日本の伝統野菜 その8 ごぼう       

ごぼう(牛蒡) キク科 ゴボウ属
学名:Arctium lappa 英名:great (edible) burdock

 ゴボウは、煮しめ、揚げ物、汁物の具、ささがき等色々な利用法があるが、最も好まれているのは、きんぴらだろう。繊維質に富み低カロリーで腸をきれいにする効果が高く、最近ではコンビニのお惣菜などで、洋風にマヨネーズ味にしたゴボウサラダも人気のようだ。夏に採れる新ごぼうは、柳川鍋(どじょう鍋)に欠かせない。すき焼きにも意外に合う。
 しかし、この植物を食用にしているのは世界中で日本だけである。ヨーロッパでは、日本では木の根を食べていると驚かれるらしい。原産地はユーラシア北部で、もともと中国で薬用に栽培されていたものが平安時代に渡来し、野菜となった。『本草和名』(918年)では技多技須(きたきす)と記載されており、平安時代末期にはすでに野菜としての利用が始まっているが、発達したのは江戸時代である。外国産の植物を改良して日本で野菜になったものは、ゴボウ以外には見当たらない。
 ヤマゴボウと称して漬け物(かす漬け、味噌漬)で売られている物は、モリアザミ(森ではなく銛アザミ、ゴボウアザミ、Cirsium dipsacolepis)を栽培した物の根である。アザミ属(キク科)の根はゴボウに味や香りが良く似ていて、フジアザミやハマアザミの根も食用にされる。またアザミ類の若芽はどれも皆おいしく食べられる。正式名称がヤマゴボウ(ヤマゴボウ科)という植物もあるが、こちらは毒草で、漢方では「商陸」と言い利尿剤などにする。
 ヨーロッパで食用にされる西洋ゴボウもキク科の植物であるが、サルシフィ(バラモンジン=Tragopogon porrifolius , vegetable oyster)ブラック・サルシフィ(キクゴボウ、キバナバラモンジン=Scorzonera hispanica, scorsonera)の2種がある。前者は、切ると白い乳汁が出てカキ(牡蠣)の風味があり、煮込み料理や肉料理の付合わせ等にする。若芽はサラダに用いる。後者もほぼ同様に使う。
 全く利用部位は異なるが、アーティチョーク(チョウセンアザミ、Cynara scolymus)は、よりゴボウに近縁の植物であり、大型のつぼみの苞片を茹でて食用にする。ヨーロッパ原産で、朝鮮とは何の関係もない。この原型とされる作物がカルドン(スパニッシュ・アーティチョーク、Cynara cardunculus)で、紀元前からヨーロッパで野菜として利用され、一般に葉柄を軟白栽培して食べるが、イタリアでは花托も利用している。

@. 滝の川型品種(長根型)
 滝野川(東京都豊島区、元禄時代からの代表的品種で120cmに達する)、渡辺早生、山田早生、新田、中の宮(東京)、常磐(ときわ、長野県下水内郡)、新倉、阿見、柳川(やや短め)など

A. 大浦型品種(短太型)
 大浦(千葉県八日市場、直径10cmほどになり、中に空洞ができるが柔らかく、成田山新勝寺では詰め物をした精進料理が有名)、堀川(聚楽ごぼう、京都)も直径7〜8cmになるが、これは滝の川系品種を特殊栽培したもので、高価である。

B. 百日尺型品種(短根型)
 百日尺(山形県最上川地方)、(山口)、梅田(埼玉)

C. 白茎型品種(葉ごぼうとしても利用、アザミ葉型のものは、オロシアゴボウとも呼ばれ、江戸時代にロシアから北陸に渡り、中部、京都、南東北に広まったが、現在はほとんど廃れてしまった、白茎とアザミ葉は、それぞれ赤茎と丸葉に対して遺伝的に劣性であり、交雑により消滅しやすい)
 越前白茎白花(アザミバゴボウ、福井)、広瀬(岐阜県高山、これもアザミ葉)、白茎砂川など  

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