神棲国口承
「初めてのダンスの相手が自分にとって特別な相手であるほど、あなたに特別な人生が贈られるでしょう」





Glory knight!!6









きらびやかなシャンデリア。血の色さえ彷彿させるほどの赤い絨毯。
人々は特別な今夜のためにお金をかけ、美しさを競い合う。
しかし、そういうことにまったく興味のない者が若干2名。
その2は名は貴族たちが入り乱れるダンスホールの入り口に立ち尽くしていた。
「・・・・・・キラ」
「・・・・・・・うん」
キラとイザークだ。
2人の姿は舞踏会にしてはずいぶん大人しめの服装(というか目立たない服装をチョイスした)だが、
彼らの見目麗しい容姿はどうしても人の目を惹いてしまうのだ。
(ううう・・・・・なんかジロジロ見られてる)
そして以前から公式の場に出ていたイザークよりも、キラのほうに注目が集まるのは至極当然である。
緊張であと一歩を踏み出せないキラに付き合っていたイザークも、集まる好奇の視線に苛立ちを覚え、
とうとう痺れを切らした。
「いいかげん覚悟を決めろ」
キラは小さく頷き、大きく深呼吸をしてダンスホールへと足を踏み入れた。





「・・・・娘は18になりまして・・・・」
(・・・・俺より年上じゃないか)
「・・・領民たちからも慕われて・・・・」
(領民って・・・何人だよ)
アスランはひっきりなしに現れては娘の自慢をする親たちと、強烈なアプローチをしてくる
“自称”花嫁候補たちに心の中で愚痴るぐらい、かなり辟易していた。
彼らの話も聞き流せればいいのだが、同意を求められたり返事を聞かれたりするので、
まったく油断が出来ない。
しかも下手に「YES」と言うと、よくわからない相手と結婚させられてしまう。
かと言って、ハッキリと「NO」と言えないアスランは、かなり曖昧に言葉を濁すしかない。
その他にも下級貴族たちが媚びるようにやってくるので、気の休まる暇もない。
有力な貴族であるイザークにも、この手の者がまとわりつくはずなのだが、
イザークはそういう輩を毛嫌いしているのを貴族内と言わず知れ渡っているので、彼らは自然とアスランのほうへと流れてくるのだ。
ふいに、アスランの後ろから軽い口笛が聞こえた。
「あれイザークじゃん。なんか可愛い子連れてる」
「ディアッカ」
軽そうな声とそれをいさめる声。
今回“騎士”としてではなくそれぞれの家の主の連れとしてやってきたディアッカとニコルだ。
彼らも国内屈指の貴族ではあるが、次男の彼らにすることはあまりないらしい。
あえてするならば、父について挨拶回りぐらいか。
「あの子も花嫁候補・・・なわけないか」
ディアッカの言葉どおり、イザークたちはアスランを気にかけることなく、親しげに言葉を交わしている。
もちろん、イザークは政略結婚によって地位を築くことなど、するはずがない。
その相手がアスランならば尚更だろう。
ディアッカやニコルにしては「友人の堅物イザークが可愛い子を連れてる」ぐらいの認識だったが、
アスランはかなりの衝撃を受けていた。
何故なら、その彼女は
「カミーユ・・・・・!?」
ここ最近湖で会っている彼と瓜二つだったのだから。







時間は少し戻る。
「キラ、はぐれるなよ」
きょろきょろと物珍しそうにダンスホールを見回すキラに、イザークは注意を促す。
とにかく舞踏会は人が多い。
しかもこれが次期王位継承者の婚約者を探す趣向であるため、滅多に趣向に顔を見せないような貴族たちも参加している。
とりあえず、ダンスを一曲踊って友人たちや主催者であるザラ家の面々に顔を見せれば任務終了だ。
この場に長居するわけにはいかない。
「そろそろ最初の曲が流れ・・・」
るぞ、と言いかけて固まる。
「一曲お相手いただけませんか?」
「ええと・・・・・・」
「もう決まった相手がいらっしゃいますか?」
「いなければ是非私めと・・・」
後ろについてきていたはずのキラが、男たちにダンスを申し込まれていたのだ。
「キラ!!」
慌ててイザークはキラの元に駆け寄る。
「失礼。俺の妹に何か?」
内心の怒りを抑え、冷ややかな表情のまま彼らからキラを庇うように立つ。
「イザーク!」
「イ、イザーク殿?」
キラは助かったとばかりに顔を輝かせ、男たちは困ったようにお互い顔を見合わせる。
「申し訳ないが妹はこういう場は慣れていない。遠慮してくれないか?」
「ははははいっ!!」
「申し訳ありませんでしたっ!!」
口調は穏やかだか、イザークの背後からおびただしい黒いオーラに気押されて、男たちは逃げていき、
周りで様子を窺っていた貴族たちもあのイザークの縁者ということで慌てて散っていった。
「まったく・・・油断も隙もないな」
「イザーク・・・ごめん」
はぐれるなと言われたばっかりなのに、いきなりイザークの手を煩わしてしまった。
キラはしょぼん、と顔を俯けてしまう。
「気にするな。それよりも・・・・」
ざわざわと人々はダンスホールの中心に集まってくる。
イザークは膝を折り、俯いているキラの顔を覗き込むようにしながらキラの手を取る。
「私と踊っていただけませんか?姫」
「あ・・・・・うんっ!!」
「こら、喜んで、だろう」
パァァッと顔を輝かせてキラはイザークの手を握り返す。
2人は今夜最初の曲のためにダンスホールの中心へ進んだ。


キラのダンスデビューの相手は絶対に譲れない。



                                           続く
 



イザ、狙ってました。

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