ファンタジー・コメデイー。
 へんにシリアスにして大失敗するより、こういうまとめかたのほうが効果的だろうなと思いました。
 物語は、真夏の夜の夢にお家騒動をミックスさせ、サービスでタイムマシンも入れてみました、ってところでしょうか。
 内博貴が降板したため、本来は重要な役になるべき騎士アルバニーの存在がぼやけてしまい、誰が主役なのか宙に浮いてしまった感じ。
 プログラム等では錦戸演じる直樹が主役らしいけれど、どうみてもそれは無理。主役としてみるには、話の軸になっていない場面が多すぎる。
 といって、アルバニーはインパクトに欠け、妖精達はハナから脇の設定。その他の役も見せ場はあるものの、やはり軸にはなっていない。つまり、太い枝ばかりで支え合ってる舞台というのが印象。
 

 意外にも面白くて、大笑いして帰って参りました。
 適材適所な役どころで、軽いタッチで夏の時期に観客に笑って帰って貰おうという熱意が感じられました。大いに楽しみました。
 中日を過ぎた頃なので、アドリブも多々あったようで、1度きりの観劇のワタシには、オリジナルの芝居はどうなのか、さっぱり???な箇所もありました。笑っちゃいけない人が笑いをかみ殺すってのは、千秋楽や貸し切りなどの特別な場合を除いては、あまり好ましくないことではあります。
 アドリブをする時には、受ける側は決して笑わずに応じなければ。その点でいえば、横とヒナはさすがでした。全く笑わずに一歩も退かないアドリブ合戦を繰り広げておりました。
 芝居心というのは、アドリブや咄嗟の機転がどこまで利くか、も関係しておりまして、それが出来る人は次の舞台も期待してしまいます。

 次に個々について感じたことを。どうしても舞台となると、もともと舞台が好きなためそういう見方になってしまい、視点が厳しくなります。普通に舞台を観た感想になるため、辛口な寸評の苦手な方は読まないで下さいね。
 忙しいスケジュールで頑張ってやったんだから!というのは評価の理由にはならないんですよ、ワタシの場合は。やっぱり、やる以上は良くなって欲しいんで、評判が評判を呼んで東京で再演されるような、そんな作品になって欲しいゆえの辛口だと思って戴けたらね。ジャニーズと無関係な一般のお客さんがチケット買って見に来たいと思ってくれるような、そんな作品を願ってしまうんです。最終的には。
 ほんと、どーでもいい作品なら、わざわざこんなこと書きませんから。




 公表では主役の直樹。
 錦戸は台詞も言えるし、感情表現も自然なのだけど大問題がひとつ。これは大きな課題になると思うが、肝心の桃と恋人同士には全然見えない。
 もっとも、視覚的にも見えないという大問題が最初からあるが、演技で恋人同士に見せるという気持ちが感じられない。駆け落ちするほど深い関係の恋人同士なのに、ほとんど視線を合わせない。とんでもない世界に迷い込み、事件に遭遇してもこのカップルは目で会話しない。
 錦戸の芝居で一番よかったのは、魔法にかかって桃に悪態をつく台詞。
 ジャニーズの大半の課題だけど、女優とのラブシーンや恋人同士といった演技が出来ていない。あまりにも出来ていないので、「それがなければ」という結果になってしまう。
 無理して恋人設定を作らなくてもいいのではなかろうか。


 アルバニー。
 急遽の代役を演じた中間淳太。役代わりのため演出の指示なのだろうか、髪の毛で顔が見えない。これはヒーローをやるうえで舞台では大きなマイナス。演出上の必要性がなければ、ヒーローは顔を隠してはいけない。
 台詞を覚えるだけで精一杯だったのだろうが、中日を過ぎていることだしもう少し滑舌の稽古を。台詞が流れてしまっている。
 終盤の殺陣は見せ場であり、このシーンは迫力もあり良く仕上がっているだけに、前半部分をもう少し作り込んで欲しい。場の軽さに流されず、一本の芯を持って演じきれば、おのずと目立つ役なのだから、役をもう少し掘り下げてみては。


 ギルデスターン。
 渋谷すばる。重みのある声で、腹に一物のある人物を好演したが、いかんせん外見で損をした。鬚をたくわえ、追われた世継ぎという設定にしては渋谷は外見が愛らしすぎる。鬚ではなく、顔に傷を負わせ、それを鬘で隠すという方法で世間の目を誤魔化したほうがよかったのでは。
 大倉と役を入れ換えたほうが良かったのでは?と思えた。しかし、それはあくまでも演出の問題で、渋谷の好演は間違いなかった。舞台向きの声は大きな魅力であり武器。


 シートン。
 丸山演じる王女の護衛。いわゆる儲け役。
 なかなかの芸達者ぶりで、会場を沸かせた。ともすれば、悪目立ちしてしまう落とし穴のある役どころだが、やりすぎることもなく、キッチリ収めた。センスのある役者だと思う。中盤の男に戻る場面は割愛してもいいかな、という設定の中途半端さを感じたものの、丸山自身は完璧に演じていたと思う。彼の次回作が楽しみ。


 コンフィティ&エルフィン
 2コ1的な役割。安田と大倉。
 トジな妖精で、役割を十二分に果たしていたし好演。ただ、大倉については、ギルデスターンを見てみたかった。


 エミリア。
 演技派の横山は、復讐のために女装して機会を狙う役。日本人ばなれした容貌に高貴なドレスがよく似合い、立ち姿はそのまま貴婦人だった。ただ、台詞を喋るとどこか嘘っぽくなるのが残念。台詞の語尾がどうしても流れてしまっていた。無理して作らず、高貴に雰囲気を醸し出すことに重点を置いたほうがいいのではなかろうか。


 アントーニオ。
 総合的には一番良かったのが村上演じるこの役。外見的にも演技にも、注文をつけるところは感じられない。殺陣も迫力があり、見事だった。声の弱さが多少あるものの、場数を踏めば舞台の声になると思う。


 マーガレット&桃
 マーガッレットは外見も仕草も王女らしく、相手役との釣り合いもとれて良かった。王女にしては品が落ちる箇所があったが、作品全体の雰囲気と演出に添ったものだろう。注文があるとすれば、髪型はアップに結ったほうがより王女に見え、相手役との見た目のバランスも取れたと思う。顔の周りの髪をカールさせて下ろすと老けて見えてしまい、若い相手役との年齢差が一層際だってしまう。
 桃は声はひじょうに愛らしく初々しいのだが、外見がまるで逆のため損をした。相手役の外見が若いため、恋人同士の設定ならば少しでも若く見せるための工夫が欲しい。登場した第一印象が「どこのおばさん?」と思えてしまい気の毒なほど。直樹と恋人同士に見えなければ、物語では最後まで存在の意味を持てない。これは当人の努力等を語る以前に、キャスティングに問題があると思う。

                  

マジカル・サマー  関ジャニ∞/サマー・スペシャル