Another's ANOTHER   大阪松竹座  2006.8.18



 FTONツアーからの抽出のような構成のショーから始まり、客席がヒートアップした頃に唐突に芝居の導入を迎えて第一部の幕。
 あれって、芝居の導入で正解なんだろうか・・・・?明らかにキャラが違うけど。特にすばちゃん。あれ、淋太郎じゃないよね?(笑)
 声を張った台詞のすばちゃん、う〜んいい声してるなぁ。口跡明瞭で台詞の端々まで聞き取れるのも強み。それでいて、ちゃんと感情が台詞に乗ってるのよね、舞台向きな声は貴重です。
 今回は抑えた声でたどたどしい口調だったけど、去年のような低く張った声も良いのよねぇぇ。

 お話の筋は棚の上に放り投げて、出演者の演技のみ。

 ヨコは相変わらずの上手さで、台詞のメリハリもあり雰囲気もしっかりしていて安心して見ていられます。さ行が流れてしまう時が多々あるけれど、個性の範囲内。

 ヒナは意外に演技派ぶりを発揮。特異な役にもかかわらず前後を全く描かれないというハンデのなか、本人は色々と解釈をし肉付けしたのだろうという跡が伺える。トクマだけ見ていても違和感がないのはそのためかと。人と接するとき、その人の人生全てを理解してから接しないように、無の状態で見ても違和感は感じなかった。二重人格同士の葛藤と、最後に裏の人格でセリ下がる様は圧倒された。

 すばるは、失語症の過去を持つのか、うまく喋ることの出来ない青年。気持ちを歌で伝えるという、すばるのために作られたような役。そのためか、もちろん型にはまっているわけですが、もう一枚プラスαが欲しかった。

 マルは相変わらずの芸達者ぶりで、こちらも安心して見ていられる。漂流して、隅でこそこそと身繕いをする仕草が完全にコレキヨだった。カメレオンのように役の度に姿を変える、まさに役者。シリアスな役も、喜劇でもこなせる貴重な存在。

 亮は女好きの今時の若者という役ながら、気の毒にそれを発揮する場面がほとんど無かった。劇中、唐突に歌場面があるが録音のようで残念。劇中の歌は気持ちを表すためのものだから、踊っているわけじゃないのならなるべく生で歌うほうが良い。せっかくの場面なのに、男女それぞれが気持ちよく自分のパートを歌いました、というのでは育む想いは伝わらない。

 ヤス。とても器用で上手さを感じる。コマネズミのような動きの中に、友だちや仲間に対する強い憧れが見え隠れしている。本当の自分を指摘されると、動揺したり怖がる姿が印象的だった。

 たつよし。なぞめいた役どころで設定はおいしい。しかし、設定が得なだけにそれに溺れると損に転じる。歌場面もあるし恵まれた使われ方なのに、いかんせん脚本に無理があり過ぎて、そのツケを一人で背負った感がある。
 個人的には、台詞の声をもう少し作れるようになると見違えると思う。

 Jrは総じて頑張っていた。もっと良くなって欲しいという観点からいえば、中間淳太。威勢が良すぎて台詞が聞き取れないことがある。特にサ行とラ行はしっかりと克服して欲しい。体のストレッチと平行して舌のストレッチも。「あ・え・い・う・え・お・あ・お」の発声を「ん」まで開演前にすると格段に良くなるはず。
 しかしながら、彼の溌剌とした舞台姿には感動した。どんな場面でも、精一杯の力を出し実に真摯に努めていた。その気持ちを忘れずに、精進して欲しい。その努力が報われるよう、敢えて改善すべき点を挙げてみました。感情のままに押すだけではなく、引くことも可能になると深みが増すと思う。


 セットは、今どき和船か?でビックリでしたが、グレーを基調にした書き割りのセットと、セリを使った場面転換のみ。油圧を使った大がかりな装置もなく、衣裳もいたって普通。
 ショー場面でも同様で、セリを使う以外では目立った装置はナシ。経費面からシロウト目にも純利益が見込めそうな興行でした。
 舞台上の規模的には、500人くらいの小屋で、若手の新進劇団が公演しているという感じ。
 1日3回公演で全公演完売御礼の興行とは、どう好意的にみても思えないくらいお金がかけられてません。これだけ興行成績が上がれば、そこそこ装置や衣裳にもお金をかけられると思うんですけどね。どこに行ってるんでしょう。
 全国ツアーに回っているならいいんですが、たぶん、来年のマッチのコンサートや
日生劇場あたりに投入されてんだろうなぁ。これも輪廻だからしゃーないよな。
  
 ショー部分はFTONコンもあったし、全国ツアーもあるので芝居が終わったあとのフィナーレ的なもので十分だと思う。
 メンバーがあれだけ芝居が出来るのだから、ガッチリと芝居で見せたらいいのにと、おそらく観客の大半が思っているでしょう。
 とはいえ、7人もしくは8人全てに見せ場やキャラを立てた佳作なんて、なかなか難しいもんなぁ。せいぜい4人くらいをメインにした筋じゃなきゃ、ゴチャゴチャしてまとまりのない話になっちゃうもんね。
 そんなことを考慮しても、救いようのない脚本だったけども。

 しょーもない脚本のためか、期間後半はアドリブ部分がメインのようにもなっていて、本来の役から脱線した状態になっているように感じる。
 解釈が難解であっても、仮に野田英樹さんの演出・脚本の芝居ならば、芝居の途中で素になり笑ってしまうことはないだろう。そこが課題といえば課題なのかもしれないけれど、客席がアドリブ的要素を求めているのも否めないわけで、それはそけで良いのかなとも思う。
 個人的には、素が見え隠れするアドリブより、やはりガッチリとしたストレートプレイを観てみたい。それだけの技量があるのだから。
 素に近い要素を日替わりで出せば出すほど、役が限りなく当人に近づいてしまい、裏トクマの熱演が唐突すぎて浮いてしまったように映る。それが返す返す残念だったけれど、でもまぁ、あの脚本なら仕方ないと納得出来るのも残念至極。
 宝塚でいうところの、「愛読者大会」(ご贔屓客向けのサービス公演)だと思って割り切ったほうがいいのかな。
 裏トクマ〜〜〜〜!!!君とは別の芝居で会いたかったよ。個人の演技じゃなく、芝居全体を熱く語ってみたかった。
 なんたって、話の展開や設定がコミケの同人誌のレベルにすら達してないもんな。10年前ならそんな同人誌もあったけど、まさかあれはジ○ニさん作じゃ・・。

 いろいろ書き逃げついでに、「もしもこんなアナザーだったら」という話を作ってみました。暇を持てあましている方は、よかったらお暇つぶしにでもどうぞ。
 ある意味、ジャニーズの舞台では無理な話を、敢えて考えてみました。
 役名は本作と同じですが、漢字表示で。このページトップのリンクからどうぞ。


                       BACK