一九九五年
「欝」
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>表面
一・九月の空に忌
二・魂狩り
三・狂おしい肉の花
四・スラジョンカンナ
五・彼岸

>裏面
一・腐った魂を白い船に乗せて
二・ベニテング春うらら散歩道
三・子消し唄 赤い目の鬼
四・壁土喰う病気(その弐)
五・ゆらぎ
歪んだ口元から、だらしなく涎を垂らして煙の中を漂っていると
鏡の前に神が降りてきた。会話はまとまらず井戸の中にポトリと
落ちて行く。その音がまるで遠い昔の記憶のように響き、わたし
は正月の餅を喰う。ここから見える景色は灰色の空と寂れた街を
歩く老人の背中だけで、あとは売れない演歌歌手の公演チラシの
貼られた電信柱だけである。歩いて十分ぐらいの所に彼の住んで
いる所に麻尾病院がある。外出は看護婦のシノさん同伴でないと
許されずギターを持って歌う事さえままならない。切っても切れ
ない血の因果と背中のコブに夢を託して今日を生き抜く。どこま
でも行くあても無くただ今日を昨日の明日と思い込んであの橋の
下に降りてゆきケシの花の成長をまるで自分の左腕の夢とすり替
える為に眺めているのだ。少しの希望と喜びを与えられ、後は退
屈と不満の嵐のなかゆっくりと死を待つだけなのだ。この逃れる
ことのできない神の罠を背負い毎夜、まぼろしを蹴散らして眠り
につく。ゼロで全滅、花シラズ。なんと絶望的な言葉だろう。あ
の人にあえるだろうか。この何年かは夢を見ていない。わたしは
死んでいるのだろうか。はじめからいなかったのだろうか。もし
そうだとしたらこの四国は何なんだ。

1995.6.9.AM4:45 井内賢吾
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