笑いの大学

 役所広司さんと稲垣吾郎さん主演の、昭和初期を舞台とした作品です。第二次大戦が開戦したばかり、って頃でしょうか。
 笑いの大学という劇団の座付作家兼演出家の椿(稲垣)と、提出された台本を検閲する、国家警察官の向坂(役所)が、お互いの立場の違いから当初は反目し合いながらも、やがては心を交流させていく、という物語。
 とてもスムーズで、ゆっくりと、やさしく描かれてます。しかし、背景に出てくる映画や芝居の演目が、ロマンス物から戦争物に移り変わっていく等、変わりゆく世相を随所に反映させてもいます。辛く哀しい時代へのギリギリ手前ってことでしょうか。
 笑いあり、心温まる場面あり、そしてラストはもの悲しい。それが嫌味や押しつけがましくないのは、ひとえに役者の力量もあるのでしょう。特に役所さんが良かった。ともすれば、単に高飛車な権力者となりつつある役を、実に人間味のある堅物に描いてました。役所さんに引き込まれるように、競演の吾郎ちゃんも良くなっているのが判りました。
 映画の客層には、初老のサラリーマンが多く見受けられましたが、楽しんでいるようでしたし、お客さん全体が「映画を観ている」という雰囲気だったのも印象的。みんなで笑い、みんなでしんみりとなった2時間あまり。
 本編が終わっても、館内が明るくなるまで誰も席を立たなかったことが、この作品への評価ではないかと思いました。とても地味ですが、心地よい佳作。




ハウルの動く城

 お待たせしました。公開前から辛辣に声優陣をコキ降ろしていたワタクシ。ええ、その言葉、覚えておりますともさーーーー。
 それを踏まえて正直に申し上げましょう!!!!
 ワタクシ、ハウル様に萌えました。惚れたわーーーーーー!!!!
 不肖、このワタクシ。ハウル様がご登場した瞬間、ビビビッッッ!と聖子ちゃんより激しく電流が走ってしまい、木村拓哉さんが声を充てているという事実すら、頭からブッ飛びでしたわ、奥様っっっ>誰のこと?
 もともと「漫画に出てくるような美形が好き」なワタクシ。そのまんまな漫画に登場する美形よ、転ばないほうがどうかしてるってーの。見事に転んで複雑骨折。全治2ヶ月、ってとこだわよぉぉぉぉ。ホーッホッホッホッ。
 宮崎駿夫御大に敗北宣言。
 いやぁ、マジに、宮崎御大の描く美形キャラに転ぶとは、さすがのワタシも想像もしなかったわ。まさか、あんなにカッコよく登場するなんてさ、思わないじゃないよ。あれは違反行為としか思えないわーー。
 弱虫な魔法使いという設定のハウル様ですが、ちっとも弱虫じゃないです。ちょっとワガママで甘ったれなだけ。そして、僅かにナル。基本的にナルは嫌いなワタクシですが、あの程度なら不問にしますとも。だって、ハウル様ってばヌードになって、(半分だけですけど)オシリなんか見せて下ってますのよ〜〜。サーピス満点ですのよ〜。
 空飛ぶハウル様、走るハウル様、佇むハウル様、倒れるハウル様。もうワタクシ、ハウル様しか覚えてませんっ>キッパリ
 だから、物語的に説明不足や、端折りすぎな部分が多々あっても追求しません。ワタクシ、ハウル様さえ見られればそれで満足。
 とはいえ、見逃せない部分もないわけではなく、話題の声優陣。
 ハウルの木村拓哉さんですが、なかなか良かったと思います。例の拓哉節が出たらどうしようかと怯えまくってましたが、それは極力なかったのではないかと。本人もキムタク感を出さないよう努力したのかな。「ってゆーか、それ、ヤバくない?」的な雰囲気は皆無。随所に無機質すぎる台詞があったのも事実ですが、ハウルはワケありな魔法使いなので、それもOKかな、と。だいたい、トトロ以降の宮崎アニメで主役の声が良かったこと無いんで、それを考えたら今回なんて、成功じゃないのかな。観客の反応も概ね良かったですしね。劇場を出る時に盗み聞きした下馬評は、「見直したよ」って声が大半でした。
 ソフイの倍賞千重子さんは、90歳になってからは素晴らしい。若いのに、魔法で老人になったっぽさが良く出ていて「さすが」と思いましたが、19歳になった途端に無理を感じる。普段から自分の声に加え、表情や仕草全てで勝負している女優さんなだけに、声だけを替える特殊さは荷が重いのかも。
 脇にいくと、三輪明宏さんが最高のキャスティング。1ミリの隙もなく、荒れ地の魔女そのものでした。脱帽です。
 子役も宮崎アニメらしくて好感が持てました。が、火の悪魔カルシファー役の以前は若人あきらだった人。この人だけはNG。
 原作は「ハウルと火の魔法使い」だったと記憶しているのですが、この作品では重要な役どころだと思うんですね。ハウルとの関係や、全てのことがカルシファーを通して関係している、というような。それなのに、その重い役を実に軽く仕上げたのはどういう了見なんじゃーーー!!!!と怒り心頭。
 重要であるはずの役を、ただの脇役に仕上げた罪を、ワタシは忘れない。「千と千尋」のカエル役とは違うぞ、オロカモノめっ!
 シブリとどんなコネがあるんだろう?と勘ぐってしまうほど、ワタシにとっては最大のミスキャストです。三輪さんが出色だっただけに、惜しいキャスティングでした。
 作画や動画については、今更文句のつけようもなく、宮崎アニメらしさも随所にあり、楽しめると思います。時代背景が、産業革命時代の英国っぽかった(でも英国ではない)のですが、「スチーム・ボーイ」も同じ。好まれる時代なんでしょうかね。
 それと、宮崎さんの描く航空母艦って、なんでムカデみたいなデザインなの〜〜。
 とにかく、超話題作ではありますが、腐女子にはたまらないハウル様萌え!な作品なので、あと1回くらいは必ず観るつもりです。ワタシ的には、前半の金髪なハウル様が特に好きです。
 この作品は、宮崎サンタから全国の腐女子への、クリスマスプレゼントだと思ってます。