『いいな・・・・・決行は今夜だ』









犬のいる生活4












夜。
キラの足元で丸まって寝ていた俺は、ぱちっと目を開けてベッドから降りる。
静かに、キラを起こさないように鍵を飛び上がって開け、ベランダに出る。
冷たい夜風が俺の毛並みを揺らし、目の前には星空が広がっていた。
『来たか』
闇に紛れていた黒猫が、手摺の上で尻尾を揺らし、そのまま軽やかな動作で俺の目の前に降り立つ。
昼にレイが言っていたこと。それは・・・

          『シン、人間になりたくないか?』

俺はあまりの突拍子のなさに、そして信じがたいレイの言葉に唖然としてしまった。
でも、レイの真剣な顔に冗談だろうと笑い飛ばすことは出来なかった。
『犬から人間になるって・・・・一体どうするんだ?』
絶対に無理だとは思いながらも、聞いてしまう。
『狐は化ける、と聞いたことがないか?』
『化ける?』
『ああ、人間に姿を変えたり葉っぱを金に変えて人間を騙したりすることが出来る』
ふーん、そんなことしてどうすんのかね。
『で、お前は人間になりたい。そして俺も人間になりたい。そこで、お前の出番だ』
『え。なんでその流れで俺の出番になるんだよ』
しかもレイまで人間になりたいという話も聞いていない。
『狐も犬も同じイヌ科だ。気合で何とかしろ』
『何とかなるか!!』
こ・・・この猫は・・・・・っ(怒)
『狐が化けるためにはいくつか手順がある。しゃれこーべ・・・つまり人間の頭蓋骨を頭に載せて、
あの北斗七星向かって礼拝するらしい』
嘘くせぇ!!
『でも人間の頭蓋骨なんてどーやって手に入れたんだ?』
『手に入るわけがないだろう。この前焼き鳥屋の裏から拾ってきた鳥の頭蓋骨で大丈夫じゃないか?』
・・・どんどん失敗する気がしてきた。
『いいからさっさとやれ。お前の主人が起きてくるかもしれないだろう』
『・・・・・へーい』
鳥の頭蓋骨を頭に載せられて、俺は渋々後ろ足で立ち上がり夜空に輝く北斗七星に頭を下げる。
・・・・・・・・・。
『・・・・・何も起こらないんだけど』
『失敗か』
『・・・・・・・もう寝てもイイデスカ』













次の朝。
窓から日差しが入り込み、俺はゆっくりと目を開ける。
頭を目覚めさせるためにぎゅっと大きく伸びをし、あくびをした。
「あ・・・・キラを起こさなきゃ・・・・」
低血圧で目覚まし時計を3つかけても起きられないキラを起こすのは俺の仕事だ。
キラの足元から体を起こすと、何か違和感を感じる。
なんだか歩くにくい。
(いつもより・・・・視線が高い?)
寝る前とは明らかに違う視線の高さに首を傾げつつ、いつものようにキラに顔を寄せる。
・・・・今考えてみると、この時自分はかなり寝ぼけていたのかもしれない。
自分に起こっている明らかな変化に、まったく気付かなかった。
「キラ、キラ、早く起きないと遅れるって」
いつものようにペロペロとキラの頬を舐めて起こそうとしたけど、やっぱり何か変な感じがする。
「・・・・・ん・・・・」
キラが眠たそうに瞼をゆっくりと上げる。

「・・・・・・きみ、誰?」
「・・・・え?」

俺はキラの言葉に、ようやく自分の姿がいつもの姿ではないことに気づいた。
なんか・・・・人間になっちゃってるんだけど!?



                                          続く