フリーダム&O2&ルシファード中心の”あらすじ”


フリーダム・M・ゼロ=一匹狼の宇宙船キャプテン。マリリアード存命中に、ラフェール星コンピュータ”オドロ”が創りだしたマリリアードのクローン体。シタン病で死期の迫るマリリアードを復活させるため、オドロは男性タイプと女性タイプ2体のクローンを創り、マリリアードの記憶を移植した。フリーダムはその女性体。


 死期が近づくマリリアードのために、ラフェール星のコンピュータ”オドロ”は密かに2体のクローンを創った。オリジナルと全く同じタイプの男性体。そしてもう一体は見事な金髪の女性体。
 マリリアードの記憶を移植したものの、本来男性体のマリリアードは女性体に抵抗を示し、疑似人格を表層意識に植え込み「フリーダム・M・ゼロ」という名をつけ、ラフェール人としての全てのしがらみを捨て、自由に宇宙を飛び回る人生を授けた。
 一方の男性体クローンは、従来どおりマリリアードとしてラフェール人の未来のため、与えられた運命を受け入れた。
 フリーダムとマリリアードは定期的に会い、別行動中の記憶を共有させた。疑似人格下のフリーダムはともかく、どちらもマリリアード自身であることには変わらない。オドロの気まぐれで創られた2人の自分だったが、自由に宇宙を旅したいというマリリアードの願いは、もう一人の自分が叶えてくれるはずだった。
 しかし、ラフェール人の運命を我が身に受け入れたマリリアードは、常にウロボロスに狙われ、乗っていた宇宙船ごとテロにより爆破された。
 同乗していたO2を脱出させ、全身に破片を浴びた操縦室のマリリアードは、崩壊しかけた宇宙船ごと亜空間へワープし、O2を救った。
 自由になるはずだった、もう片方のマリリアードは再び舞い戻った。マリリアードを亡くしたO2が、憎悪のために能力の封印を解くことのないよう監視するため。万が一暴走したときはO2を自分の手で殺す。それが生き残ったマリリアードに課せられた定めだった。
 かくして、必然的にフリーダムとO2は出会い、潜在的にマリリアードと似た口調のフリーダムにO2は惹かれ、二人は任務のためにしばしば組む機会を増した。
 ある任務中、必要に迫られてワープした先に、マリリアードを乗せたまま姿を消した船が、残骸となって目の前に現れた。マリリアードの死の事実を、絶対的な形で見せられたO2は意識を錯乱させる。
 O2の錯乱は船じゅうに蔓延し、強烈な念力となり乗組員を苦しめ、自殺する者が後を絶たない状態になった。なんとか正常な精神を保ち続けていられたフリーダムは、O2の意識をもとに戻すため側を離れず、泣き叫ぶ彼を慰めいたわり続けた。
 その後、フリーダムの妊娠が判明し、堕胎を要求するO2を振り切り、フリーダムはラフェール星コンピュータ”オドロ”の医療エリアにて、医療漕内で昏睡のまま男子を出産した。
 フリーダムの体に流れるマリリアードのDNAを受け継いだ男の子は、マリリアードと同じ黒髪と、O2と同じ黒い瞳を持って生まれた。
 生まれた子にラフェール人の宿命を背負わすことのないよう、フリーダムは注意深く生まれた子を育てた。子供にはオスカーシュタイン姓を名乗らせ、O2の子供という事実を明らかにすることで、ラフェール人との関連性を遠ざけ、さらに名前をルシファードという、地球系の名前にし、第三者の想像がラフェール人に結びつかないよう念を押した。
 3歳のときに父親のO2と対面。フリーダムがマリリアードの女性体クローンだと偶然知ったO2は、子供のために同居を提案し、ルシファードの希望もあり親子は短い間ともに暮らした。
 父親としての自覚と配慮が欠落しているO2は、ルシファードのことで度々マリリアードを怒らせ、遂に半殺しの目に遭わせられ、妻と子に逃げられた。
 6歳から9年間、ルシファードは、フリーダムことマリリアードに、広い宇宙で育てられた。身を守る術から、合法的な盗みの果てまで。一人で生きていくために必要なことを、幼いルシファードはたたき込まれた。
 15歳になったルシファードはフリーダの元を離れ、父親の監視下で連邦軍所属の士官学校に入る。集団生活に馴染めない奔放なルシファードは入所初日に脱走を試み、同級生だったライラ・キムに阻止され、それが縁で二人は性別を超越した親友となる。
 17歳のある日、ルシファードは連邦の科学者に秘密裏に拉致され、人体実験を受ける。やはり、父親譲りの能力が人の知れるところとなり、その生態系への探求と、日頃からO2をよく思っていない私怨も加わり、実験と虐待を兼ねた責め苦が続けられた。
 生ながらに解剖される寸前にルシファードを救い出したのは、怒りと報復に支配されたO2だった。拉致にわずかに関係した人間に至るまで、O2の容赦ない報復が繰り返された。
 投薬で廃人になりかけたルシファードと2ヶ月間精神結合をし続け、周期的にくる精神錯乱から、父親は息子を取り戻した。


