日本の伝統野菜 その5 ねぎ       

ねぎ ユリ科 ネギ属
学名:Allium fistulosum
英名:welsh onion,   spring onion
仏名:ciboule
独名:lauch, winterzweibel
古名:き(葱、奇)

  原産地は、中国西部からシベリアで、日本には奈良時代以前に朝鮮を経て伝わった。日本のネギは加賀群、千住群、九条群の3つに大別されるが、全2者が白い葉鞘部を食べる根深ネギで、主に東日本で栽培。九条群が細くて分けつの多い葉ネギで、主に西日本で栽培される。中国でも、太葱は北部、葉葱は中部や南部に多く、中国で系統が分かれた後に日本に伝わったと考えられる。また太葱の系統は、冬季に生長を停止し地上部が枯れ休眠する夏ネギ型の品種が多く、寒冷地に適している。一方、葉葱の系統は、冬季も休眠せず生長を続ける冬ネギ型の品種が多いため、暖地で栽培される。
 近縁のアサツキ、ワケギ、リーキ(西洋ネギ、ポロネギ)、エゾネギ(西洋アサツキ、チャイブ)は、それぞれ別種である。ワケギは本来ネギとタマネギの雑種で球根により増やすが、関東では株分かれした細いネギのことをワケギと称している場合が多い。また、タマネギ(春先には葉ネギの代用として利用もする)、ニンニク、ニラ、ラッキョウなどもネギ属の野菜である。野生のノビルも古代から食べられてきたが、本格的な栽培はされていない。他に西洋では、エシャロット(英名ではシャロット)というニンニクのように分球する小型タマネギの一種があるが、日本ではラッキョウを若穫りしたものがエシャロットと称して流通している(*)。

@ 加賀群
 金沢で生まれ、北陸、山陰、東北に分布する。加賀太、秋田太、札幌太、会津根深葱、松本一本など。下仁田(群馬)は、分けつせず直径4〜5cmまで太り、加熱すると非常に甘く柔らかくなる。徳川幕府にも献上され、殿様ネギとも呼ばれる。岩槻は、加賀群でありながら葉が細めで柔らかく株分かれもし、関東で葉ネギとして利用。

A 千住群
 東京の江東区が発祥、関東、中部、東北に分布する。黒柄(葉色が濃緑)、赤柄(葉色が淡緑)、合柄(黒柄と赤柄の中間)、合赤(合柄より赤柄に近い)など。茨城県の那珂川流域で作られる赤ネギ(外鞘が赤紫色)も千住群で、辛味少なくレッドポアローとも呼ばれる。

B 九条群
 京都生まれで、分けつの少ない九条太と、分けつが多く10本ほどにもなる九条細がある。福岡で栽培されている万能ネギというのは銘柄名で、品種は九条細である(**)。

C その他
 越津(愛知)は、千住ネギと九条ネギの雑種から生まれ、葉鞘部の白い部分を土寄せして長く育てることも容易だが、緑の葉部も柔らかく、根深ネギ、葉ネギどちらにも利用できる。
 櫓(ヤグラ)ネギは、北陸から東北にかけて作られている冬季に休眠する寒地型のネギであるが、一般のネギのように葱坊主に種ができず、小さい苗を生じて火の見櫓のようになり、さらに苗は2階状だけでなく3階状にもなり、二階葱、三階葱、軽業葱、台葱、龍爪葱、羊角葱、朝鮮葱、唐葱、オランダ葱など様々な別名がある。タマネギにも同様のものがあり、top onionと呼び欧米で栽培される。

 似て非なるものが正式名称として認められてしまっているものでは、例えば菓子材料のアンゼリカは、日本ではフキの砂糖煮のこと。カタクリ粉はジャガイモ澱粉、ワラビ粉はサツマイモ澱粉を指す。クズ粉はジャガイモから作ったのもあるが、これは本物も結構手に入る。

** ちなみに、北海道でおなじみの「らいでんすいか」は銘柄名で、他地域でも作られている一般的な品種だが、昔とは品種が異なる。一方、全国的に有名な赤肉の「夕張メロン」は「夕張キング」という品種で、夕張農協の生産者以外には門外不出というF1品種。「札幌キング」であれば一般にも入手可能で、どこでも栽培できる

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