「おいで・・・・・僕が家族になってあげる」
犬のいる生活
6時10分前。
俺はいつもの定位置に待機して尻尾を振り振り、これから帰ってくるであろう人を待つ。
俺の名前はシン。柴犬の2ヶ月のオス。
生まれてすぐ兄弟と一緒に捨てられて、雨の中鳴いているところをあの人に拾われた。
他の兄弟はもう冷たくなっていて、俺ももう少しで兄弟たちのところへ行くところだったのを助けてもらった。
そう、だからあの人は俺のご主人であり、命の恩人なんだ!
ガチャリ
「シーン、ただいま」
帰ってきた!!
「わんっわんっ!!!」
『キラおかえりっ!!』
9時間ぶりのキラに俺は尻尾を千切れそうになるぐらい振ってキラの足に抱きつくと、キラは少し苦笑して俺の頭を撫でてくれる。
「本当は足かけるのだめなんだけどね。いい子にしてた?」
俺は一生懸命キラに撫でてもらおうと足にまとわり付いていたけど、この前これをやって足を踏まれたことがあるから
ほどほどにして先に部屋に入ってキラを待つ。
「遊ぶ前にごはん食べようね?」
そう言ってキラはキッチンへと入っていってしまう。
こうなったら遊ぶも何もない。
しょうがなく俺もキラの後についていく。
「わうっ」
『ごはんっ』
「はいはい、ちょっと待ってね」
キラは俺用の缶詰を丁寧に開けて、器に入れてくれる。
「はい、いいよ」
置かれた器に、俺は頭を突っ込むようにして平らげていく。
「ああ、そうだ。シン」
ん?と空になった器から顔を上げると、キラの手が目前に迫る。
ぱちりと音がした瞬間、首に重みがかかった。
「くう?」
『何コレ?』
首を振り振り、首を足で掻いて異物感の正体を探る。
「そんなにきつくないと思うけどね。今まで付けていなかったけどそろそろ散歩にも行かないと」
首輪に指を差し入れて確かめてから、キラは俺の頭を軽く撫でてくれる。
なんとなく首の辺りの落ち着かない感じにそわそわしながら、キラの手を舐めた。
俺の頭をもう一度軽く撫でてから仕事部屋に入っていってしまった。
「くーん・・・・」
『キラ・・・・・』
こうなってはいくら鳴いたところで、用事が終わるまで出てこない。
それにこの前こっそりと入ろうとしたら思いっきり怒られてしまったから、扉の前で待つしかなかった。
しょうがなく俺はお気に入りのテニスボールをがじがじと齧りながら、キラが出てくるのを待つことにした。
「・・・・ン、シン・・・・」
遠くからキラが俺を呼ぶ声が聞こえる。
「シーン?ここで寝てたら踏んじゃうよ?」
「・・・・・・・クウ・・・?」
『・・・・・・・踏ん・・・?』
キラが何を言っているかわからないけど、言葉に不吉なものを感じて慌てて起きる。
「あ、起きた」
いつのまにか寝てしまっていたらしい。さっきまで噛んでいたテニスボールが転がっている。
キラはまだ半分寝ている俺の頭を優しく撫でてくれていた。
くあ〜っと大きなあくびをして体を伸ばす。
目を覚ますためにぶるぶるっと体を震わせてから、頭を撫でていてくれたキラの手をぺろりと舐めた。
「じゃあ散歩デビュー、行こうか」
にっこりと、キラは紐のようなものを持って笑ってそう言った。
・・・・さんぽって・・・・何?
正体不明の単語に、俺は首を傾げた。
続く