キラとリードでつながった世界は、あの雨の日とはまったく違った風景で。
犬のいる生活2
すっかり日も暮れて、人通りもまばら。
「ちょ、待ってシン、急ぎすぎ」
ずっと家の中にいて、窓から外を覗くだけだったから興奮してキラを引っ張る。
喉が苦しくて、たまにオエッとなるけどそんなんじゃ俺は止められない。
信号待ちの時はキラの足元にピョンピョンと飛びつき、リードを絡ませる。
「あ、こら!シン、僕歩けないよ」
「わんっ!わんっ!!」
『キラっ遊ぼっ!』
「もーしょうがないなー」
足に絡まったリードを解きながら、キラは困ったように笑う。
俺もちょっと落ち着いて、地面の匂いをふんふんと嗅ぐ。
異常がないことを確認して、次の電信柱へ。
『見かけない顔だな』
すると、頭の上から知らない奴の声がした。
『なんだよお前っ』
見上げると黒猫が俺を見下ろしている。
俺はウーと出来る限り低くうなり声を上げて威嚇するが黒猫はまったく気にする様子はない。
それどころか俺をフフンって鼻で笑うじゃないか!!
『俺の名前はレイだ。ここの家に飼われていることになっている』
・・・・・なんだその、ことになっているってのは。
『俺はシン。今日が初めてのさんぽなんだっ』
『そうか』
・・・・・・・。
そうかって・・・・。
『ところでシン』
『なんだよ』
俺の自己紹介をさらりと流したレイは、ちらりと視線を俺から外す。
『引っ張られるぞ』
『え?』
「シン、猫にケンカ売ったらだめだって」
「ぎゃうっ!?」
『うわっ!?』
すっかり今さんぽ中だということを忘れていた俺はキラにリードを引っ張られた。
「おや、キラ君じゃないか」
「あ、デュランダルさんこんばんは」
まだ吠えたりない俺を引っ張っていたキラの足が止まる。
目の前に皮の靴。見上げると黒い髪の人がキラに微笑みかけていた。
「君の犬かい?」
足だけだったのが、膝が見えた。
「はい、今日が初めての散歩なんです」
どうやら目の前の男はしゃがんだらしく、今度は白い手が顔の前に出される。
ふんふんと匂いをかいで、特に異常がないのでぺろりと舐めた。
「黒の柴犬か。随分人に慣れているね」
「デュランダルさんはこんな時間にどうしたんですか?」
頭を撫でてくれていた黒い人の手が離れる。
「私の猫が帰ってこなくてね。・・・ああ、あそこだ」
黒い人が指差した先には・・・
「レイ、もう家に帰ろうか」
あのレイとかいう黒猫はこの黒い人の猫だったのか。
黒い人はレイを抱き上げて、キラに挨拶してから行ってしまった。
・・・・それにしても。
「・・・・ぐるぐるぐる・・・・」
『・・・・ギルが悪いんだからな・・・・』
「ああ、家に帰ってご飯食べような」
先程のクールな態度とは一変して、レイは喉を鳴らして黒い人に抱きつく。
・・・・一体なにがあったんだこの2人に・・・・。
「僕らもそろそろ行こうか」
「わうっ」
『おうっ』
あの二人を見送って、俺らもさんぽ再開。
町内をゆっくりと回って家に帰ってくると、
「・・・・あれ?だれか家の前にいる」
・・・・家の前に誰か立ってたんだ。
不振人物に俺はどうしていいかわからず、キラを見上げる。
「・・・・・アスラン?」
・・・・・・・誰?
続く