貴族のためのマナー教本25頁
 「ステップを踏むことは貴族にとって必要不可欠なものであり、またステップを踏めるということは一人前の証である」










Gloly knight!!4













青い空。白い雲。
久しく空を見上げていなかったが、あまりにも平和な光景にアスランはぼんやりと見とれる。
この穏やかな時間はどんなに素晴らしかっただろう、・・・・・・・この背中の痛みがなければ。
「あの・・・・・大丈夫ですか?」
燦燦と降り注ぐ日光をさえぎる顔・・・キラがいつまでも起き上がらないアスランを心配して顔を覗き込む。
「すいません、ストライクに悪気はないんです」
僕の言い方が悪かった、と困ったように眉を寄せるキラにアスランは思わず笑ってしまう。
「いや・・・・こちらこそ・・・・・」
と、アスランは自分が逃げ出した理由を思い出してガバッと起き上がる。
「本当にすまない!!」
今も顔を赤らめながらも、アスランは頭を下げる。
「あ、あの何か勘違いをされているようですけど、僕男です!!」
「・・・・・え?」
本当に信じられなさそうな顔をするアスランに、キラはどんどん落ち込んでいく。
「す・・・・すまない。いきなりだったし、よく見えなかったから・・・」
アスランは慌てて謝るが、男だとわかったのに何故か直視が出来ない。
「どうしたんですか?」
アスランの様子を不審に思ったキラは目をキョトンとして尋ねる。
「い、いや、それよりも服を着てくれないか?」
男でも女でも関係ない。彼じょ・・・じゃなく彼の姿は十分に魅力的で目のやり場に困る。
「あ、ごめん。こんな格好だと落ち着かないよね」
アスランの言っている意図を微妙に勘違いしたまま、キラは後ろを振り返る。
すると彼の言いたいことなどわかっているとばかりに、彼の愛馬はキラの代わりの服を咥えて持ってきた。
当たり前のように彼は服を受け取り、濡れて張りつく服をおもむろに脱ぎだす。
「・・・・っ・・・!!」
慌てて視線を逸らすアスラン。
いやいやいやいや彼は男だ、男の前で着替えることなど何を遠慮することがあるのだ、と必死に自分に言い聞かせる。
・・・・というかそうやって自分に言い聞かせていること自体、かなり意識しているということなのだが。
「どうかしました?」
「・・・・いや、なんでもないが」
不思議そうなキラの声にやっとアスランは我に返った。
かなり派手な彼の愛馬とは対照的に、彼の服装はどこにでもいるような少年の格好だった。
そこでアスランは、自分が彼に名乗っていないことに気付く。
「申し遅れたが、俺はアスラン・ザラだ。君は?」
「僕はキ・・・・・・・・」
キラ・ジュールです、と名乗りかけてキラは固まる。
(・・・・・ザラ?・・・・・って今度行く舞踏会の!!)
“趣向”デビューをしていないキラは他の貴族の顔を知らないのが仇となった。
慌てて口を閉じて視線を彷徨わせる。
言える訳がない。自分が男の格好でザラの血筋の者にキラ・ジュールなど名乗れば、ジュール家は一巻の終わりなのだ。
「・・・・・・・・?」
いきなり黙り込んだ相手に、アスランは首をかしげる。
追い詰められた者の口は、何を言うのかというと、
「キ・・・じゃなくて僕はカミーユって言うんだっv(汗)」
「カミーユ?」
「そう!!なんか女の子のような名前で嫌なんだけどね(汗)」
女の子のようなもなにも、キラの口からとっさに出た偽名はキラが生まれて女として育てられると決められた時の名前の第一候補だった。
まあ、名前まで女の子のようでは、自分を偽らなくてもよくなった時に可哀想だと中性的な今の名前になったのだが。
(ああああ僕の馬鹿馬鹿馬鹿ーーーーーーーー!!!)
にっこりと笑った表情の下で、キラは自分を責めまくっていたなどアスランはまったく気付かない。
「カミーユはよくこの湖にくるのか?」
「うん。大体天気がよければ来てる・・・」
(ってなんで本当のことを言っているんだよ僕は!!たまたま通りかかっただけとか言えばよかったのにぃーーーーー!!!!)
「じゃあ、また逢えるか?」
「・・・・・え?」
「また来るよ。君の事をもっと知りたいから」
「・・・・・・・・・・」
爽やかに微笑む彼に、YES以外の返事を言えるはずがなかった。







送ると言ってくれたアスランを丁重に断り、とぼとぼとジュール家の館にもどってくるキラ。
気にするように愛馬はチラチラと視線を向けてくるが、そんな気遣いもキラは受け取る余裕はない。
そう、先程出会った青年のこともそうだが、キラには今迫り来る危機に立ち向かわなくてはいかなかった。
「ストライク・・・・・僕がんばるよ」
ブルル、と心配して鼻を鳴らすストライクの首を叩き、彼を厩舎に戻して裏庭への扉をくぐる。
キラはこの男の姿で堂々と正門をくぐることは出来ない。
こっそりと館の中に入り、普段から人払いをされている廊下を忍び足で歩く。
迫り来る危機・・・・それを避けることは出来ないが、それでも出来るだけ先延ばしにしたい。
もしかしたら危機よりも先に救いの手が差し伸べられるかもしれない。
そんな淡い希望を胸に自分の部屋の扉を開けた。
「・・・・・キィ〜ラ〜〜〜〜」
そして、その希望も簡単に打ち崩されたのだった。
キラの部屋に仁王立ちで立っていたのはもっとも恐れていたイザーク。
救いの手であるフラガもラクスもそこにはいない。
「・・・・・・・あはは」
キラはもう、力なく笑うことしか出来なかったのだった。



続く


騎士物第4弾です。カミーユは今年映画化されたZガンダムの主人公の名前です。
女っぽい名前にコンプレックスを持っているということで、逆に使ってみました。

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