日本の伝統野菜 その6 やまいも類       

やまいも類 ヤマノイモ科 ヤマノイモ属
学名:Discorea sp. 英名:Yam

 ヤマイモは、ジャガイモやサツマイモより、はるかに昔から日本で栽培されていて、もちろん里芋に対して山芋と言うわけである。この二つのイモはジャガイモとサツマイモがアメリカ大陸原産のものであるのに対して、アジア原産であり、現在でもヤマイモ(=ヤムイモ)とサトイモ(=タロイモ)はアジア熱帯地域における重要なデンプン源である。ヤマイモは生で食べられる稀なイモであり、日本ではとろろにして生食することが多いが、アジアでは煮たり蒸したりして食されることの方が一般的で、もちろん日本のナガイモも、そうやって食べても十分おいしい。中華料理では炒めて食べられ、北海道から台湾にもナガイモが輸出されている。
 ヤマイモ類のうち、日本国内で栽培されている種は3種あり、普通ヤマイモと呼ばれているのは正式和名ナガイモ(長薯、Discorea batatas、Chinese yam、薯蕷)で、約600種の野生種があリ(うち約60種が栽培される)多くは熱帯から亜熱帯にかけて分布するヤマノイモ属の中では最も北方に分布する。中国原産と考えられ、中国では紀元前から栽培され、日本では17世紀に各地で品種が分化した。日本以外でも、アジア温帯各地で栽培される。九州や四国で栽培されているダイショ(大薯、D. alata、Greater yam、参薯)は、インド東部からインドシナが原産で、アジア熱帯から亜熱帯にかけて最も広く栽培されている。他に、日本特産で国内各地に自生するヤマノイモ=ジネンジョ(自然薯、D. japonica、Japanese yam)も、一部で栽培が試みられているが、とろろにして品質は最高ながら、収穫の困難さから普及するまでには至っていない。他にも日本に自生するヤマノイモ属の野生種は10種ほどある。その他アジアで広く栽培されているものとしては、トゲドコロ(D.esulenta, Lesser yam, Fancy yam)、カシュウイモ(D.bulbifera, Aerial yam, Potato yam)、ゴヨウドコロ(D.pentaphylla)などがある。また、中部アフリカにもヤムベルトと呼ばれる一帯があり、アフリカ原産のものと、アジア原産のものの両方が栽培されている。
 植物学的に言うとジャガイモは塊茎、サツマイモは塊根であり、ではヤマイモはどちらかと言うと、担根体といわれる部分で、根と茎の中間的な部分なのだそうだ。

@.ナガイモ 染色体数は2n=140で、長形のナガイモ、扁形のイチョウイモ、塊形のツクネイモ(ヤマトイモ)の3種に大別できる。ただし、関東地方ではイチョウイモのことをヤマトイモと称し、少々混乱している。

 @−1.(狭義の)ナガイモ
通常雄株のみで、最も低温に強く、北海道や東北地方で多く栽培される。さらに細かく分類すると、大きいものは1m近くなるいわゆる長薯、やや短い徳利薯、一年薯(杵薯、江戸薯、駱駝薯、馬鹿薯)、東大和などといわれる系統がある。

 @−2.イチョウイモ(銀杏薯)
通常雌株のみで、関東地方に多く、形状から棒型、ばち型、いちょう型(仏掌薯)に分けられ、各々短首型のものと長首型のものがある。また多毛系のものより、ひげ根の少ない毛無系のものに人気がある。

 @−3.ツクネイモ
通常雌株のみで、地上部にむかごができないことで、上記の2種と区別できる。(年数はかかるが、種芋の代わりにむかごを植えても薯ができる。)ナガイモ類の中では最もねばりがある系統で、名古屋方面に多い伊勢薯(白皮で、でこぼこしている)、関西方面に多い丹波やまのいも(黒皮で球形)、九州方面には豊後薯がある。

A.ダイショ
 染色体数2n=80の他40、60もある。12℃以下で腐るので、暖地以外には向かない。九州と四国で栽培されるものは2〜3kgだが、東南アジアには50kgにも達するものがある。形状も日本のように塊状のものだけでなく、棒状、扇状、群柱状のもの、色も白、紅、紫など多彩である。奄美・沖縄地方には紫色のコウシャイモ(拳薯)があり、福岡農試で育成された灰色の為芋という品種は、ジャワ原産で台湾経由で入ったものである。他に伊賀薯、白長、白丸、赤丸などの品種がある。

B.ヤマノイモ(ジネンジョ)
 2n=40が基本だが、60、80、90、100のものも見つかっている。栽培は、パイプなどを使わないと困難なため一般的ではなく、品種といえるようなものはない。しかし、品質は最高とされ、野生のものも掘り取るのが一苦労なので、非常に高価に取引されている。

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