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 ☆蒼桐 栞織さんからの手紙(蒼桐 栞織さんの投稿)
   はじめまして蒼桐 栞織と申します、ぶしつけにお手紙を受け取られて、ご覧になってもさっぱり何事かご理解いただけないとは存じますが、
  忍さんのご主人について少々思う所が逢ったので勝手では御座いますがお手紙致しました。
   最初は家事に疲れた専業主婦といった感じでしたが、耕作さん(吉良)と気持ちが通じ合っているという、
  勘違いではあれ、彼に愛情らしきものすら覚えさせたのは凄かったですね、愛情は差別無く人間を変えられる物だと感じました。
    憶測で申し訳ないですが、以前生きてらっしゃった素敵になられる前のご主人との長く幸福感や進展性の摩耗した退屈な夫婦生活が無ければ、
  摩り替わった後のご主人にきっと不信感を抱いてらっしゃったでしょうね。
    以前『殺人機を愛した女性達』というタイトルの本を読んだ事があります、馬鹿馬鹿しいと思ってその時は買いもしませんでしたが『彼』でしたら
  良くも悪くもある種の心地よい刺激として魅力を感じられたんでしょうね。
    日々自分の奥底に非日常を抱えて生きている男性にとって少しでも平凡で安らぎのある、特に徐々に優しくなってく女性は、
  本人が望まなかったとしても心地よいものだったでしょう。
    いつも私は考えます。 あのままいつ貴女がご主人の弾みで殺されてもおかしくない『幸せな状況』にいたら、吉良はどうなっていたんでしょうか、
  確実に女性を殺しながらも普通に女性を感じる人に立ち直っていたかもしれないと。
    最初、川尻耕作の容姿を見た時、子供に無関係で仕事人間の、それでいて能力も無い下戸、無口ながらも会話があれば愚痴ばかりで、
  最後には怒鳴って部屋に引っ込んでいく様な人だろうなと思ってはいたんですが。間違い無く 貴方の記憶にはほんの少しの間の彼の姿ばかりが残って、
  時折寂しくなったりされているでしょうがどうか残された隼人くんとささえあって生きて言って欲しいです。
    貴女が猫を殺してしまった時も、誰も悪くないというセリフは、最初の猫を締め出した事へのごく普通の誤りに無かった手の柔らかさを持っていたように見えていましたね、
  この回ではすっかり昔から仲睦まじい夫婦の様でしたよ。
    我々もそういった家庭を覗かせて頂いて彼方がだんだん愛らしくなっていくのを読みながらご主人を次第に羨ましく思っていった
  のも事実です、もちろん貴女や隼人くんも含めてですが、奇妙な温かさに触れさせて貰いました。
   現在、耕作さんを行方不明だという風に受け取られて捜索願いなどを出していらっしゃるか、細めに読みかけの本を開いたまま
  の机のある書斎を残されてらっしゃるか存じませんが、お二人のご冥福を心よりお祈り申し上げます。