イラクのフセインが、アメリカこそ悪魔の帝国だと言うことにも、一理あるのではないか。
 ブッシュは、北朝鮮も悪の枢軸と決め付けた。アメリカが北朝鮮を攻めた時には、日本も北朝鮮と交戦することは免れないであろう。今回の法律が通れば、そういうことになる。周辺事態法を含め一連の法律は、米日を運命共同体にするもので、日本独自の防衛や外交など、最初から存在しないのである。
 日本は、北朝鮮が拉致したとして行方不明になっている十数名のことを挙げて、北朝鮮との国交断絶を解こうとせず、また食糧援助も渋っている。しかし、戦前の日本は、長期にわたり100万人以上の朝鮮人を連行(ほとんどは騙したり強制的に、つまり拉致)し、過酷な強制労働に従事させ、戦時には前線に送り込んだ。きわめて多くの朝鮮人が、異国の地で、日本のために殺された。たったの十数名とは訳が違うし、北朝鮮に拉致されたとされる日本人は、恐らく殺されたりしてはいないだろう。数で比較できる問題ではないかもしれない。しかし、戦前の朝鮮に行った行為に対する償いを、日本は半世紀を経た今なお全くしていない。ドイツがユダヤ人に対してしているような償いを、日本は朝鮮人に対して一切拒否している。このままで、お互いに平和な関係を築くことなど、できはしない。
 日本は敗戦後、平和憲法のために自衛隊が直接外国に行って闘うことはなかったし(韓国では兵隊がベトナム戦争に参戦した)、武器を輸出することもできないことになっているのだけれど、敗戦後の貧困状態からの驚異的な経済復興は、1950年に勃発した朝鮮戦争における米軍特需によって成し遂げられた。再び戦争で、いい思いをしたいと狙っている悪魔のような日本人が、どこかに(国会にも)いるのだろう。でも、北朝鮮が日本の原発にテポドン一発打ち込んだら、そんなことでは済まない。戦争は、二度と起こしてはならないのだ。唯一の原爆被爆国である日本は、そう誓ったはずである。戦争の最大の被害者は、どこの国でも一般市民、特に弱者である。アメリカは本土が攻撃されることはないと、北朝鮮に攻撃を仕掛けるかもしれないが、日本、特に北海道の日本海側はかなりの危険にさらされる。小樽には近年になって米軍の空母が2度もやって来たし、今年も米軍艦船の寄航予定がある。余市には何と、海上自衛隊の基地(ミサイル艇3隻配備)があり、泊原発も近い。
 ソ連の脅威がなくなった現在、戦争を望む勢力は、新たな仮想敵国を、北朝鮮や姿の見えないテロリストに変えて来ている。敵を作りさえすれば、本当は相手が誰でもいいのである。戦争こそ、最も儲かるビジネスなのだ。つい最近の驚いたニュースは、不審船問題である。憲法違反の自衛隊と在日米軍だけが武力と思っていたら、海上保安庁の艦船が、北朝鮮籍であろう不審船を撃沈するという戦後初の武力行使をやってのけた。あの事件は、怪しい匂いがプンプンする。北朝鮮は、あんなことやっても何の利益にもならないはずだから。
 それにしても、北朝鮮から多くの難民が中国に逃げている。やはり、食糧事情がまだまだ相当悪いのだろう。同じ社会主義国ということかもしれないが、中国は懐の深い国だと思う。それにしても、日本の領事館は、一体何をやっているのだ。外務省の恥さらしも、極限に達している。あのビデオが公表されなければ、闇に葬り去られた事件に違いない。小泉首相がテレビで、中国の言うことばかり信じないでくれと、例の怒った顔で言っていたが、狼少年と同じで、誰が今さら外務省の言うことなど信じるだろう。しかし、北朝鮮から韓国(南朝鮮)に亡命することのできた人の多くは、北朝鮮にいた時とは別の悲哀を味わっているということだ。もちろん自由に(?かつての韓国は決して自由でなかったが)発言できることは、何物にも代え難いとはいえ、決して自由に生きられるわけではない競争社会の裏面も、住んでみて初めて分かるようだ。
 かといって私は、かつて学生時代に北朝鮮を美化するプロパガンダ映画を見たことがあったけれど、やっぱりああいうユートピア的なのは好きになれない。マスゲームなんか見ていると寒気がするのは、私だけだろうか。資本主義でも国家社会主義でもない、第3の体制社会をどうやって産み出したらよいのだろう。
  軍隊のない平和な世の中は、一体いつになったらやって来るのだろう。旧約聖書の預言者は、神が剣を鋤にうち変えると語った。その預言が未だに成就しないことが、腹立たしい。最新の戦闘機たった1機(数百億円!)買うお金があれば、北朝鮮の飢えは解決するのだ。軍隊の存在そのものが、罪であり悪である。

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