 以上が、O2、フリーダム、ルシファードを中心としたあらすじです。このエピソード自体は、回想などで語られるのみで、本編としての小説は残念ながらありません。ルシファードの監禁も、断片的に回想シーンとして書かれているのみ。
 O2とフリーダムの出会いは、別の小説の最後に収録されてますが、ルシファード誕生となったキッカケは、ルシファードを通しての言葉でしか説明されていないので、あやふやです。
 O2は、もともと多種族のDNAを掛け合わせた遺伝子操作によって生まれたデザイナーズチルドレンであり、例外として認められた規定により、生殖細胞の削除、40歳までの一代限りの短命という基準で生まれているのです。
 しかし、ウロボロスの研究所で肉体に致命的な打撃を受け、”オドロ”によって遺伝子操作された新しい肉体を与えられたときに、いたずら好きなオドロは元々のO2の遺伝子を少し変更したらしく、寿命を先ラフェール人と同等にし、削除された生殖細胞を与えたようです。
 先ラフェール世代の遺産であるコンピュータ、オドロは、O2の体に息づく先ラフェール人のDNAをメインに再生したのか、髪も銀色に変えました。
 O2がオドロの企みを知ったのは、フリーダムの妊娠を知ったときではないかと思われます。自分に子供ができることは、彼の思考範囲を超えていたため、対処の仕方が判らずに「堕ろせ」と言ったのではないかと。デザイナーズチルドレンとして生まれた自分は、子孫を残すわけにはいかないという意識が働いたのではないかと、O2を擁護してしまうワタシです。
 それに引き換え、フリーダムことマリリアードはシタン病のため、子孫を残したくても出来ない境遇であったわけですから、思いがけず授かった命を奪うことなど論外だったのでしょう。
 とはいえ、もともとは男性なわけですから、自分が妊娠出産するという現象は、理性では理解出来ても、精神的に納得出来るわけではなかったらしく、ラフェール星の医療漕につかり、管理をすべてオドロに任せ、意識のないまま出産を迎えたわけですから、どっちもどっちかも。
 フリーダムは通常は疑似人格のフリーダムが表面に出ていますが、必要に応じて本来のマリリアードも出てきます。O2と同居する前は、フリーダムは母親であり、マリリアードは父親の役目も果たせたわけ。
 ルシファードは料理、裁縫など全般的に得意ですが、それはマリリアードに教わりました。マリリアードは、ラフェール星で一人で暮らした期間、彼を姫だと認識したオドロによって、完璧な女性として育てられたのです。そのため、ルシファードが母親の手伝いをしながらキッチンに立つときは、フリーダムの意識はマリリアードだったようです。
 パワフルだけど粗野なフリーダムとは違い、マリリアードは優雅でやさしく理知的で、ルシファードはそんな母親も好きだったようです。
 誰にでもやさしく、穏やかだったマリリアードはO2にだけは平気で意地悪や辛辣なことを言ったりしたりし、他人に冷酷で厳しいO2はマリリアードに対してだけは寛大でした。二人とも、自分の持つ本音の部分を唯一さらけ出せた相手だったのでしょう。だから、マリリアードは命をかけてO2を助け、O2はマリリアードに終生執着し、彼が最後に言い残した願いを聞き届けているんですわ。O2は超A級テレパシストだったため、自分の出生のことも銀河系で起こっていることも、全て感じてしまえたわけです。全部判ってしまうほどつまらなく、寂しい人生はないわけですからね、淡々と自分に課せられた義務を遂行する人生しか選択肢を感じられなかったのです。
 そこに現れたのが、自分と同等の能力を持つマリリアード。何もない荒涼とした世界に、初めて現れた同胞だったのでしょう。
 「オリビエ、私の代わりにラフェール人を頼みます」
 そう言い残すことで、O2の意識は遺言に執着し、たった一人の親友を失った悲しみで能力を解放してしまう、という事態から回避したわけね。
 マリリアードは、もう取り替えの効かないO2を死なせたくなかったのでしょうね。自分には女性型マリリアードという半身がいることを知っていただけに、自分が死んであと、そっちにO2を託せるという計算もあったでしょうから、安心して身代わりになれたのかな。
 そこまでして助けるのに、O2が力を暴走させ生体兵器と化したら自らの手で殺すつもりで、絶えずO2を見守っているマリリアード。愛するが故に命をかけて助け、愛するが故に自分の手で殺す。そして後を追うんだろうなぁ。単純じゃないぶん、マリリアードのほうが凄いとワタシは思います。O2は単純なんだもん。
 
 最後に、先ラフェール人というのは、現ラフェール人の前の世代のようで、現ラフェール人と違い、とてつもない能力を持っていたらしいです。
 ところが、長い歴史のなかで、能力に空しさを覚えたのか、戦意を持たない温厚な種族へと変わっていき、先ラフェール人の残したものは忘れられていたわけです。ただ、王家には先ラフェール人の血が受け継がれ、ごくたまに先ラフェールの力を備えた「先祖返り」が生まれます。
 それがマリリアードであり、叔父でありO2のDNA提供者、ナヴァル(考え方の相違からマリリアードと反目。壮絶な戦いを繰り広げ、力尽きる。オリジナルのマリリアードも、この戦いが致命傷となり絶命した)。
 先ラフェール人に近いDNAを持つ両親から生まれたルシファードは、近いというより、先ラフェール人かも。
 そういう意味では、サラディンとは絶滅種族の生き残りという、絶対的な共通点があるんだなぁ・・・なんて思うワタシ。

 ここまで読んで下さっている方がいるとは思えませんが、辛抱強いアナタにオマケです。この下に、父親が大好きな4歳のルシファード坊やの活躍に翻弄されるO2の図をどうぞ。父親としての責務を果たすようフリーダに強要されているO2ですが、頻繁に義務違反を重ね、そのたびに「お仕置き」されるO2。