第九条
家柄に問わず爵位を持つ家の長男以外の男子は騎士団に入団し、国を守る責務を持たなければならない。
Glory knight!!2
事の起こりは16年前に遡る。
「こんなに早く産まれてしまうとは・・・」
産婆は腕の中でか細く産声をあげる赤子を抱いて悲しみに暮れる。
キラは未熟児だった。
神棲国の内部でクーデターが起こり、ジュール家当主は若い命を散らし、
そのショックでエザリアの胎にいた赤子があまりにも早く産まれてしまったのだ。
この大きさで生きて産まれてきたのは奇跡に近い。
しかし、この小さな命がそう長くないことも明らかであった。
そして夫を失ったエザリアはある決定をする。
“キラを女児として扱うこと”
それは夫であるジュール男爵が亡くなったのと立て続けに男児が死んでは、領民はどんなに悲しむだろう。
そしてそれはジュール家の領地を狙う貴族たちに弱みを見せることになる。
何とか成長できたとしても、法律で定められた次男の騎士団への入隊は不可能だ。
男児の身でありながら、騎士団に入れないのは、代々高名な騎士を輩出してきたジュール家にとって最も不名誉なことであった。
こうした事情から、キラは女児として公式発表されたのだった。
それがジュール家のトップシークレット。
どこから漏れるかわからないため、ジュール家に仕える人間でも、知っている人間はほんの一握りである。
母であるエザリア、兄であるイザーク、世話係としてクライン家より遣わされたラクス、
そして・・・・・
「今度の舞踏会でデビューだって?」
部屋に戻ってきたキラとイザークを迎えたのはラクスともう一人。
ジュール家に縁あって、忠誠を誓う元傭兵、ムウ・ラ・フラガだ。
どういうわけかエザリアから絶対の信頼を受け、イザークの剣の師範でもある。
しかし天然の女たらしで、女装したキラを一目見ただけで男だと見抜いたのだ。
「ムウさん!」
フラガの姿を見つけたキラは、先程のおしとやかな雰囲気はどこへやら、
パタパタと足音を立てて彼に抱きつく。
小さい頃からの遊び相手でもあり、身体がすっかり丈夫になったキラはイザークに内緒で剣も教えてもらっているからか、
キラはフラガによく懐いていた。
「それもよりにもよってザラ家の舞踏会とはねぇ・・・・」
勢いをつけて抱きついてきたキラを抱きとめて、フラガは苦笑する。
昔から蝶よ花よと育てられ、ジュール家の長女として教育されたキラ。
それでもイザークやフラガの前、もしくは一枚ドレスを脱いでしまえば、少々素直すぎるがどこにでもいる16歳の少年にかわりない。
「ザラ家がどうかしたんですか?」
言いよどむフラガに、キラは不思議そうに彼を見上げた。
「いや、ザラ家が問題じゃなくて、キラの場合ダンスが問題だろう」
イザークもフラガと同じことを考えているのか、苦虫を噛み潰したような顔になる。
貴族の開催するパーティーには必ず“趣向”がある。
それらは家が確立した頃に決定した伝統的なものであり、変えることは許されない。
何故そのようなことが始まったのかは定かではないが、趣向にはその家の特色が強く出てている。
今回主催するのはダンスが趣向のザラ家なので、自然と舞踏会になる。
「まあ、アマルフィー家のほうがマシだったんだけどなー」
「なんで先月のジュール家のほうに出さなかったんだ!」
フラガはすでに諦めの境地だが、イザークはいまさらながら顔を真っ赤にして怒り出す。
ちなみにアマルフィー家は演奏会、ジュール家は剣術大会で、いずれもキラは座っているだけで済む。
しかしダンスとなれば他の者たちに接近しなければならない。
そして何よりも、キラはダンスなど一回も踊ったことがない。
これから舞踏会デビューするには死ぬ気で練習しなければ間に合わないだろう。
「あら、演奏会ならきっとキラは寝てしまいますわ?
それに剣術大会ですと黙って座っていられないでしょうし、舞踏会なら静かにしていれば目立たなくて済みますわ」
きっとエザリア様もそう考えたんでしょう、とラクス。
「だ・・・・だめだだめだ!!特に今回のパーティーは奴の・・・・」
一瞬ラクスの言葉に納得しかけたイザークはあることを思い出し、今度は本気で慌てだす。
「アスランの婚約者を探すパーティーじゃないか!!
そんなパーティーにキラを出すわけには・・・・!!」
「おーい」
どんどんヒートアップしていくイザークに、少々間の抜けた声で現実に引き戻す。
「キラ、とっくに遊びに行っちまったぜ?」
・・・・・・・・・・・・。
「なんだとーーーーー!!??」
フラガが指差した先には、1枚のドレスが脱ぎ捨てられていたのだった。
続く
中世物第2弾でした。しばらく続きを書いていなかったので前の設定をすっかり忘れていて、慌てて書き直したところ多数。
4月2?3?日までには完結したいけど・・・終わりが見えてこない(汗)
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